読書で育む「人間力」~国語授業と読書指導のポイント~(【教育技術×EDUPEDIA】スペシャル・インタビュー第11回 吉永幸司先生)

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作成者:中澤 歩 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、雑誌『教育技術』(小学館)とEDUPEDIAのコラボ企画として行われた吉永幸司先生へのインタビューを記事化したものです。小学校における読書指導のコツ、心構え、そして国語をベースに学校生活を組み立てることについて、様々なお話を伺いました。

なお、本企画は小学館発行の教育誌『教育技術』とのコラボ企画となっております。『小一教育技術』~『小六教育技術』10月号にもインタビュー記事が載っていますので、そちらも合わせてご覧ください。
教育技術.net

2 インタビュー

——読書教育の現状について、お聞かせ願えますか?

まず、世間全体が活字離れですよね。今の子どもたちが、自分で手に取って本を読むとか、活字を読むということは、学校という場でしかなくなっています。

学校が「読書とはどうするものか」「本を読むことはどんなにいいものなのか」ということを子どもたちに教えてあげないと、読書の喜びだとかを知らないまま卒業して、情報化社会の中に放り込まれていきます。きちんと、系統立てて、読書について教えてといけないと考えています。

——読書しない子にはどのように対応していけばいいですか?

幼稚園や保育園の頃までは、読み聞かせをしたり絵本を買ってやったり、親もけっこう熱心なんですよ。小学校1,2年くらいまではその傾向が続くんですが、中学年くらいになると、自分から進んで読書する子と読書を離れる子が出てきますね。高学年になってくると、さらに読書嫌いな子が増えていきます。

とは言え、学校ではどの子にも少なくとも読書を経験させることは必要です。全員に読書好きになってもらう必要はありません。しかし、「読書っていいな」という快さだけは持っていてほしいし、「読書する人はすごい人だ」と思う気持ちも持っていてほしいですね。

「お前本読んでるん?」と否定的にいうのではなくて、「本読んでるんや、偉いね」と肯定的に言えること、本を読んでいる子は「この本おすすめやで」と言えることが理想です。難しいですけどね。

一番大事なのは、親や先生も、子どもが読みたい本を否定しないことです。とにかく子どもが集中しているときに邪魔をするな、ということです。読書に限らず、子どもの好奇心を邪魔してはいけません。

——国語の授業におけるコツはありますか?

国語の授業には「読書」の単元がありますが、それを読解の授業にしてしまわず、図書館にこんないい本があるんですよ、と紹介してあげるといいと思います。

最近は、図書館に行っても選び方が分からないという子が多いので、分からないときにはどうしたらいいかということも教えてあげないといけません。何かのきっかけで公立図書館に出かけたとしても、どの本がいいか分からないと言って帰ってきてしまったりします。それは勿体ないですよね。

それから、教室では、読書紹介カードをつくって自分の読んだ本を紹介したり、クラスのおすすめ本ベスト10を作ったり、あるいはカードではなく直接「私の本を紹介しますよ」と紹介ごっこをしたり、様々な形の交流活動を入れていくことですね。読書を自分だけのものにしないことが大切です。

——好きになるきっかけを作るのが大事なのですね。

低学年だと、本を借りることそのものを嬉しく思ったりするんですね。借りるだけで読まないこともありますが、それもまた読書のきっかけです(笑)

それと、こういう児童がいたんです。

音読で「論語」の単元を教えていた時、普段は本をあまり読まない児童が図書館へ行って、司書さんに論語の本を紹介され、そのまま借りたことがありました。
ずっと論語の本を抱えて廊下を歩いていると、向こうから歩いてきた先生に「論語読むの?」と褒めてもらい、帰りのバスでも知らないおじさんに「え、論語読むの?」と褒めてもらえたそうです。
 読んでないのに、持っているだけで何回も褒めてもらえるんですよ。そういうことってありますよね?
 その児童は、それをきっかけに論語を読んで、論語の良さを知りました。そして夏休みの作文で、自分が読み始めた動機の部分と、論語で学んだことを、コンクールに出したら特選に選ばれました。

本との出会いは何があるか分かりません。偶然に左右されることも多いので、演出にこだわるというよりも、様々なきっかけを提供してあげることが大事だと思います。

——先生が読書指導をしたいと思ったときに、ほかに何かアイデアはありますか?

