作品の気持ち(図工 指導案)

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目次

1 互いの意見を伝え合うことで見方や感じ方を発展させる事例

この実践は文部科学省から許可を得て、文部科学省ホームページ上の「先生応援ページ」より転載させて頂いております。ここから指導案もダウンロードできます。
添付ファイル

題材の目標

親しみのある美術作品の形や動きなどの造形的な特徴をとらえ,感じたことや思ったことを話したり,友人と話し合ったりしながら,よさや美しさを感じ取る。

題材

本題材は,彫刻作品の形や動きなどの造形的な特徴をとらえ,それを基に話し合うことを通して, 作品に対するイメージを膨らませ,よさや美しさなどを感じ取っていく活動である。
児童は,身近な美術館を訪問し,二つの彫刻作品について「自分が学芸員だったら,どちらが来館者に〈お勧め〉か」を考える。そして,〈お勧め〉の理由を,作品の形や動きなどに着目しながら,ワークシートに〈作品の気持ち〉という視点からまとめる。次に,作品をみんなで囲んで,作品の形や表情,動きなどの造形的な特徴と具体的に関連付けながら話し合う。
このとき,自分の意見を根拠をもって述べたり,友達の意見を基に見方や感じ方を発展させたりするような手立ての工夫によって言語活動を充実させ,本題材がねらう「鑑賞の能力」を高めようと考えた。

主な学習活動

(1)題材の展開(45分)

【指導事例と学習指導要領との関連】

小学校学習指導要領 第5学年及び第6学年において,B 鑑賞(1)「イ 感じたことや思ったことを話したり,友人と話し合ったりするなどして,表し方の変化,表現の意図や特徴などをと らえること。」とある。
これは,鑑賞においては,自分が感じたことを基に,友人と 話し合うなどの活動を行うことによって,児童一人一人が自分 の見方や感じ方を深めるようにすることを示している。
本題材では,ワークシートや話合いによって「鑑賞の能力」 が高まるようにしている。また,親しみある美術館であること を生かして,学芸員に適宜に参加してもらい,児童の「造形へ の関心・意欲・態度」が高まるように題材を構成している。

【言語活動の充実の工夫】

本題材において,言語活動の充実を通して図画工作科の資質や能力を高める手立ては次の2点である。

(1)ワークシートを用いて自分の考えを明確にした上で,話し合う。

美術作品の鑑賞では,単に〈作品の気持ち〉を想像させるのではなく,作品の形や動きなど具体的な根拠から自分の考えをまとめることが大切である。本題材では,まず,ワークシートを用いて自分の考えを明確にした上で友達と話し合うことに より,一人一人の見方や感じ方を深めるようにした。

ワークシートは作品の画像が中央に印刷されており, その余白に自分の意見を書き込むことで簡単に自分の考えが表せるようにした。話合いは教師が司会を進め,児 童の見方や感じ方が深まるように意見の根拠を明らかにさせながら話し合わせた。具体的には,次のような結果になった。
 作品 A(2体の人物像)では,始めに「上を向いてい る人は,どうしようかなと悩んでいる」「下を向いている人は反省している」などの形や動きからそれぞれの人 物像の気持ちをとらえていた。次に,「背中を向けて立っているから喧嘩している」「お互いの気 持ちを話せないでいる」など関係性を指摘する意見に変化した。その後「体のラインがきれいだから,二つの作品は人間の体の美しさを表したかったと思う」という作者の意図へと発展した。

作品 B(人が馬に乗っている像)では,始めに「後ろ足が上がっていて,飛んでいるみたい」「馬の上で踊っているみたいで楽しい」など作品の部分や構成に関する意見が多かった。次に,「走っている馬の上に立っているんだから危険と隣り合わせだ」「命がけだ」「題名をつけるなら,“ 努力”“支え合う”かな」など人物の気持ちや状況をとらえる意見に変化した。最終的には「馬 と人がひとつになっている」「自信があるから,馬に乗ることができるんだ」という作品の主題 にかかわるまとめになった。

(2)美術館の学芸員の話を聞きながら振り返りを行い,喜びを温める。

まとめの場面では,自分たちの見方や感じ方が深まったことを確認するとともに,鑑賞活動の喜びを味わうことが重要である。そのために,美術館の学芸員から,「子どもたちと一緒に活動 することで,〈美術作品の鑑賞を通して深く考えることの素晴らしさ〉を改めて味わうことがで きた」という話を語ってもらった。ありふれた手立てではあると思うが,自分たちで十分考え合った後に,それを認めたり意義付けたりする話を学校外の人から聞くことは,活動の思いを温め, 進んで見たりする態度を育むのに大変有効であった。
「形や動きなど具体的な視点から考える」「根拠を明らかにしながら話し合う」「鑑賞活動の喜びを味わう」ことをワークシートや話合いなどの具体的な手立てによって行うことで,児童の「鑑賞の能力」が高まるように工夫した事例である。


引用元

文部科学省ホームページ「先生応援ページ」(授業資料・学習評価等)

http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/senseiouen/index.htm

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