難関「塩酸に金属をとかす」(水溶液の性質) ~楽しい理科実験vol.19

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目次

酸と金属の反応

「水溶液の性質」の単元に、金属を水溶液に入れた時の反応を見る実験があります。指導要領には、

2A(2)(ウ) 水溶液には,金属を変化させるものがあること。

と、とてもシンプルに書かれています。私が使用している東京書籍理科の教科書では「鉄・アルミニウム」を「うすい塩酸」でとかすことになっています。この実験は塩酸を扱うこともあり、教師にとってはかなり難易度が高い実験になります。

アルカリ性水溶液にはアルミや亜鉛がとけますが、水酸化ナトリウムやアンモニア水は目に入るとかなり痛いので、教科書では酸性の塩酸のみを扱っているのだと思います。特に水酸化ナトリウムは皮膚を侵食する危険があるため、小学校教科書からは消えているようです。酸性水溶液だけで実験するのはどうかと思いますが、安全確保のため、私はアルカリ性水溶液は扱いません。(水酸化ナトリウムは危険視されているので、購入・保存している小学校が減ってきていると聞いたことがあります。)

そして、塩酸にしても、目に入るとかなり痛くて危険なので慎重を要します。

冬の寒い時期にこの実験を行う場合、塩酸の温度が低いと反応が進みません。下手をすると2時間たってもとけ切りません。教科書にも指導書にも鉄・アルミニウム・塩酸の適量は書いていません。鉄・アルミニウムを入れすぎるととけているのかどうか分からないし、とけ切りません。また「塩酸が薄すぎる」「鉄やアルミニウムが少なすぎる」のも、反応がわずかになってしまい、とけている実感がありません。

もし1時間の授業内で実験をするのであれば、塩酸は10%程度を内径15mmの試験管に半分ほど入れ、鉄はスチールウールをほんのひとつまみ、アルミニウムはアルミニウム箔を2㎠ぐらいが適量ではないかと思います。反応を早めるのであれば、金属と塩酸を入れた試験管を60℃前後の湯を入れたビーカーの中で温めるとよいと思います(必ず、下記「熱暴走に注意を」を参照してください)

これで、アルミニウムは20分程度でとけてなくなり、鉄も泡を出してとけている様子をそこそこ観察できます。鉄は少量のスチールウールでもなかなかとけません。今回は直径1cmのスチールウールで実験しましたが、1時間ではとけ切りませんでした。もう一回り小さくてもよいぐらいです。

2時間観察し続ければ鉄がとけてなくなるのも見られるかもしれませんが、ずっととけている様子を観察し続けるのは単調で、子どもも退屈になってきます。鉄に関しては
「もう少し時間が経てば鉄もアルミニウムのようになくなるでしょう。また明日、観察しましょう。」
でよいと思います。安全を図ることができるなら(ずっと教師が管理・監視できる状態なら)、教室の教師机に「塩酸+鉄」を鉄がとけ切るまで置いておくという方法もあるかもしれませんが、今の時代、何からでもトラブルが発生するので、私は絶対にしません。おすすめできません。

熱暴走に注意を

早く金属をとかしたいと焦って「塩酸が濃すぎる」「入れる金属が多すぎる」「湯が熱すぎる」などの条件が重なると

反応する→反応の際に発熱する→反応が活発になる→さらに温度が上がる→さらに反応が活発になる

というループが起こり、熱暴走を起こす可能性があります。試験管の中で高温の塩酸が鉄と混ざって黒い泡をブクブクと発生させはじめます。実験慣れしていない教師であれば慌てふためく状況です。もし熱暴走が起きたとしても、すぐに冷たい水で試験管を冷やせば収まってゆきます。冷静に対処すれば大丈夫です。冷却用に水を入れたビーカーを用意しておきましょう。子どもにも、熱暴走が起き始めたら(反応が激しくてブクブクと泡が出る状態なら)先生に声をかけて、慌てず、机からゆっくり離れるように指導しておきましょう。

