4年理科「月と星の位置の変化」~授業中にできない観察を成功させる工夫~

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目次

はじめに

星の明るさや星座について学習した後に行う単元である。

教室で実物を観察することが難しい天体の学習は、児童に興味をもたせることが難しい。古くから天体観測をもとに農業や航海が行われてきたことや、今後の宇宙開発のことを思えば、天体の学習をきっかけに宇宙に目を向けさせたいところである。家庭に協力をお願いし、できる範囲で実物を観察させたい。

本単元で身につけたい資質・能力

月や星の特徴について、位置の変化時間の経過に着目して、それらを関係付けて調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるようにする。

  • 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
    • 月は日によって形が変わって見え、1日のうちでも時刻によって位置が変わること。
    • 星の集まりは、1日のうちでも時刻によって、並び方は変わらないが、位置が変わること。
  • 既習の内容や生活経験を基に、月や星の位置の変化と時間の経過との関係を予想し、表現すること。

単元の評価規準

知識・技能

  • 月は日によって形が変わって見え、1日のうちでも時刻によって位置が変わることを理解している。 
  • 星の集まりは、1日のうちでも時刻によって、並び方は変わらないが、位置が変わることを理解している。 
  • 観察、実験などに関する技能を身に付けている。

思考・判断・表現

  • 既習の内容や生活経験を基に、月や星の位置の変化と時間の経過との関係を予想し、表現している。

主体的に学習に取り組む態度

  • 月や星についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしているとともに、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。

本単元の難しさ

夜間の観察

保護者の協力が必要になるため、観察ができる児童とできない児童が出てくる可能性がある。できた児童が撮影してきた画像を教室で共有するなどの工夫をして、できなかった児童も観察の仕方や天体の動きを理解できるようにしたい。

観察する日には、時間を指定してオンラインで指示を出すなど、一人1台端末を有効活用したい。

夜間の観察の工夫

  • 教科書の説明とそれに沿ったプリントで観察させる。(この記事で紹介している方法)
  • 自宅にタブレット端末を持ち帰らせ、観察に適した時間にオンラインでつなぎ、参加できる児童で一斉に観察させる。
  • 自宅にタブレット端末を持ち帰らせ、観察に適した時刻にメッセージを送って児童それぞれができる時間に観察させる。

※観察結果を撮影し、結果として送信させてもよい。

時期の調整

観察に適した時期を選んで授業を実施する必要がある。児童が観察しやすい時間帯に出ているのは、上弦の月から満月である。できれば中秋の名月を観察させて、お月見の風習や昔から人々を魅了してきた美しさにも触れさせたい。中秋の名月でなくても秋は月がきれいに見えるので、どこかで観察の機会をつくるとよい。

逆に、星は月が出ていると観察しにくい。新月の前後数日から選んで観察をさせたい。

「月齢カレンダー」で検索すると、月の形を簡単に調べることができるので、授業準備に役立てるとよい。

見せたい天体を児童が見つけられない

月を見つけるのは簡単だが、星の動きを観察するときには観察する星や星座を決める必要がある。時間をおいて星を観察し、どれだけ動いたか調べるのであるが、決めた星を追うのは慣れていないと難しい。教科書(大日本図書)では、はくちょう座が扱われているが、夏の大三角さそり座も観察しやすい。児童の実態によって、星座を指定するか、どれでもよいので同じ星を追うか決めるとよい。できる児童には北のカシオペア座も観察させると、全天の星の動きを児童の観察結果でまとめることができる。

※夏の星座が取り上げられているのは、これらの星座が秋の夜の早い時間に真上で観察できるからである。

単元開始までの準備

  • おたよりで保護者に協力をお願いしておく

夜間の観察が難しい家庭もあるかもしれないが、児童と一緒に天体観測を楽しみたいと考える保護者も多い。天文台に行ったり、家から見える天体を調べたりしてくれていることもある。夜の観察を早めに予告しておくことで、星について調べてきた児童に授業中に話を振り、クラス全体の意欲を高めることができる。教室で「昨日の夜空」を話題に出していると、「昨日○○座を見たよ!」「先生、昨日は月がきれいだったね!」と教えてくれる児童がだんだん増えてくる。

  • 天体アプリを児童用端末にインストールしておく

星座早見と併せて使うと、星の観察を正確に知ることができる。授業中に、星座早見と見比べながら、星を探す練習をすることもできる。

【参考】Sky Guide(スカイ・ガイド)

  • 夜空の観察をしておく

地域によっては、夜空が明るすぎて星が見えにくいことがある。児童に分かりやすい指示を出すためにも、どの程度星が見えるのかあらかじめ調べておく必要がある。実際に建物を目印にして星を観察している画像も用意しておくと分かりやすい。

