1 五月の世界からの変化
やまなしでは、五月の世界と十二月の世界が対称的に描かれている。特に十二月の世界は、五月の世界からの変化がはっきり読みとれる。それはカニの子どもたちに象徴されているのだが、カニの子どもたちの気持ちが変わったのがいつかを検討した。
カニの子どもたちは五月の時と十二月のときでは気持ちが変わったと思いますか。カニの子どもの気持ちはどこから変わったのでしょう。
まず五月で変わったのか、十二月で変わったのかを問うと全員が 〈十二月〉と答えたので、十二月の中から探すことにした。
〈そのときドブン〉
- やまなしが出てきて気持ちが変わったと思うから。やまなしが一番初めに出てきたのが、“そのときドブン”のところだから。
〈黒い丸い大きなものが天井から落ちてずうんとしずんで、また上に上っていきました〉
- 落ちたもの(やまなし)で、気持ちが変わったと思う。
〈子どもなのカニは首をすくめて言いました〉
- 五月の時はカワセミが分からなかった。でも十二月になってわかるようになった。
〈おいしそうだね、お父さん〉
- やまなしが落ちてきたからいいにおいで一杯になって、カニの子どもは明るくなった。
- 「カワセミだ」と言っているときは“首をすくめて”と書いてあるから怖がっているけれど「おいしそうだね、お父さん」といっているときは安心している感じだから。
このように、いくつもの場面が出された。そこでいくつかの場面を提示して、自分はどこにいちばん近いかを選ばせた。
カニの子どもの気持ちが変わったのは、次のうちどこに一番近いですか。
A:そのときドブン B:ああ、いいにおいだな
C:かげを追いました D:おいしそうだね、お父さん
名前磁石を貼らせると、AとDに意見が集中した。
〈A〉そのときドブン
- カワセミだと思ったら、違うとわかったから。
- やまなしが出てきたときカニの子どもの気持ちが変わって、やまなしがでてきたのがここだから、
〈D〉おいしそうだね。お父さん、
- “そのときドブン”の後に“首をすくめて”と書いてあって、これは怖そうな感じがする。「おいしそうだね、お父さん」はうれしそうな感じがするから。
- “首をすくめて”は、こわいものだと思っているけれど「おいしそうだね」は安心している。
この二人の発言によって“首をすくめて”という言葉がクローズアップされた。確かにこのしぐさは五月に近いものがある。そこで、気持ちの変わったのは、B以降であることがわかった。カニの子どもの気持ちが変わったところを特定するために、カニのしぐさを追うことにした。
2 カニの会話やしぐさ
カニの会話やしぐさを表す言葉を見つけよう。
十二月の“首をすくめて”以降で、カニの会話やしぐさを表す言葉を探した。見つかったものは次のものだった。
(子)首をすくめて
(父)両方の目をあらんかぎり伸ばして
(父)ああ、いいにおいだな
(三)やまなしの後を追いました
(三)おどるようにして
(子)おいしそうだね、お父さん
(父)いいにおいだろう
(父)さあ、もう帰ってねよう
(三)自分らの穴に帰っていきます
会話やしぐさが見つかったところで、それがカニの誰かを特定した。子ども・父・三人のどれかを見極め、言葉の横に書き添えた。( )内。こうすると気持ちが変わったのは、“首をすくめて”“おいしそうだね。お父さん”の間であることがわかる。そこで改めて、
カニの子どもの気持ちが変わったのは、“首をすくめて”~ “おいしそうだね。お父さん”のうちどこだろう?
A:やまなしの丸いかげを追いました
B:おどるようにして
C:おいしそうだね、お父さん
の三カ所があげられた
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