小学4年理科「すがたを変える水」~水が「見える」ことで世界の見方が変わる~(大日本図書)

0
目次

はじめに

理科は、学習前後で物の見方が変わる教科である。水の状態変化について学習する本単元では、特にそれを意識したい。4年「雨水のゆくえ」「ものの温度と体積」「もののあたたまり方」と関連させると、地球上の水の循環を理解する基礎となる。身近なところでは、除湿や加湿など快適な生活につながる知識である。粒子のモデルを変身させながら、水のゆくえをイメージしたい

※自然に水が蒸発して水蒸気になる現象は「雨水のゆくえ」で学習済みである。

本単元で身に付けたい資質・能力

水の状態の変化に着目し、温度の変化を関係付けて調べる。それらの活動を通して、次の事項を身に付けることができるようにする。

  • 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
    • 水は温度によって水蒸気や氷に変わること。
    • 水が氷になると体積が増えること。
  • 既習の内容や生活経験を基に水の温度を変化させたときの体積や状態の変化について、根拠のある予想や仮説を発想し、表現すること。

単元の評価基準

知識・技能

  • 水は温度によって水蒸気や氷に変わること、また水が氷になると体積が増えることを理解している。
  • 観察、実験などに関する技能を身に付けている。

思考・判断・表現

  • 既習の内容や生活経験を基に、水の温度を変化させたときの体積や状態の変化について根拠のある予想や仮説を発想し、表現している。

主体的に学習に取り組む態度

  • 事物・現象に進んで関わり、他者と関わりながら問題解決しようとしているまた学んだことを学習や生活に生かそうとしている

本単元の難しさ

日常で聞く言葉と理科で使うことばの使い方のちがい

蒸気機関車が出す煙を「蒸気」と呼ぶからか、「水蒸気」は「湯気」と混同しやすい。テレビに出ている大人でも、湯気を「水蒸気」と言っていることがある。

また、氷も水も水蒸気も、全て同じ「水」という物質であるという概念は子どもに伝わりにくい。変化しているのは「状態」だが、水が別の物質に変わっているように理解してしまう児童もいる。誤概念を生みにくくするためには、「変身」という言葉を使うとよい。(例「主人公が人間だろうと、ヒーローに変身しようと、同じ人だよね」など)

実験の安全管理

水を沸騰させたり冷やしたりする実験は、火や多くのガラス器具を使う。これまでの単元で器具を破損させることがあったのであれば、それを思い出すよう声をかける。危険を予測してから実験の準備に入りたい

測定した数値が理論値と異なること

水は0℃になると氷の状態に変化し、100℃になると沸騰して水蒸気の状態になることを実験で確かめたいわけだが、その数値ぴったりになることはほとんどない。沸点は気圧によって変化するし、水が凝固するときには過冷却という現象が起こる。実験は必ずしも理想的なデータを得られるものではないということも、理科を学ぶ上では大切な知識である。失敗ではなく、それこそ科学の本質であるということを体験的に理解させたい。

単元開始までの準備

棒温度計

班の数と予備のものをそろえておく。温度計によって示す温度に差がある(器差がある)ので、同じくらいの温度を示す棒温度計を選んでおく

実験用ガスコンロ

アルコールランプでもよいが、実験用カセットこんろは火力が強く実験時間を短縮することができる。火力がどの班も同じぐらいになるよう、調節つまみに目印をつけておくとよい。火力が強すぎるとビーカーから火がはみ出して危険だが、弱すぎると沸騰までに時間がかかってしまう。予備実験をしてちょうどよい火力を見つけておく

水を冷やすときに必要なので、冷凍庫に大量に作っておく

単元の展開【全8時】

第1次 熱したときの水のようす

第1・2時 熱したときの水の変化を調べよう。

  • 実験用ガスこんろで水を加熱し、沸騰する様子を観察する。
  • 水を沸騰させて気付いたことを共有し、問題をつくる。

【児童から出したい考え】

  • 水を熱すると湯になって、さらに熱すると沸騰する。
  • 沸騰すると泡がたくさん出てくる
  • 泡は空気だと思うお風呂で遊んだときに似ている
  • 泡は水(水蒸気)だと思う水の中から空気が出てくるなんておかしい
  • 沸騰すると湯気もたくさん出てくる
  • 湯気は水蒸気っていうよ。前に習った水蒸気とは様子が違うね。
  • しばらく沸騰させていたら、水が減った気がする。
  • 気付いたら、理科室の窓にたくさん水が付いていた結露した。教室も同じようになるけど、今(実験後の理科室)は水滴が流れるくらいたくさんついているよ。
  • コップも同じようになる(結露する)よ。