教員自身が、いまの子どもたちがどんな本を読んでいるのかを知っておくことが大事だと思います。

この間、ある若手の先生が「子どもどんな本を読んでいるかは図書館へ行かないと分かりません。だから、休みには図書館へ行くようにしています」と言っていました。そういうことなんです。子どもの本を知るということは。
僕も若いころ、子どもに本を勧めてあげようと思って、毎日学校の帰りに本屋へ寄ったんですよ。ぜひ若い先生は図書館へ行ってから帰るなどしたほうがいいと思います。本屋に並んでいる本を見るだけでもだいぶ勉強になりますね。

読書指導とは少しずれますが、国語という観点からもう一つお話しすると、先生方はもっと自分で文章を書いてみたほうがいいです。子どもたちに読書感想文を書けと言う先生が、実は普段は何も書いていないのではないでしょうか。
 私は学級通信を30年間にわたって毎日書き続けていました。とにかく毎日書くことです。自分も文章を書いているからこそ、子どもにも親にも「日記を書いて」「作文を書いて」と遠慮なく言えるのです。難しいことはありません、思ったことを書けばいいだけですから。

——読書によって語彙力がつく、という話がありますが。

語彙力というのは、その人の人間力、人間としての強さのようなものにつながってきます。

ひとくちに語彙といっても沢山あるのですが、やっぱり日常生活に必要な語彙は大事ですよね。例えば、何かしてもらったら「ありがとう」、何か間違っていたら「ごめんなさい」とか。普通のことなんですけど、そういうことを教えてやれる場は学校、学校の中でも特に国語の授業以外にはないんですよ。

それから、コミュニケーションに必要な語彙もやはり重要ですね。場面場面で言っていい言葉と悪い言葉を知っているというのも語彙力ですね。そういう力を持ってないと、ふんふんと頷くだけの子どもになってしまいます。

他には辞書に載っているような難しめの語彙や、生きる力にひびく語彙(勇気、希望につながる語彙)も必要です。精神力は語彙力から培われるので。

——国語を通して「人間力」を育てていく、ということでしょうか?

そうです。小学校では国語の時間が一番多いんですが、教科書は200時間以上かけてやるような難易度と量ではないんですね。本気でやれば1学期あれば出来る内容の教科書なんです。

今は「国語の時間に国語の力を身につける」という考え方が普通だと思うのですが、国語の時間は生活の基盤になるので、私は学校生活の中で国語の力がついているかどうかを見ていくべきだと考えています。

友達と話し合いをしているときに「その意見はちゃうやろ」と言ったら、先生はもっと丁寧な言葉使いをしなさいと教えてくれますよね。「その意見は違いますよ」のような。
 小学校の先生というのは、きちんとその場に適した言い方を教えてくれますし、場にあった言い回しができることは生活力につながります。それなのに、国語の授業が終わって教科書を閉じた瞬間に国語から離れてしまう。

国語の授業が終わり、廊下を歩いていたら友達とぶつかって足をつまずいた。そこで、ぶつかった相手に「大丈夫?」と声をかける。これなら3分前に勉強した国語の勉強が生きているといえます。学校は知らない人といっしょに生活する場、そのようなところでどのような言葉を使うべきか、を教える場です。言葉を身につけるという意味では、教科書には丁寧な文章しか載っていないので、やはり教科書を大事にして教えていくのがいいと思います。

学校生活の基本は国語で、日々の生活が国語の授業と考えたらよいのです。毎日のようにやる授業だからこそ、国語の授業を通して学校生活全体の基盤になるようなことが身につけられるといいですね。

——最後にメッセージをお願いします。

子どもが大好きなら、ぜひ本好きにしてあげてください。本を通して、教室の子どもと出会うのです。
 読書に限らず、子どもの輝くきっかけは本当に色々あります。それを教師が摘むんじゃなくて、常に種まきをしていくことが大事ですね。

3 プロフィール

吉永幸司(よしながこうじ)先生

1940年生まれ。滋賀県長浜市出身。
 滋賀大学学芸学部卒業後、滋賀大学教育学部附属小学校教諭(26年間)、滋賀県大津市仰木の里小学校校長(3年間)などを経て、2001年に定年退職。退職後、京都女子大学教授/京都女子大学附属小学校校長(兼務)を務め、現在は京都女子大学講師(非常勤)。著書多数。

ホームページ『吉永幸司の国語教室 絆—365日

4 著書紹介



5 編集後記

国語の授業は、生活の基盤であり、「人間力」を育むという吉永先生のお話は非常に新鮮に感じました。その人間力を育むためにも、読書を薦めることは重要だと思います。普段の授業においても、学校図書館などを活用し、子どもたちに本と触れ合うきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。
(取材・編集 EDUPEDIA編集部 宮嶋隼司、竹内雅浩、中澤歩)

6 関連ページ

教育技術.net

『小一教育技術』~『小六教育技術』10月号に掲載のインタビュー記事も合わせてご覧ください。

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【教育技術×EDUPEDIAコラボ】スペシャルインタビュー

第1回からのインタビューまとめページはコチラ

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