水泳指導の前に

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小学校1年生初のプールでの学習。

指導内容は「水遊び」ですが、先生は遊んじゃいられない。
子どもの「命」がかかっているということを忘れないようにしないといけませんね。

授業の前に

幼稚園や保育園のプール、見たことあります?大きなところでやっと温泉の大浴場くらいです。園によっては、ビニールプールを膨らませて対応しているところもあります。そんなところで遊んでいた子達が、いきなり25mプール、しかも自分の身長くらいの深さのあるプールに入るんです。アミューズメント施設としてのプールにおうちの方と行くことはあるかもしれませんが、すぐ近くにマンツーマンでおうちの方がいる状態なのですから、学校のプールとはわけが違いますよね。

中には、低学年用に30cm程度の深さのプールを設置している小学校もありますが(私の通った小学校がそうでした)、ほとんどの小学校は深いプール1つだと思います。身長110cmくらいの1年生の子ども達には、小学校のプールはどのように見えているでしょう。イメージしてみてくださいね。

さて、授業に入る前に確認しておかなければならないことがいくつかあります。

学級の子の身長と、プールの深さ(水深)を調べておく

1年生は小さい子だと1mを切ることもあります。プールは一般的に、飛び込み台がついている方が深く、排水口のところが一番深くなっています。どの部分が水深何cmかを調べておきましょう。泳げない子にとっては、肩より深いところ、つまり自分の身長−30cmより深いところは恐怖です。水に慣れた子でも、自分の身長−20cm以上は、立っていると口が水に浸かりますからきついですね。

プールカードなど、おうちの方の承認のしかたについて

私の勤務する地域の学校だと大体、毎朝プールカードなるものを提出します。今日の日付を書いて、水泳学習に参加するかしないかに○つけて、見学の場合は理由を書いて、最後に印鑑を押して、子どもが持ってきます。で、これがくせ者。
(´ヘ`;)ハァ

プールに入りたくない子は「忘れました」とか言って出さなかったり。入りたい子はおうちの人の印鑑を勝手に持ち出してはんこを押したり。…まあ、このあたりは家のしつけの問題なんでしょうけどね。一応見当をつけてランドセルの中を探したり、おうちの方にそれとなく聞いたりします。

困るのが、水着は持ってきてるのにプールカードだけ忘れていたり、「参加」に○があってはんこが押してなかったりするもの。ここでうっかり電話したりして「今日プールに入れても大丈夫ですよね」なんてやっちゃいけません。「プールカード持ってきていただけますか」「印鑑を押しに来ていただけますか」が正解。無理なら見学です。

もし何かあった時、書類に残っていなければなんと言われても返す言葉がないからです。例えば、朝、子どものプールカードの「参加」に○をしてあって印がなかったので電話で参加を確認した。その子が学習中おぼれた場合、印鑑がなければ「朝、子どもの顔色が悪かったので、参加には○をしたが印を押そうかどうしようか迷った。時間が来たのでそのまま出しただけであって、私は許可していない。電話の時にもそう伝えたはずだ」と親から言われたら、完全にこちらが悪いことになるのです。責任転嫁できると思ったら何とでも言い逃れする親も存在します。

このあたりを十分理解して、親からの承認を確実に取れた子だけ泳がせるようにしましょう。最近、印鑑でなくてサインする親や、どうかすると鉛筆で書いてくる親がいます。高学年なんかだと自分で消して書き直したりしますので、私は印鑑+ボールペンでのサイン(筆跡で親が書いたかどうかが分かるので)の形がいいのになあといつも思っています。

着替え

1年生だと、全部脱がないと水着に着替えられない子、まだいます。まあ、周りの子も大して気にしてないので、何かの折におうちの人にちょっと笑い話程度に言っておくと、あわてて家で指導してくれるみたいです。下着に名前を書いておくように事前に言っておくといいですね。

着替えの時には、できるだけ椅子に座ったまま着替えるように指導しましょう。椅子に座って着替えるというのはどこかからの受け売りなのですが、低学年は特に、足からパンツを外すのが下手なので、座ってやった方が足に手が届いて着替えやすいようです。

