【著書紹介】誰もが通る「まちがいの道」から学ぶ|大前暁政先生

7
目次

1.はじめに

本記事では、2022年12月発売の『まちがいだらけの学級経営 失敗を成長に導く40のアプローチ』(明治図書出版)および2023年3月発売の『心理的安全性と学級経営』(東洋館出版社)の2冊について、著者の大前暁政が皆様に紹介いたします。

2.書籍の内容

『まちがいだらけの学級経営 失敗を成長に導く40のアプローチ』は、学級経営で陥りがちな失敗に学び、教師も学級も前向きに成長するためのアプローチをまとめたものです。

『心理的安全性と学級経営』では、教室で心理的安全性を高めるにはどうすればよいのか、教師のリーダーシップはどうあるべきかをエピソードを交え紹介しています。

類書との違い

これらの本では、著者の経験に基づく具体例と、心理的安全性に関する最新の教育研究から、学級経営改善への前向きなアプローチを学ぶことができます。

こんな先生に読んでほしい
  • 学級経営のコツを学べる書籍をお探しの方
  • 日々の教師生活における経験の活かし方を知りたい方
  • 学級経営に関する最新の教育研究について知りたい方
  • 自分の学級経営に迷いがある方

3.書籍の一部を紹介!

1 「まちがいの道」とは

学級経営には、誰もが通る「まちがいの道」があります。

例えば、教師が話しているときに割り込んで質問をしてくる子どもがいます。4月最初は、1人、2人だったので、教師は気にせず、毎回質問に対応します。すると、「話の途中で質問をしてもよいのだ」と、それを見ていた子どもたちは思います。

こうして、一週間ほどすると、最初は2人程度だったのが、5人、6人と質問者が増えていきます。やがて教師が話していても口々に子どもたちが発言するようになり、収拾がつかなくなっていきます。

この「まちがいの道」に入らないために、最初にたった一言、伝えるべきでした。

「先生が話しているときは質問をはさみません。話が全部終わってから質問の時間をとるから安心してくださいね」

このたった一言で、教師の話が通らなくなる状態は避けることができたのです。

2 「まちがいの道」を避けるためには

このような「まちがい」を共有できれば、他の教師も同じまちがいの道に進まなくて済みます。つまり、人の「まちがい」から学ぶことができるのです。

ところが、毎年誕生する新しい教師たちは皆、典型的な「まちがいの道」を通ります。そして、こう言われるのです。「教師は反省が大切だよ」と。このようなことを言われると、自分は教師に向いていないのかと誰もが自信をなくします。

私は、このような事態を打開すべきだと思っています。誰もが同じ「まちがいの道」を通るなら、その道を通らないように前もって準備をしておけばよいのです。反省を促すより、こんな「まちがい」があるよと教えてあげた方が何倍も若い教師のためになります。つまり、人が通ってきた「まちがいの道」を共有することが大切なのです。そうすれば、新しく教師になった人が同じ過ちを繰り返さずに済むからです。

3 一見わかりづらい「まちがい」の原因とは

ところで、この「まちがいの道」というのは、上に挙げたような、原因が「わかりやすい事例」ばかりではありません。中には、原因が特定しづらいものや、複数にわたっているものもあります。つまり、「なぜこれが『まちがい』だったのだろう?」と悩んでしまうような「わかりにくい例」もあるのです。

例えば、次の事例はどのような理由でまちがったのか、すぐにわかるでしょうか?

「楽しい授業を前もって用意した。この授業は、子どもの興味・関心に沿っているし、子どもが行う活動量も多い。また、子どもにはその活動を行うのに必要な能力も十分にある。時間も場所も教材も十分に確保した。しかし、いざ授業をしてみると、まったく盛り上がらなかった。授業後の感想には,「授業がおもしろくなかった」と書かれていた・・・。」

この理由をひもとくには、「最新の教育研究」を知る必要があります。例えばこれは、学級集団に「心理的安全性が確保できていなかった」ことが理由であるかもしれないのです。この概念が世に広がったのは、2000年代になってからです。「心理的安全性」の概念は、まず医療や企業の世界で広がっていきました。なぜなら、心理的安全性が確保できなければ、そのような集団での個人のパフォーマンスが大幅に下がることが問題となっていたからです。

この事例を反省するためには、「心理的安全性」という概念を理解する必要があります。つまり、最新の研究成果も知っておかないと、反省すらできないのです。

この事例を踏まえても、先述の「教師は反省が大切だよ」という指摘は「安易」で「無責任」な一言であることがわかります。「わかりにくい例」から学ぶことは、容易ではありません。なぜなら、「わかりにくい失敗例」から学ぶには、知識の蓄積が必須だからです。

一方で、「わかりにくい例」では、大きな学びが得られます。そのため、私たち教師は、このような「まちがいの道」の「わかりにくい例」からも学ぶ必要があるのです。

4 「まちがい」から学ぶために必要な情報

最近になって、2冊の書籍を執筆し、刊行されました。

明治図書出版
¥2,486 (2023/04/03 20:38時点 | Amazon調べ)

1冊目は、『まちがいだらけの学級経営 失敗を成長に導く40のアプローチ』(明治図書出版)という書籍です。この書籍では、典型的な「まちがいの道」を紹介しています。二部構成になっており、前半では「まちがいの道の具体例」、後半では「まちがいの分析」を紹介しています。

注目してほしいのは、「まちがい」をどう分析しているかです。「まちがい」を詳しく分析するほど、学びは大きくなります。また、同じ「まちがいの道」を歩まずに済みます。原因がわかりにくい例ほど、その教師にとって大きな学びになります。

私たち教師は、「まちがい」を活かして成長していけるのです。是非、ご自分でも「まちがい」の分析をしてほしいと思います。そして、私の分析と比べてみてほしいのです。

東洋館出版社
¥2,200 (2023/04/03 20:39時点 | Amazon調べ)

もう1冊は、『心理的安全性と学級経営』(東洋館出版社)という書籍です。最新の研究テーマである「心理的安全性」に関して、1から理論と方法を解説しました。こちらも併せて参考になるはずです。

これらの書籍については、私のHPでも詳しく紹介しています。是非一度、手に取っていただきたいと思います。

4.プロフィール

大前暁政(おおまえあきまさ) 京都文教大学

公立小学校教諭を経て、2013年4月より京都文教大学に着任。教員養成課程において、教育方法論や理科、教職実践演習などの教職科目を担当。「どの子も可能性をもっており、可能性を引き出し伸ばすことが教師の仕事」ととらえ、学校現場と連携し新しい教育を生み出す研究を進めている。文部科学省委託体力アッププロジェクト委員、教育委員会要請の理科教育課程編成委員などを歴任。理科の授業研究が認められ「ソニー子ども科学教育プログラム」や「日本初等理科教育研究会優秀論文賞」に入賞。研究分野は、理科教育、教育方法、学級経営、生徒指導、特別支援教育、科学教材、教授法開発、教師教育など多岐に及ぶ。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

この記事は、EDUPEDIAの認定を受けたライターによって書かれたものです。EDUPEDIAは、教育現場での実践経験や教育情報に関する記事の執筆について、様々な方にご協力いただいております。
教育実践の提供や記事執筆にご興味がありましたら、下記リンク(EDUPEDIAお問い合わせフォーム)よりお問い合わせください。
https://edupedia.jp/aboutus#1622473627276-8e2dffba-8002

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次