1次と2次とで、多様な試験が課される
多くの自治体で、採用試験には1次試験と2次試験(自治体によっては3次試験も)があります。筆記試験から実技試験、さらには面接や集団討論など、知識の幅広さが問われるだけではなく、多角的に教員への資質や適性が問われるのが教員採用試験の特徴です。
自治体によって試験内容に差はありますが、大きく分けると、【1】教職教養 、【2】一般教養 、【3】専門教養 【4】論作文、【5】面接 、【6】実技、【7】適性検査 の7つです。
このうち、多くの自治体では、1次試験で【1】〜【4】の筆記試験を中心に教職や教科についての知識を問い、2次試験では、ある程度絞られた受験者に対して【5】、【6】を中心にして教師としての資質や適性、指導力を問う……というように試験内容が振り分けられています。
それぞれの試験の具体的な内容は?
教職教養
「教育原理」「教育心理」「教育法規」「教育史」「教育時事」から出題される。近年は、新学習指導要領の実施に合わせ、改訂のポイントや関連する中央教育審議会の答申、文部科学省の通 知など、教育時事に関する出題が増えている。さらには、いじめや不登校などのデータ、これらの問題行動や発達障害を持つ児童・生徒に対する具体的な指導事例について問われることも多い。学習すべき分野が多岐にわたり、覚えることも多いので、早めの対策が必要だ。
一般教養
一般教養は、国語・英語・音楽・美術・保健体育・家庭などの人文科学系、歴史・地理・政治・経済・倫理などの社会科学系、数学・物理・化学・生物 ・ 地 学などの自然科学系、環境問題や情報・IT、国際情勢、国際経済、医療・福祉、科学、スポーツなどの時事問題が出題の対象となる。各自治体にちなんだローカル問題が出題されることもある。どの分野からどのような出題がされるかは自治体によってはっきりとした傾向がある。そのため、早い時期から志望する自治体の過去問を見ておくとよいだろう。
専門教養
教師にとって重要な教科知識の「専門性」。この知識を問う専門 教養は筆記試験の中でも最もウエートが高く、ここで高得点を取ることが合格のための必須条 件となる。志望する校種・教科についての知識や、学習指導要領、指導法に関する問題が出題される。ひと口に「専門教養」といっても、出題される量や範囲、レベルは自治体によってさまざま。必ず志望する自治体の過去問で内容を確認ておこう。
論作文
教育についての知識や文章 の論理性はもちろん、教師としての資質・適性、指導力、教職への情熱などが評価される。出題テーマは「教育論」「教 師論」「生徒指導・学習指導」「抽象題」などで、近年では「確かな学力」など教育時事や教育改革に関するテーマがよく課されている。出題テーマはもちろんのこと、制限時間・字数ともに自治体によって異なるので、必ず確認しておくこと。
面接(集団討論なども含む)
「人物重視」の方針の下、各自治体では面接を中心に選考方法の 工夫・改善が進んでいる。近年では、多くの自治体が1次試験から面接を実施し、すべての自治体で集団討論、集団面接、個人面接、模 擬授業など異なる形式で2回以上面接を実施している。また、学校現場で必要な実践的指導力、コミュニケーション能力を見るため、学習指導や生徒指導上のさまざまな場面を想定して、具体的な対応能力を見る模擬授業や場面指導などが増えている。
実技
実技を教えなければならない教科には、実技試験が課される。小学校全科では、ピアノ・オルガンの弾き歌い(小学校歌唱共通教材)のほか、全国的に見ると水泳、器械運動、ボール運動などが課されることが多い。また、「外国語活動」が導入されたことにより、英会話試験 も増えている。中高の教科では、音楽、美術、保健体育、英語、家庭など、自治体によっては養護教諭などについても実技が課される。近年では、全受験者に英会話などを課す自治体もある。
適性検査
採 用試験で実施されているのは、内田・クレペリン精神作業検査、 矢田部・ギルフォード性格検査(YG 性格検査)、ミネソタ多面人格目録(MMPI)など、性格診断の代表的な検査。その主な目的は、常識的な行動が期待できないほど偏った性格の人物をふるい落とすことにあると思われ、これらの検査のみで採用試験の合否が決まることはほとんどないと言ってよいだろう。
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