また、下着は脱いだらバッグの中にすぐ入れること、靴下は脱いだら上靴の中につっこんでおくことを指導しておくと、紛失がぐんと減ります。

最近、大きなバスタオルにゴムとボタンがついていて、てるてる坊主のようにして着替えることができるのがはやってますが、あれをそのまま着てうろうろする子が多いですね。この格好では、転んだ時に手がつけないので、いきなり顔面から地面に激突して歯を折ったりということにもなりかねません。バスタオルは畳んで手に持って(または腕に掛けて)歩くように指導しましょう。

ちなみに、水泳用の帽子は、女の子なら水着の肩紐のところ、男の子なら水泳パンツのゴムのところに挟んでおくようにします。

プールに行ってから

学校によって違いますが、一般に準備運動をして体温を上げ、シャワーを浴びて汗を流してからプールに入ります。

子どもはなぜかシャワーを浴びる時キャーキャーうるさい。おまけにじたばたと足踏みをする。怪我の元ですので、黙って入らせましょう。

よく、シャワーの下で10数えさせる先生がいます。で、子どもはというとじーっと立って数だけ数えている。食器洗い機じゃないんですから、手を使って洗うように指導しましょう。

シャワーが終わって出る時が一番走りやすいです。出口に先生が一人陣取って、見張っておくと良いですね。

水に入る前に子ども達に言い聞かせておくこと

プールサイドで先生の話を聴く時には、足を水につけない

ただでさえ広いプールで指示が届きにくいです。水音がしたり、足で隣の子に水を掛けて遊んだり、話の途中に水にボチャンと落っこちたりということのないようにさせましょう。

水に入ったら、壁に背中をつけて待つ

壁から離れると心も離れてしまい、指示が聞こえませんし、勝手に泳ぎ始めてしまいます。背中をつけて指示を待つことを徹底させましょう。

水からあがる指示があったら、一番近いところからあがって、プールサイドを歩いて自分の場所に戻る

普通、そういう指示なしで子どもを水からあげるのに笛を吹いたら、むこ~うの方に行った子は、そこからエンヤコラと水をかいて歩いて戻ってこようとしますし、こちらから向こうの岸めがけていきなり泳ぎはじめる子もいます。陸上では一直線に自分の場所に行くことしか教わってないのですから当たり前ですよね。

気分が悪くなったりしたら、自分であがってくる

バスタオルをプールサイドなどに置くようになっている場合は、自分でバスタオルを取ってくるまるように言っておくと、見つけた時にトイレに行きたくなった子との区別がついていいですよ。

誰かがおぼれていたら大声を出して先生を呼ぶ。自分が手を出さない

これ、大人は分かっていますが、子どもはつい手を出して一緒におぼれがちです。あ、大人でもおぼれている子どもを素手で助けるのは危ないので(顔に抱きつかれて息ができなくなったりする)、プールの真ん中でおぼれた子でも助けられるように何か道具を用意しておくといいですね。

プールに入ってからの指導について

指示はプールサイドで全員に聞かせる

子ども達を水に入れたまま「次は○○ですー」「はいやめー、次は△△ですー」とやっちゃう先生って存在します。これじゃ、子ども達は水しぶきの中お友達とのおしゃべりに夢中になって、話があっていることすらわかりません。ホイッスルなどでしっかり活動をやめさせ、黙って話を聞けない低学年などは、プールから上げて指示をしましょう。

活動ごとに人数確認をする

子ども達は準備運動の段階で男女別に2人1組を作っておきます。(奇数なら最後は3人)プールサイドで「バディ」と号令を掛けると、この2人はつないだ手を高く上げます。バディの数を数えて、人数がそろっているか確認します。同時に、プールの中に子どもが沈んだりしていないか見ます。これを活動が終わるたびに行います。

活動中、トイレに行く子がいた時は、低学年の場合バディも一緒に行かせるといいです。怪我などがあった時、バディが教えに来てくれます。中・高学年でバディがトイレなどに行った時は、その間だけプールサイドに座って待っておきます。かわいそうだからと途中で3人にしたりするのは、2人になった時に子ども達が「バディがトイレから戻ってきたんだ」と考えてしまって、もしその子がおぼれていても気づかなくなってしまうので、絶対戻らない場合(怪我をして保健室に行ったなど)以外はやめた方がいいです。