単元の展開【全8時】

第1次 月の位置の変化

第1時 昼間の月を見てみよう。

  • 教科書の月の写真を見て、気がついたことを話し合う。
  • 話し合ったことをもとに、次時の問題をつくる。

児童から出したい発言

「昼にも月が見えるよ。」

月はいろいろな形があるよ。」

「うちでは毎年お月見の日にはお団子を作って、月を見ながら食べているよ。」

3年生のときに太陽が動いていることを調べたけど、月も動いているんじゃないかな。」

「夏の大三角を習ったってことは、秋の星座もあるのかな。」

星も動いているかもしれないよ。」

「太陽が動いていることは学校で調べたけど、月や星が動いているかどうかは、どうやって調べたらいいのかな。」

第2・3時 月は動いているのだろうか。

  • 月が動いているか調べる方法を考える。
  • 結果を予想する。
  • 夜間の観察の注意点を教科書で確認する。
  • 家で月の観察をする。
  • 月の動きについてまとめる。

※月の高さを調べられるよう、握りこぶしで角度を測る練習をする。窓から見える建物などで練習するとよい。

※家で観察するときには、教科書の説明が観察の手がかりとなる。保護者にも観察の内容が分かりやすいように、教科書に沿った観察用プリントを配布して方法を共有する。

※月の位置は変わっても月の形は変わらなかったという結果から、月が違う形のときにも同じように動くと思うか問いかけ、次の問題をつくる。

※次の授業まで毎日月の形を話題にして、日によって月の形が変わっていることを観察させておく。

授業は上弦の月(右側が円い半月)が見える日に設定するとよい。教科書と同じ月を観察させることができるし、3、4日前から夕方(下校時刻ごろ)にうっすら月が見える

※夜の天体は、クラスみんなで同じものを観察するのが難しいが、みんなで同じ月を見ることができて盛り上がる。

第4・5時 満月も同じように動くのだろうか。(3時は課外)

  • 月の形の変化や月齢カレンダーをもとに、もうすぐ満月であることを知る。
  • 満月も同じ動きをするのか予想し、前回の観察をもとに観察方法を考える。
  • 家で満月の観察をする。
  • 満月の動きについてまとめる。

※日々の観察から、月の形は日によって変わることを確認する。

※前の実験と同じプリントを配布し、観察の見通しをたてやすくする。

月が出てくる時間帯がだんだん変わってくることに気付く児童もいると思われる。月の形は太陽との位置関係によって決まり、6年理科で学習する。ここでは出てくる時間が変わることにだけ触れておくとよい。

第2次 星の位置の変化

第6・7時 星も時間とともに動いているのだろうか。

  • 星が動いていると思うか、動くのであればどのように動くと思うか予想する。
  • 星座早見と天体アプリを使って、星を探す練習をする。
  • 家で星の観察をする。
  • 星の動きについてまとめる。

※「星が動く」というと、それぞればらばらに動いていると予想する児童もいる。星同士の位置関係は変わらず同じ方向に動くのか、それとも星によって違う向きに動くのか、はっきり予想させておく。

※星の位置関係が変わるか確かめるためには、星座を観察して形が変わるかどうか確かめさせる。

※星座を指定せずに、方位を割り振って観察させる方法もある。東西南北それぞれの星の動きを観察させてまとめると、全天の星のうごきを確かめることができる。

※星座早見は空が曲がった状態で表されているため、これを手がかりに星を見つけるのは慣れるまで難しい。天体アプリで観察する時刻を設定して星座早見を同じ時刻に合わせ、実際の見え方との違いを教えておく。(実際の空ではまた違って見えるため、端末を持ち帰らせてAR機能を使って見つけさせるのもよい。)

第8時 月や星の位置の変化について学んだことをまとめよう。

  • 分かったことを絵や字を使ってノートにまとめる。

※図や絵を使いながら、ノートに自由にまとめさせる。

3年で学習した太陽の動きと関連させて記述させるとよい。

※太陽と月、星が同じような動きをするのはなぜだろうと考える児童もいる。実際は天体ではなく地球が動いているから、天体が同じように動いて見えると話をしておきたい。4年生全員が理解する必要はないが、動きの共通性を学んだあとに地動説について知ることで、より天体に興味をもつ児童もいるからである。

※アメリカが中心になって計画されているアルテミス計画の中で、これから月面基地が建設され、日本人も滞在することが予定されている。宇宙に関するニュースになじみのない児童もいると思われるので、学校で話題にしておきたい。

参考:国立教育政策研究所,”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”,p.37,東洋館出版社,令和2年,

https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_pri_rika.pdf

執筆者プロフィール

Cana

元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、家庭の事情で退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。

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この記事を書いた人

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