本単元で身に着けたい資質・能力
本単元では、『量の大きさを比べること』について具体的な操作から体験的に学び、身の回りにあるものの量的側面に関心をもって調べたり、比較したりする態度を育む。また、前単元にある「どちらがながい」と合わせて、直接比較や間接比較、任意単位による測定を適切に使い分け、表現できる能力を養う。
単元の評価基準
- 知識・技能:直接比較と間接比較、任意単位による測定の違いを理解している。
- 思考・判断・表現:
- 比較する際、どの比較方法が適切かを判断することができる。
- 任意単位による測定時、何を単位とするのか適切に判断することができる。
- 主体的に取り組む態度:「どちらがおおいか」だけでなく、「どれだけおおいか」まで、比較しようとしている。
単元の展開【3,4時間目/全4時間】
◆3時間目(目的:任意単位による測定)
準備
① 7分目あたりに線を引いたプラスチックコップ(人数分)
② 大きさの異なるバケツ(4個)
導入
今日も「比べる」をテーマに算数の勉強をするので、4チームに分かれての「チーム対抗戦」をすることを伝える。
【チーム作り】(「どちらがながいか」の復習)
席近くの4人でまゆげの長さ比べをして、短い人順に1,2,3,4班と決める。
同じ大きさの人がいれば、髪の毛の長さ等で比較をする。
本編
運動場へと移動し、競技の説明を行う。ルールを難しくしたことを伝え、対抗戦への意欲をあげる。
チーム対抗戦②:「水くみ競争:あさがおを救うヒーローは誰だ!?(改)」
【ルール】
1.制限時間は3分間。
2.蛇口から離れた位置に各チームのバケツをセットする。
3.児童には同じ大きさのコップを一人1個ずつ配布。
4.児童はコップの線が引かれたところまで水を入れて走る。
5.自分のチームのバケツに水を入れる。ただし、水がこぼれたらやり直し。
※1:バケツにいれる前に教員がコップにかかれた線で水量を確認する。
※2:教員はどのチームが何杯水を入れたのかを記録しておく。
※3:児童の人数によっては管理が大変なのでリレー形式でも良い。
6.制限時間後、バケツの中の水が多いグループが勝ち。
(児童に伝えるのは4~6で、時間は教員が声をかけるまでと伝える)
ゲーム終了後、結果発表をしたいが、前回使ったペットボトルを忘れてしまったことを伝え、勝敗がつけられないと困って見せる。直接比較も間接比較も使えないことを確認したのち、どのようにしたら勝敗が決められるのかを話し合う。考えがまとまらない場合には、以下のヒントを出す。
【ヒント】
※2の記録を実際に児童に見せて、「ペットボトルは忘れたけど、先生これだけは記録をとっていたんだ。これで結果が分かれば良いのだけど。」等と伝える。
最終的には児童に、大きさの同じコップなのでバケツに入れた回数を数えられれば、任意単位による測定が可能であることに気付かせる。結果発表へと進み、練習同様数を数えながら、コップでバケツの中の水をすくい出す。「〇本のあさがおを救ったヒーローチーム!」と各チームを表彰し、どのチームが何杯分差をつけて勝っていたのかまで確認をする。
まとめ
連続性のある量の概念も、任意単位による測定を活用すると数えられるようになり、『どちらが、どれだけ、おおいのか』比較できることを理解させる。
◆4時間目(目的:授業ベースでのまとめ)
準備
①大きさの異なる2種類のペットボトル
②大きさの異なる3種類のプラスチックコップ(複数)
導入
チーム対抗戦の「おつかれさま会」をするため、2つの水の入ったペットボトルを用意した。どちらがおおくはいっているのかを考えてみよう。
本編
今までに習った3つの比較の確認をし、どの比較方法がより良いのかを全体で検討する。
1.どちらのペットボトルにも水がはいっている。⇒直接比較は選択肢からはずれる。
2.ペットボトルの水がすべて入る同じ大きさの容器がない⇒間接比較は選択しからはずれる。
3.たくさんの(大きさが同じ)コップがある⇒任意単位による測定ができる。
比較方法が決まったところで、大きさの異なるコップに教員が適当にそれぞれのペットボトルに入った水を注ぎ、「Aのペットボトルの方がコップ3個分多いから、Aの方が多いとわかるね!」と間違いを発表する。児童から教員の発言に対する質問を引き出し、全体で何がいけなかったのかを確認し、同じ大きさのコップで比較しなければ適切な任意単位による測定ができないことに気付かせる。
次に、大きさの異なる3種類のコップを各班に配り、どのコップを使うのが適切かとその理由を班内で検討させる。考えがまとまった班から、実際にペットボトルの水を使って大中小それぞれのコップで実験し、「どちらのペットボトルが、どれだけおおいのかを実験を見ていない先生にも分かるように教えてください。」と伝える。
【実験結果】
1.大きいコップの場合
どちらがおおいかは分かるが、どの程度の差があるのかを数値で表すことができないので、教員にうまく伝えられない。
2.中くらいのコップの場合
どれが、何杯分おおいのかが適度に分かる。
3.小さいコップ
どれが、何杯分おおいのかは中くらいより細かく分かるが、作業量がおおく大変である。
教員への報告を含めた実験を通じて分かったことを班内でまとめて、全体で共有をする。
まとめ
児童に以下の2点を理解させる。
1.同じ大きさ(単位)で比較をしなければ、適切な比較ができないこと
2.任意単位が大きすぎると、どれだけ大きいのかを正確に測れないこと
余裕があれば、「中くらいのコップで測ったグループの杯数」と「小さいコップで測ったグループの杯数」の違いに触れ、普遍単位の必要性を考えさせされると良い。
評価の観点「思考・判断・表現」として、中くらいのコップと小さいコップについてのメリット、デメリットにまで触れられているかはぜひ確認をしておきたい。
今後の発展を見据えて
4時間目の授業のまとめで、皆が同じ任意単位を用いる利点に気付くことができれば、小学2年生における普遍単位の理解がよりスムーズなものとなる。また、中くらいのコップと小さいコップのメリット、デメリットに気付けた児童は、状況に応じた適切な単位の変換(時間⇔分⇔秒 等)の有用性に気付くことができるだろう。
様々な「次につながる種」を蒔きながらも、すべては説明しない。気付いた児童にはより深い学びを与え、気付かなかった生徒にも「分からない」という苦手意識を抱かせずに済む。理解度に合わせた高度な学習となることを願う。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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