「熱暴走を起こさない」かつ「アルミニウムだけでも1時間でとけ切らせる」という条件に落とし込むのは、分量の調節がけっこう難しいです。必ず予備実験をして、熱暴走にならない程度の分量に調節してください。

水分を蒸発させた後、もう一度塩酸をかける

東京書籍の理科教科書ではこの後の授業で、

① 金属が溶けた液(塩化アルミニウム・塩化鉄)を蒸発皿で煮詰めて個体にし、

② さらにそれに塩酸・水をかけて「また溶けるけれどもとくに泡が出るなどの反応はない」ことを確かめる

という実験に進みます。残念なことにどちらもあまり面白みのない実験です。①は「食塩水の水分を蒸発させる」というすでに1度行った実験と似たような実験です。食塩水の方がたくさんの残留物が出てきて面白いです。前述したように「熱暴走を起こさない」かつ「アルミニウムだけでも1時間でとけ切らせる」ことをねらって鉄・アルミニウムを少なくすると①の実験で出てくる塩化アルミニウム・塩化鉄の量がとても少なくなってしまいます。面白くない上に残留物の量が少ないと、その残留物に塩酸をかける②の実験も残念な感じになります。

したがって①②の実験をする前日に、教師が塩酸にアルミニウム・鉄をたくさんとかした液(塩化アルミニウム水溶液・塩化鉄水溶液)を作っておいて、その溶液で実験をした方が良いと思います。「塩酸に金属をとかす実験」と「その結果できた溶液を蒸発させ塩酸をかける実験」を切り分けます。料理番組でよくあるように、

「はい、昨日、鉄とアルミニウムを溶かした後にできた溶液を先生が作ってきました。みんなが昨日溶かした液は薄いから、濃いのを作ってきたよ。」

と、ポンと濃い水溶液を出してしまいます。誤魔化しですが、仕方ないです。

教師側で蒸発後にある程度の量の残留物が出てくる「濃い水溶液」を作るには、鉄・アルミニウムがとけ切らないぐらいの量を入れるとよいです(熱暴走に気をつけてください)。そうすると塩酸も反応し切ってなくなり、蒸発皿で煮詰める実験での安全も確保できます。ただしとけ切らないぐらい鉄やアルミニウムを入れると、鉄・アルミニウムのとけ残りが出て、②の実験で塩酸をかけた時に反応が起こってしまう可能性があります。塩化アルミニウム水溶液・塩化鉄水溶液だけになるようにできた水溶液はろ過をしておいた方が良いと思います。

②の残留物である塩化アルミニウムや塩化鉄はすでに化合物になっているため、反応がありません。どちらも反応がないという結果を確かめるだけの実験はさすがに面白くないです。とけ残りが塩化アルミニウムと塩化鉄であることにも教科書では触れられておらず、「塩酸をかけても反応しない別の物質に変わった」というレベルで終わります。せめて、「塩化アルミニウムと塩化鉄という物質に変わった」というところまでは教えてあげてほしいなあと思います。私は「これは中学校で習うことだけれど、教えておくねー」と言いながら教えました。

ちなみに、蒸発皿は割れやすいです。十分に冷めていないうちに塩酸を垂らすと割れてしまいますので、木の板の上でも冷ましましょう。雑巾ので冷やすと雑巾が焦げます。水で濡らした雑巾の上に置いても、割れてしまいます。早く蒸発させようと思ってあと少し(1mL?)ぐらいになった所で蒸発皿の上で煮詰まった塩化鉄水溶液をくるっと回したら、下写真のように割れました。

東京書籍理科の教科書上ではこれが小学校最後の実験になってしまいます。予想通り、子どもたちのウケはよくなかったです。それはあまりに悲しいので、水溶液の学習の最後は下記リンク先の酸で十円玉を磨く実験をしました。この実験はとてもウケました。

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