小学6年理科「私たちの生活と電気」(大日本図書)【前半】~エネルギー変換の視点をもつと日常生活の見方が変わる~

0
目次

はじめに

1人1台端末やゲーム機など、バッテリーに電気をためて使う電気製品が増えた。ディスプレイのあるものだけではなく、充電式のイヤホンや携帯用電気カイロなど、電気をためて音や熱に変換するものもある。今の児童たちは、日常生活の中で自然にエネルギー変換に触れている。これまでのエネルギー領域の単元と日常生活をつなげ、理科や科学技術の有用性を感じてほしい

本単元で身に付けたい資質・能力

発電蓄電電気の変換について、電気の量や働きに着目して、それらを多面的に調べる活動を通して、次の事項を身に付けることができるよう指導する。

  • 次のことを理解するとともに、観察、実験などに関する技能を身に付けること。
    • 電気は、つくりだしたり蓄えたりすることができること。(電気をつくりだす道具として、手回し発電機、光電池などを扱うものとする。)電気は、光、音、熱、運動などに変換することができること。
    • 身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があること。
  • 電気の性質や働きについて追究する中で、電気の量と働きとの関係、発電や蓄電、電気の変換について、より妥当な考えをつくりだし、表現すること

単元の評価基準

知識・技能

  • 電気は、つくりだしたり蓄えたりすることができることを理解している。
  • 電気は、光、音、熱、運動などに変換することができることを理解している。
  • 身の回りには、電気の性質や働きを利用した道具があることを理解している。
  • 観察、実験などに関する技能を身に付けている。

思考・判断・表現

  • 電気の性質や働きについて追究する中で、電気の量と働きとの関係、発電や蓄電、電気の変換について、より妥当な考えをつくりだし、表現している。

主体的に学習に取り組む態度

  • 電気の性質や働きについての事物・現象に進んで関わり、粘り強く、他者と関わりながら問題解決しようとしているまた学んだことを学習や生活に生かそうとしている

本単元の難しさ

エネルギー変換の概念を習得すること

エネルギー概念は、幼児期からその概念の獲得がはじまっている3年の「風とゴムの力のはたらき」では、ゴムの弾性エネルギーや風のエネルギーが車の運動エネルギーに変換されている。しかしエネルギー変換の概念を教える学習過程になっていないので、ここで初めて児童はエネルギー変換の概念に触れることになる。

電気をため、光や熱、音や運動に変換する活動をしっかり行いたい。変換の過程を図示しながら理解することで、エネルギーが移動していることを実感的に理解させたい。

プログラミングを扱うこと

小学校理科のプログラミングは、中学校の技術につながる内容である。ここでは教科書(大日本図書)を参考に、SONYのMESHを使った授業の展開を載せている。電気の節約便利な生活のためのプログラミングを考えさせることで、実用的な視点で考え、手先を動かしてものづくりに取り組む。考えた仕組みを実際につくり、成功させることは意外と難しい。壮大な計画を立てて失敗するのではなく、実際にある物を活用して成功したという経験をサポートしていきたい。

単元の展開【全10時】

第1時 私たちが利用している電気はどこからくるのだろうか。

  • 電気が利用されている物について話し合う。
【利用されている物の例】照明・家電・電気自動車・電車・スマートフォンなど
  • 電気が作られているところについて話し合う。
【電気が作られているところの例】屋根についているソーラーパネル(太陽光発電)、風力発電、火力発電、水力発電、原子力発電など

※社会科との関連を図り、発電所などを挙げていく。発電の仕組みを簡単に説明し、何らかの力でタービンを回すと発電できるということに気付かせる。太陽光発電のみ、光電池によって光エネルギーが電気エネルギーに直接変換されていることに触れる。

  • 手回し発電機や光電池の使い方を知る。

5年の電磁石の学習をふりかえることで、手回し発電機のかんたんな仕組みが理解できるようにする。

  • 手回し発電機や光電池を使って発電し、気付いたことを伝え合う。

〈実験1〉手回し発電機に豆電球やモーターをつなぎ、ハンドルを回して様子を調べる。

〈実験2〉光電池に豆電球やモーターをつなぎ、日光や白熱電球の光を当てて様子を調べる。

【予想される児童の気付き】
・手回し発電機のハンドルを早く回すと豆電球は明るくなり、モーターは早く回る。電流が強くなっているようだ(4年との関連)
・光電池を教室の電気の光に当てても何も起こらないけれど、日光に当てると豆電球に明かりがつき、モーターは回る。強い光がないと発電しないのかもしれない。
・光電池で動く電卓を見たことがあるので、教室の電気でも少しは発電しているのではないか。
・(光電池に電球の光を当てた場合)光電池が白熱電球に近いほど、豆電球は明るくなりモーターは早く回った。明るいほど発電して流れる電流が強くなるのではないか。
・ハンドルを回しつづけないと豆電球を光らせ続けることができないので、手回し発電は大変だ。バッテリーみたいなものにためておきたい。
火力や水力などを使って回す力を得る発電は、よく考えられていると思い感心した。  
  • 電気をためることができるものにコンデンサーがあることを知り、次時の問題を設定する。