危険な遊びはしない

…と言っても、どんな遊びが危険か分からない先生、いますよね。
割と当たり前に行われているものが低学年(特に1年生)にはとても危ないので、書いてみます。

@{じゃんけんおんぶ}

身長順に並んでいても体重差があるので、重い方がおんぶすると体重で首を絞められてしまうことになります。自分が、首まで水につかった状態で、太った人に飛びつかれて後ろ向きに転んだらどうなるか、考えてみてくださいね。

@{人間洗濯機(渦巻き、台風などの呼び方かもしれません)}

プールの縁に沿ってぐるぐる何周も歩いて水の流れを作るものです。ある程度流れができたところで反対向きに回るよう指示すると、流れができているので水の抵抗があり、それが子ども達には面白いのです。また、泳ぐのが苦手な子も、水の流れに沿って浮かぶとぐんぐん体が進みますから、泳げるイメージを持つことができます。

ただ、深いところも歩くことになりますから、身長の低い子にとってはつらいです。また、先生によっては電車ごっこのように肩に手をやってみんなでつながって歩かせることもあるので、もし自分が苦しくなっても、すぐプールから上がることができません。他の子の手をふりほどく間に溺れることになってしまいます。

流れができてから何かあった場合、流れに足を取られてしまうことも考えられます。水からあがる指示を出した時にも、子ども達は一番近くからあがろうとするけれど、流されてしまってなかなかたどり着けない。上がった時にはものすごく体力を消耗してしまうことになります。流れに逆らわないように、まず最初の指示で、どこでも良いからプールの端に寄ってふちにつかまらせ、そのあとにそこから上がるように指示した方がよいと思います。

体力を消耗しているなと感じたら、その子だけは梯子のついているところから上がらせるとか、そのあたりは臨機応変に行かないと、プールから上がれなくなってしまう子もいます。

{@{自由時間}

原則として、学校の体育の授業なんですから、自由時間は設けるべきではないです。つか、普通の体育の学習ではまずしないのに、なぜか昔から、プールだけは最後の何分かを自由に泳ぐ時間にすることがあるようです。私も小さい頃そうでした。

でも、学校の水泳指導での事故はほとんどこの自由時間に起きているそうです。ニュースなどでは「子どもが自主的に練習している時」とか言ったりしてますが、結局自由時間だったわけです。

自由時間を設けるということは、子どもを今から溺れさせようとしているのと同じだと思ってもらっていいと思います。どうしても自由時間を作るという先生と一緒にしなければならない場合は、一人ひとりにめあてを持たせると少し子ども達の気持ちを引き締めることができます。「あとから、できるようになった人が何人いるか手を上げてもらうよ」などと言っておくといいかもしれないですね。

終わってから

耳に入った水の取り方
整理運動の時に、耳に入った水を片足立ちでぴょんぴょん飛んで出させているのを見ますが、暑い夏だったら、それよりもっと簡単な方法があります。
プールサイドや飛び込み台など、熱くなっているところに直接耳を当ててしばらくじっとしていて下さい。なぜかは分かりませんが、じわっと水が出てきます。

シャワーと目洗い

終わってからのシャワーは、プールの塩素を落とすために浴びます。放っておくと、目が真っ赤になったり、水着の色が落ちたりしますので、しっかり洗いましょう。

洗い終わったら、プールから出る前にしっかりバスタオルで拭かせ、水気が残ってないか一人ひとりチェックします。首の後ろ、背中の肩胛骨の間によく水滴が残っています。それと、股の間をしっかり拭かせておかないと、歩いている最中に水が足を伝って廊下にぽたぽた落ちることになります。しっかりチェックして、合格した子だけプールから出すようにします。

着替えたあと

髪が濡れているからとタオルを肩に掛けている子をよく見ます。お風呂ならこれでもいいのでしょうが、水を浴びているのですから、中途半端に濡れているタオルを肩に掛けているのは風邪を引く元になります。また、タオルが肩に掛かったままでは、子ども達は水泳の気分を引きずって次の学習をすることになり、集中しません。髪の毛はしっかり拭いて、タオルを肩に掛けることはしないように指導しましょう。

終わりに

本来、子ども達にとっては楽しいプールでの学習です。事故なく学習を終えられるように、念には念を入れて指導にあたりましょう。きちんと指導が行き届く子は、他の学習でもきびきび、生き生きと学習を進めることができますよ。

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