第3時 沸騰したときに出てくる「あわ」の正体は何だろうか。

  • 水が沸騰しているときに出てくる泡は何か、予想する。
  • 予想を全体で交流する。
  • 泡の正体を確かめる方法を考える。
  • 実験をする。
  • 実験の後片付けをする。
  • 結果から考察する。

※教科書で示してあるように、泡だけが集められていると児童が納得する方法で実験を行う。最初ははじめに中にあった空気が出てきているので、沸騰してしばらくしてから出てくる気体を集めるように声をかける。

※この実験で泡が水蒸気だとまとめても、「泡は空気だ」という素朴概念は強固で変化しにくい。実験の前に、泡が空気だったら袋がどのようになるか教師が演示実験で示すことで、泡は空気ではないということが反証できるようにする。

第4・5時 水を熱し続けるとどのように変化するのだろうか。

  • 水を熱したときに、温度と様子がどのように変化するか予想する。

※予想の根拠は日常生活でもよいが、第1~3時で水が沸騰する様子を観察しているので、それを根拠とするとよい。

※水が100℃で沸騰することは知っている児童が多い。だが、沸騰後も熱し続けると温度は上がると思うか問うと意見が分かれる。沸騰までで終わらず、その後どうなるかまで予想させたい。

  • 実験方法を考え、準備をする。
  • 実験をして、水を熱したときの温度と様子の変化を調べる。
  • 実験の後片付けをする。
  • 結果から考察する。

水を熱し始めると、すぐにビーカーの内側に小さな気泡がつくこれは水中の空気が出てきたものなので、水蒸気ではない

第2次 冷やしたときの水のようす

第6時 水を冷やし続けるとどのようになるだろうか。

  • 前時の学習を振り返り、逆に水を冷やし続けるとどうなるか予想する。

※0℃で氷になることを知っている児童も多いと考えられるが、さらに冷やすと温度はどうなると思うか予想させたい。負の数は未習であるが、温度のマイナス表示は身近なところにある店のアイスクリーム売り場にある温度計や寒い日の天気予報など、「マイナス○℃」が使われている。「マイナス」が話題になったら棒温度計を見せ、氷点下の目盛りの読み方を教えるとよい

※「水が凍ると体積はどうなると思うか」ということも考えさせておきたい。「水の温度と体積」の実験では水を冷やすと体積が小さくなることを学習している冷凍庫でペットボトル飲料を凍らせ、ペットボトルが膨らんだ経験があるという児童がいれば、体積が大きくなるという予想も出てくるだろう。

  • 実験方法を考え、準備をする。

※結露で器具が濡れて滑りやすかったり、児童が温度計を棒のようにしてかき混ぜてしまったりすることもある。安全指導を徹底し、観察のポイント(温度と体積)を確認してから実験に入る。

  • 実験をして、水を冷やしたときの温度と様子の変化を調べる。

※過冷却で凍りにくかったり、急な体積変化によって試験管が割れたりするなど、実験では予想外のことが起こることがある。

※タブレットで様子を撮影させてもよいが、見えにくいので気付いたことはノートにメモをさせておく

  • 実験の後片付けをする。
  • 結果から考察する。

※難しい実験なので、グループで協力して実験の準備や片付け、温度や体積の記録がとれたことをしっかり価値付ける

第3次 温度と水のすがた

第7時 水の変化をまとめよう。

  • 水が温度によって状態を変えていることをまとめる。
  • 景色などの画像に水の粒を書き込み、自分たちの身の回りでは水が姿を変えて巡っていることに気付く。(スタンプのように使える画像を作っておくと便利である。紙にかかせたり、大型テレビに映してクラス全体で書き込んだりしてもよい)

第8時 学んだことを振り返ろう。

  • 教科書の問題に取り組んだり、学んだことを自由にノートにまとめたりする時間をとる。

【参考】

  • 国立教育政策研究所,”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”,東洋館出版社,令和2年

https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_pri_rika.pdf

  • 新編楽しい理科4 東京書籍,令和6年

執筆者プロフィール

Cana

元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

この記事は、EDUPEDIAの認定を受けたライターによって書かれたものです。EDUPEDIAは、教育現場での実践経験や教育情報に関する記事の執筆について、様々な方にご協力いただいております。
教育実践の提供や記事執筆にご興味がありましたら、下記リンク(EDUPEDIAお問い合わせフォーム)よりお問い合わせください。
https://edupedia.jp/aboutus#1622473627276-8e2dffba-8002

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次