※児童の身の回りにはいろいろなバッテリーがある。バッテリーは「電気をためるもの」という認識があるので、同じようなはたらきをするものとしてコンデンサーを紹介する

照明は光り続けないといけない「どれだけ回したら、どれだけ豆電球を光らせることができるだろうか」となげかけ、調べたいという気持ちを児童にもたせておく。

第2時 作った電気をコンデンサーにためると、豆電球は何秒光らせることができるだろうか。

  • コンデンサーの使い方を知る。
  • 手回し発電機を使ってコンデンサーに電気をため、それを使って豆電球を光らせてみる。
  • 手回し発電機のハンドルを回す回数を決めて電気をため、豆電球が光る時間を調べる。

たくさん回しても、豆電球を光らせると作った電気はすぐに使い切ってしまうことに気付かせる。る電気の量や、使う電気の量に着目することで、エネルギーを量的に捉えることができるようにする。

※ここではハンドルの回し方は厳密に指定しない。回す回数や回す速さが、つくられる電気の量に関係していそうだということに気付かせる。

※コンデンサーに電気をためると、手回し発電機のハンドルが勝手に動き出して児童がおどろくことがある。手回し発電機の中にあるモーターを手で回すことで電気を作っていること、また作った電気によってモーターが動かされているということに気付かせることで、双方向の関係が理解できる。5年の電磁石と関連

第3時 電気の変換について調べよう。

  • これまでの電気の単元で、電気が何に変換されてきたか考える。

電気は別のものに変換されて利用されていることに気付くことができるように、視覚的に表す。

  • テレビやドライヤーは電気が何に変換されているか考える。

テレビ→電気をに変換して楽しんでいる。

ドライヤー→電気を風(モーターの回転運動)に変換して利用している。

※身近な電気製品としてテレビとドライヤーを挙げ、電気が光、音、熱、運動に変換されていることに気付かせる。

※児童にとって発光ダイオードは聞き慣れないものであるが、LEDといえば聞き覚えがあるものである。身の回りにあるLED照明(信号なども含めて)紹介し、発光ダイオードを身近に感じられるようにする。

  • 電気を変換するものについて知る。
【電気を変換するもの】
・発光ダイオード 電気→光
・ブザー 電気→音
・電熱線 電気→熱
・モーター 電気→運動
  • 電気を光、音、熱、運動に変換する実験を行う。

前時から用いている手回し発電機に発光ダイオード、ブザー、電熱線、モーターなどをつなぎ、豆電球と比べながらはたらきを調べる。

【予想される児童の気付き】
・発光ダイオードは豆電球と光り方がちがう。
・発光ダイオードが光るとき、ハンドルの回す向きは決まっている。
・それぞれにつないだとき、手回し発電機のハンドルの重さが変わる
電化製品はこのようなものを組み合わせて作られていることが分かった。
・LEDは電気を節約できると聞いたことがある。それぞれ使う電気の量が違うのではないか。  
  • 身の回りで使っている電気製品は、電気をどのようなものに変換しているのか考える。

【参考】

  • 国立教育政策研究所, ”「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する指導資料【小学校 理科】”, 東洋館出版社, 令和2年

https://www.nier.go.jp/kaihatsu/pdf/hyouka/r020326_pri_rika.pdf

  • 新版楽しい理科6年 大日本図書, 令和6年

執筆者プロフィール

Cana

元小学校教諭。学年主任・研修主任などを経験後、退職。現在も非常勤講師として小学校で授業をしながら教育系Webライターとして活動中。学生時代は理科教育を専門に勉強し、大学院で小学校教諭専修免許を取得。理科では、本物にかかわることや、心を動かす授業にこだわっている。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

この記事は、EDUPEDIAの認定を受けたライターによって書かれたものです。EDUPEDIAは、教育現場での実践経験や教育情報に関する記事の執筆について、様々な方にご協力いただいております。
教育実践の提供や記事執筆にご興味がありましたら、下記リンク(EDUPEDIAお問い合わせフォーム)よりお問い合わせください。
https://edupedia.jp/aboutus#1622473627276-8e2dffba-8002

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次