部活動顧問ってどんな仕事?〈横浜市立東高等学校・平澤香織先生〉

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目次

1 はじめに

 この記事は、現在高校教師をされている平澤先生に、部活動の顧問としての活動について取材した内容を記事化したものです。(取材は2022年7月)

 平澤先生は今までにソフトテニス部、美術部、パソコン部、硬式テニス部、水泳部などの部活動の顧問を経験してこられました。そのなかで、顧問の活動について感じた様々なことを伺いました。

  • こんな人におすすめ!

◎部活動の顧問をしている先生

◎部活動での生徒との距離感に悩んでいる先生

◎顧問の仕事に不安を抱えている先生

◎教師になりたいと思っている人

2 顧問としての活動

◎部活動顧問としての仕事のやりがい

 部活動では、生徒が授業とは違う顔を見せてくれることが多いです。「教える、教えられる」といった関係性になりがちな教室と違い、スポーツ・文化活動を通して、生徒と違った関係性を築くことができます。また部活は授業以外の、生徒の人間形成の場として挙げられますが、そこに携わることができるのもやりがいの一つです。

◎顧問の仕事で大変だったこと

 時間のやりくりは大変でした。パソコン部・美術部などの文化部は運動部より活動日が少なく、それほど時間的な負担はありませんでしたが、運動部、特に水泳部は安全面からプールサイドに必ずついている必要がありました。私が勤務した学校では、運動部は複数顧問制でした。一緒に顧問を担う先生と信頼関係を築くことも、部活動の顧問をする上で重要なポイントです。

◎顧問として心がけていたこと

 体力的・技術的な面において、生徒の方が上回るということはよくあります。それを踏まえて自分にできることを考え、適切なアドバイスをすることを心がけてきました。学校行事など生徒の今後の予定を把握し、練習の組み方などをアドバイスするようにしていました。

 専門外ですと、その部活動についての知識は生徒ほどはありません。わからないことは生徒に聞いていました。生徒たちもよく教えてくれます。試合においてのしきたりなどは分からないことが多いので、慣れないうちは心細く感じることもありましたが、他の顧問の先生や生徒とのコミュニケーションを大切にすることで乗り越えてきました。

3 生徒との関わり合い方

◎生徒と教師の望ましい関係性

 生徒が成長すること、人として成長していく姿を見るのが、教師にとって幸せなことだと思います。「どういう関わり方をすれば生徒は成長していくのか」と考えてきました。時には厳しいことを言わなければいけない時もありますし、接していくなかでお互い理解し合うのが難しい時期もあるかもしれませんが、「こういう風に育ってもらいたい」「これを身につけてもらいたい」というような、顧問が考えていることを生徒が理解していかれるような関係性が望ましいと思います。

◎生徒と教師との対話

 生徒との対話は重要だと考えています。対話できていないと、信頼関係が築けず「先生が言ってることがよく分からない」「先生が厳しい」などという事態に陥ってしまうこともあります。思いがあっても生徒に伝える努力をしていかないと勘違いさせてしまうこともあります。「言わなくてもわかってほしい」ではなく、きちんと言葉にして説明をし、生徒が疑問に思ったら教師に声をかけて聞けるような関係性を築くことが大事だと思います。

 また授業でも同じですが、教師の方が人生経験が長く、専門的な知識があるという状況では、どうしても「教える、教えられる」という関係になってしまいがちです。しかし、私たち教師も毎日の教育実践や部活動を通して生徒たちに教わっていることや生徒を通して学んでいることがあると思います。お互いに学び合い、よいものを目指していこうという気持ちが大切なのではないでしょうか。

4 教職という仕事について

◎部活動の実態

 部活動が長時間勤務の要因の一つになっているとは思いますが、決して部活動だけがその要因ではありません。朝から放課後までの教育実践、生徒が下校してからの事務仕事を含めた業務のなかにも忙しい要因はあると思います。

 確かに、メディアなどで教師の仕事のブラック化が取り上げられる際、部活動がその一因として紹介されることは多くあります。しかし、報道される内容は誰かが取材した内容ということもあり、取材した人の主観が入ってしまうこともあります。メディアが伝えることを真に受けるのではなく、ニュースで聞いたことや調べたことを自分で考え、方向づけていくことが必要です。一つの情報として得ていくことはよいことですが「本当にその情報が正しいのか」と懐疑的に考え、自分なりの考えを導くことが大切だと思います。

◎教師になりたいと思っている人たちへ

 少しでもなりたいという気持ちがあればぜひ夢を叶えてほしいです。

 生徒は色々なことにチャレンジしたり吸収したりする無限の可能性を持っています。教師にとっても社会にとっても宝物のような存在です。その瞬間に立ち会い、寄り添うことのできる仕事は世の中に多くは存在しません。生徒たちの様々な可能性を引き出すお手伝いをしたり、時には刺激を与えてみたりする機会に恵まれた仕事が教師です。教師は、子どもたちの可能性や成長を間近で見つめることができる素敵な仕事だと思います。

 とはいっても最近は、やはり長時間労働などが問題になっています。しかし実際に教師になって働く自分の姿を想像し、教師について報道で言われていることを自分なりに解釈してみることが大事だと思います。これまで、生徒や保護者、同僚などとの関係を振り返ったり、所属する組織を俯瞰的に捉えたりすることが容易にできない程忙しかったのですが、これからは現場が変わっていくと思います。むしろ、自分たちが現場のチェンジメーカーになっていこうという気持ちを持って、若い人にチャレンジしてもらえたらと思います。

5 プロフィール

平澤 香織様

横浜市立東高等学校所属。現在、早稲田大学大学院教育学研究科にて学校教育専攻。群馬県・東京都・愛知県において、数学科・国語科・社会科の非常勤講師を経験。名古屋市正規教員を経て横浜市にて採用、現在に至る。学生時代はソフトテニス部・硬式テニス部・体育会アイススケート部に所属(インカレ出場)。

6 編集後記

 このテーマで取材をさせて頂こうと思ったのは、「部活動の顧問の仕事が教師のブラック化を促進している」という情報がメディア各所で取り上げられていたからです。そのため、失礼ながら取材をする当初から「教師はブラックな職業である」という固定観念を持ってしまっていました。しかし平澤先生から、必ずしもそうではないということ、外部からの情報をあてにして一方的にものを見てはいけないことを学びました。この取材は今後の大きな糧として活かしていきたいと思います。

 「ブラック部活動」などの部活動に対するネガティブな言葉が近年世に蔓延しています。しかし、部活動はブラックな側面もある一方で、生徒と教師が授業とは違う関係性を構築し、成長しあう貴重な教育現場でもあります。取材のなかで、平澤先生の「(生徒が)人として成長していく姿を見るのが教師にとって幸せなことだと思う。」という言葉が私の中では1番心に残っています。平澤先生の生徒を思う気持ちを強く感じられた取材でした。

(取材・編集・文責:EDUPEDIA編集部 茨木・下山)

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