跳び箱ほぼ全員成功への道

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目次

1 何段を跳ばせればいいのか

跳び箱の開脚跳びはいったい何年生で何段を飛ばせればよいのでしょうか。子供によって背の高さが違いますので、一概には言えないと思います。私は一応の目安として、2年生で4段、4年生で6段が跳べるとよいのではないかと考えています。得意不得意があるし、障害を持っていたり、肥満の問題があったりしますので、あまり目標を「何が何でも全員●段跳ぶ!」などと設定しない方がいいと思います。自然に練習する中で、全員達成ができるといいですね。5年生にもなると、男性教諭は女子のおしりを触ることに抵抗を感じるようになってきます。できれば、跳び箱は4年生までに跳べるようにしたいですね。職員全体で「跳び箱6段は4年生までに跳ばせる」などと、目標を共有できているといいですね。

2 向山式は優れている

向山洋一氏の名前が全国に知れ渡ったきっかけとなったのが、誰もが跳び箱を跳べるようにする指導方法の開発です。これは、斎藤喜博氏が発案した指導法を向山氏がより多くの人に届くように、分かりやすく説明したものです。優れた指導法だと思います。それから30年以上も時が流れているのに、いまだに跳び箱がろくに跳べない子供がいるのは残念で仕方ありません。「向山洋一 跳び箱」で是非ネット検索してみてください。

3 自分なりに説明してみます

以下は、向山氏の指導に加えて、私なりの実践を書いてみます。できれば、教師は2人で指導してあげるのがいいと思います。教師が手首を痛めないように(私は長年の跳び箱の指導でずいぶん指と手首をやられました。)。体育の時間に跳べなかった子供を放課後に残して指導してあげるのがいいと思います。そうすれば、複数の教師で指導することが可能になります。

4 跳べない子供について

クラスに1・2名は、なかなか跳ぶことができない子供がいます。

A 肥満または身体的な障害があり、助走が遅く、自分の体を支持できない。
B リズムをつかめない。
C 間違った跳び方が刷り込まれて抜けない。
D 跳ぶのが怖い。または、克己心が不足して、跳ぶ気がない。

などの原因が考えられます。A~Dの要因が複合している場合が多いです。それでも、Aの状態が極度である場合を除けば、15分を3・4回繰り返せばほとんどの場合何とか跳びます。体力がついてくる割にはまだ体が軽く、補助のしやすい3年あたりがちょうどいいのではないかと思います。ひと学年の人数が少々多い学校でも、男の先生がいるのなら「跳べない人のためのプチ跳び箱教室」を放課後にでも開いてあげてください。あっと言う間に跳びますのでほぼ100%に近い成果をあげることができます。

5 不安の除去

跳べない子供は、Dの「気持ちの上での問題」によることが大きいようです。「○年生なら、4段は絶対跳べるものなのです。大丈夫です。必ず先生が跳ばせます。」と、暗示をかけます。分厚い目(30~50cm) のマットがあれば、それを敷いておいてあげましょう。準備運動の段階でそのマットにダイブさせてもいいでしょう。幼稚園で使うような小さめ(短め)の跳び 箱があればなおいいです。「馬とび」もいいです。小さいものから、大きいものへ、スモールステップを踏ませてあげてください。最近の子供は思わぬところで考えられないような怪我をします。安全にはくれぐれも気をつけてください。

6 低い段から始める

まずは、あまり高くない段(その子供がまたがったときに、足から地面までが10㎝程度)に跳び乗るところから始めましょう。跳べない子供はたいていの場合、跳び箱に対して恐怖心を持っているため、簡単なところから始めて、スモールステップで難しくしていくのがいいと思います。あまり低い段を跳ばせようとすると、下に突っ込む感じになりますので、それも怖いと思います。短い跳び箱があれば、まずは短いものから跳ばせてあげるのがいいでしょう。
跳び乗ることができたら、今度は跳び箱にまたがった状態から手を付けて跳び降りる練習をさせます。最初は、跳び箱の前の方から跳び下りさせます。これを何度も繰り返し、上手になったら10㎝ずつぐらい後ろに下がらせて跳び下りさせます。跳び箱の半分ぐらいのところから手をついて跳び超せるようになれば、成功にぐっと近づきます。
苦手な子供は、上にまたがった状態からでも補助をしてあげるといいです。「いっせーのーで、トン」とか、教師が擬音語を言ってやりながら手でお尻を押しながら跳び下りさせましょう。

7 助走なしで

低い段であれば、助走なしで跳び越すことができます。跳び箱に手をつけた状態から、一気に跳び越させます。これには最初、補助がいると思います。教員2人組で、子供の腕を左右から持ってあげて、もう片方の手で子供の太ももの付け根あたりをぐいと押してあげるのがいいでしょう。跳び箱の補助は、教師の手首や指を痛める原因になります。できれば手はグーにして、手首より下(=腕)を使って太ももの付け根あたりを押してあげると怪我をしにくいと思います。教師2人のマンパワーが必要ですが、結局は1人でやるよりも早くできるようになります。
怖くて両足が十分に開かない子供(よくO脚になってブレーキをかける子供がいますね)、両足を開くタイミングが悪い子供でも、両足の付け根を持って補助しているため、「とっさに足を開く」というタイミングをつかみやすいです。
1回ずつ、次々と違う子供を跳ばせるのではなく、同じ子供を連続5回ぐらい跳ばせると、身に付きやすいです。徹底反復です。
跳び箱をするときのイメージをもたせることが大事です。跳び箱についた手の上を重心が移動するように肩が後ろから前へと移動するイメージを持てるようにします。最終的には前傾してそのまま飛び降りる格好になります。この動作を何べんもやらせます。跳んだらすぐに「もう一回!」、と、連続して跳ばせます。

8 助走をつけて ~あまり長い助走をさせない

助走なしでできたら、今度は助走付きです。普通は助走した方が跳べるようになると思えますが、助走をつけると恐怖心が芽生えるのか、急にできなくなる子どもがいます。あまり長い助走をつけると走る速度が速くなり、苦手な子供には怖いようです。助走は初めのうちは3m~5mぐらいのところからスタートでいいと思います。
跳び箱に手をついたとき、腕と体が90°以上開いたままになっていると、物理的にストップがかかってしまいます。普通なら手をついてからだんだん腕と体の角度がせばまってゆくのですが、これが恐怖心があるとできないようです。「ト・トーン・トン」と今度もまた教師が擬音語を言ってやりながら跳び超すように仕向けましょう。「ト」が踏み切り、「トーン」が手をついている間、「トン」が着地です。
なかなか自力では上達しない子供には補助をしてあげましょう。できれば助走なしの時の様に2人組で両側から子供の手を持って、太ももの付け根あたりを押してあげましょう。

9 合格

4段辺りから始めて、3回続けて跳べたら合格、次の段に挑戦させましょう。と言っても、成就感を持たせるために、せいぜい6段を跳べたら大いに褒めてあげて、終わりましょう。なかなか跳べない子供も、だんだんと周りの友達が跳べるようになってくると、焦りを感じてパワーを出すことがあるので面白いです。「きっとできるよ」「あと10cm!」などとうまく、声かけをしてあげると不思議なくらいどんどんと跳べる子供が続出します。

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