はじめに
本単元のポイントは、質量保存の概念と、密度の基本的な考え方を育てることである。
子ども特有の考えで、形が変わると質量が変わるというものがある。5年「もののとけ方」では、塩が水にとけたら重さがなくなると考える児童がいるが、そのときにも本単元の学習内容がつながってくる。
密度を理科で学習するのは中学校であり、「単位量あたり」の考え方は5年算数の割合に関わるものである。「密度」という言葉を教えないにせよ、論理的に物を考える上で身につけさせたい考え方である。
本単元で身に付けたい資質・能力
物の性質について、形や体積に着目して、重さを比較しながら調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。
- 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
- 物は、形が変わっても重さは変わらないこと。
- 物は、体積が同じでも重さは違うことがあること。
- 物の形や体積と重さとの関係について追究する中で、差異点や共通点を基に、物の性質についての問題を見いだし、表現すること。
単元の評価基準
知識・技能
- 物は、形が変わっても重さは変わらないことを理解している。
- 物は、体積が同じでも重さは違うことがあることを理解している。
思考・判断・表現
- 物の形や体積と重さとの関係について追究する中で、差異点や共通点を基に、物の性質についての問題を見いだし、表現している。
主体的に学習に取り組む態度
- 物の性質についての事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしているとともに、学んだことを学習や生活に生かそうとしている。
本単元の難しさ
本単元で児童に予想をさせると、「形を変えても重さは変わらない」という正しい考え方しか出ないことがある。しかし、児童の手のひらに粘土を置いて、置き方を変えて感じ方をきくと「重さが変わった」ということがある。また、粘土をばらばらにして「これでも重さは同じだと思うか」と聞くと、重さは変わると考える児童が出てくる。これは児童がもちやすい誤概念であるが、児童が自覚していないこともあるので教師から提案する必要がある。あえて教師がゆさぶりをかけて、科学的な概念を意図的に獲得させていきたい。
また、単位量あたりの考え方は3年生の児童にとって難しいものである。極端に量の違う砂糖と塩の重さを比べさせることで「先生、それじゃだめだよ」という言葉を期待したい。比べるときに体積を揃えることは、素材によって重さが違うという知識と同じくらい大切な知識である。
単元開始までの準備
重さをはかる実験の準備
実験する班の数だけ、油粘土を用意しておく。油粘土は重さだけではなく、形もそろえておく。同様に、アルミホイルも重さを量っておく。電子天秤は、児童が量定で混乱することがないよう、小数点以下は表示されないもの(1グラムまでしか量れないデジタル表示のキッチンスケールなどがよい。)を使う。小数点以下は算数でも未習であるし、誤差が出ると結果の考察が難しくなるためである。
同じ体積で素材が違うものの準備
本単元の実験用に、同じ形の木片や金属、プラスチックなどが入った密度を学習できる教材がある。これが一番わかりやすいので、学校になければ購入してもらうとよい。木片や発泡スチロールなどで作れないこともないが、児童にとって重い物の代表である金属を欠かしたくない。鉄とアルミニウムなど、金属でも種類によって重さが違うものがあることも教えておきたい。
単元の展開【全6時】
第1次 ものの形と重さ
第1時 物の形をかえると、重さはかわるのだろうか。
- 粘土の形を変えて手にのせ、手で感じた重さが変わったかどうか問うことにより、問題を設定する。
※粘土は四角柱にしておくとよい。手のひらで立てると重く感じるためである。
※粘土の形と重さの関係について話し合う中で、アルミホイルなどの軽いものだったらどうか問う。次時でどのような物でも重さは変わらないことに気付かせたいので、形を変えたら重さが変わりそうなものについて話を広げておきたい。
- 重さが変わりそうな粘土の形や、アルミニウム箔の形を考える。
- 調べる方法を考え、実験の計画を立てる。
第2時 ねん土やアルミウムはくの形を変えると重さは変わるのだろうか。
- 電子天秤の使い方を確認し、実験の準備をする。
- 前時に考えた粘土の形を作り、重さを調べる。
- 前時に考えたアルミニウム箔の形を作り、重さを調べる。
- 結果から分かることをまとめる。
※重さを調べるときには、算数との関連を図る。
※粘土とアルミニウム箔以外にも、紙や針金など形を変えて調べやすいものがあれば、教師が演示実験をして重さが変わらないことを実証するとよい。
※ブロックで何かの形を作り、ブロックの数を減らさずに形だけを変えて重さを調べるとよい。ブロックの数に注目させることで、質量保存の考え方をより納得して受け入れることができるだろう。

第2次 物による重さのちがい
第3時 物によって重さはちがうのだろうか。
- 見た目が似ている砂糖と塩は重さが同じか考えることを通して、問題を設定する。
※透明なプラスチックのケースなどに、あえて量の違う砂糖と塩を入れたものを見せ、体積を同じにしないと比べられないことに気付かせる。
- 問題について自分の考えをもち、クラスで交流する。
※砂糖と塩に限らず、色のついた砂糖や砂鉄などの粉状のもの、水や油などの液体、発泡スチロールや金属のかたまりなどいろいろなものを話題にしたい。どのような素材でも同じ体積にすると、素材によって重さが違うことを知り、学んだことを一般化することができる。
- 調べる方法を考える。
第4・5時 体積が同じでも、砂糖と塩の重さはちがうのだろうか。
- 同じ体積の砂糖と塩の重さを比べる方法を詳しく確認する。
※電子天秤の扱い方、砂糖と塩の体積を揃える方法(カップに入れてトントンと落とす、割り箸ですり切る)など、細かな手順を確認する必要がある。落ち着いた雰囲気で慎重に実験ができるようにする。
※手順を説明するときに、砂糖や塩を同じ容器に同じようにしてはかりとっても、全く同じ重さにはならないことをあらかじめ示しておく。それにより誤差にこだわることがないようにする。
- 実験をして確かめる。
- 各班の結果を共有し、結果から分かることをまとめる。
※誤差があるため各班の結果は同じにはならない。全ての班で、砂糖と塩の重さが違うという結果が出ていることに気付かせる。

第6時 学んだことを振り返ろう。
- 教科書の問題に取り組んだり、学んだことを自由にノートにまとめたりする時間をとる。
【参考】
- 国立教育政策研究所,”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”,東洋館出版社,令和2年 https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_pri_rika.pdf
- 新編楽しい理科3 東京書籍, 令和6年
執筆者プロフィール
Cana
元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、家庭の事情で退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。
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