【小1道徳】「二わの ことり」の授業アイディア

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目次

1 はじめに 

本教材「二わの ことり」は、小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳(平成29年7月)」の内容項目B「友情、信頼」に該当する教材です。

子どもたちにとって友達関係とはどのようなものでしょうか?

子どもたちにとって友達関係は、家族以外で最も深い関わりのある存在です。
共に学んだり遊んだりするなかでお互いに影響を与え合い、友達関係は築かれていきます。

友達関係は学校生活を左右するほど大切であり、良好な関係が充実した学校生活に繋がります。
そして、より良い友達関係を築くためには、互いを認め合い、学びや生活の中で理解し合う経験が重要であり、協力や助け合いを通じて信頼感を育んでいく視点が先生方には求められます。

また、異性との関係においても、お互いを理解し合いながら人間関係を築くことが大切になります。
特に低学年では、幼児期の自己中心的な考え方から脱却しきれていないため、友達の立場を理解したり、異なる考え方を受け入れたりするのが難しい場合があります。

1年生の場合は、身近な友達との活動を通じて、仲良く過ごす楽しさや助け合いの大切さを実感させることが授業のポイントになります。
子どもたちは生活を共に過ごすなかで、勉強や遊びを通して、友達との絆を深め、助け合いや共に過ごす楽しさを感じていきます。
生活を共に過ごした体験を想起させ、友達の大切さを実感する授業を構想していきましょう。

2 教材、あらすじ、授業のねらいについて

  • 小学校1学年 道徳科 主題名「ともだちを おもう こころ」
  • 教科書 東京書籍 『新しい道徳』「二わの ことり」
  • 内容項目 B-(9)友情、信頼

あらすじ

みそさざいは、やまがらの家とうぐいすの家の両方に誘われました。
やまがらの家では誕生日のお祝いがあり、うぐいすの家では音楽会の練習があります。
やまがらの家は山奥の寂しいところにあり、みんな行こうとしません。
一方、うぐいすの家は梅の木のある明るいところにあります。

みそさざいは迷いましたが、うぐいすの家に行くことにしました。
しかし、「やまがらさんは寂しいだろう」と思い、みそさざいはうぐいすの家を途中で抜け出し、やまがらの家に向かいます。

やまがらの家に到着したみそさざいは、やまがらとの友情を大切にする心を感じます。

ねらい

友達を想い行動した姿について考え、友達とよりよい関係を築いていこうとする心情を育てる。

3 授業の工夫

子どもたちを話し合いの土台に

「二わの ことり」の授業では、子どもたちが話し合いの土台に立つようにすることが大切です。
なぜなら、子どもたちの生活体験や語彙はバラバラだからです。

すぐに友達になれる子もいれば、上手に関われない子もいます。
「二わの ことり」の内容を一回読んだだけで理解できる子もいれば、難しい子もいます。
こうしたバラつきを整えていく意識で授業の導入を行いましょう。

以下の発問で、話し合いの方向性を示していきます。

T「友達にされてうれしかったことは何ですか?」
T「友達を大切にするとはどういうこと ですか?」
T「今まで、友達がいてよかったなと思ったことはありますか?」

子どもたちの意見を共感的に受け止めたり広げたりして、子どもたちが「今日は友達のことを話し合うみたいだな」と意欲が高まるようにしましょう。

また、「二わの ことり」を範読する際には、挿絵などを活用して登場人物の関係や内容を理解しやすくしましょう。
どの子も話の状況を把握し、一人一人が意見をもって話し合いができるようにするのがポイントです。

「相手の気持ちを想像する大切さ」を考えさせる

「二わの ことり」では、「みそさざいのように優しくなりましょう」「困っている人を助けましょう」という目標では少し物足りません。

友情というのは、もっと深みがあると思いませんか?
その深みを子どもたちに考えさせていくのが今回の授業では大切です。

「主体的・対話的で深い学び」の重要性が言われて時間が経過しました。
今一度、「深い学び」を子どもに提供し、子どもたちの道徳性を高めるという視点を大切にしていただきたいと思います。

今回の「二わの ことり」では、「相手(友達)の気持ちを想像する大切さ」を子どもたちに気付かせたいです。
なぜなら、相手の気持ちを想像して考えることから、お互いを理解し合ったり、助け合ったりする心が芽生えるからです。
友達の気持ちを想像することは友情の原点であり、これから社会性を身に付けていく1年生から考えさせたいことです。

そして、友達の気持ちを想像する態度を育むには、授業で登場人物の気持ちを多面的・多角的に想像する経験が重要になってきます。

登場人物の気持ちを想像する

「二わの ことり」では、みそさざいとやまがらの二羽の気持ちを中心に話し合います。

大きく3つの場面のみそさざいの気持ちを考えさせたいです。


一つ目は、みそさざいが迷っている場面。

T「どうしてみそさざいは迷っているのだろう?」

C「やまがらさんのお家は遠いから」
C「やまがらさんにもお呼ばれしたから、やまがらさんのお家へ行くべきだと思っている」
C「みんながうぐいすさんのお家に行ってしまったから迷っている」
C「音楽会の練習も大事」
C「やまがらさんがかわいそうだから迷っている」

このみそさざいが葛藤している場面では、音楽会の練習をしている小鳥たちも大切な友達という視点もあり、みそさざいをますます悩ませます。
音楽会の練習に参加せずにやまがらの所へ行くのは、他の小鳥たちの友情を壊しかねない恐れがありますよね。

しかし大切なのは、みそさざいがやまがらの気持ちも他の小鳥の気持ちも想像していることです。
相手の気持ちを考えているからこそ、友達を大切にしたいと思うからこそ、迷いが生じている点に注目させたいですね。


二つ目の場面は、みそさざいが途中で抜け出す場面。

T「どうしてみそさざいは途中で抜け出したのだろう?」

C「やまがらさんが寂しいと思ったから」
C「誕生日のお祝いをした方がいいと思ったから」
C「やまがらさんも大切な友達だから」

T「みそさざいはどうしてやまがらさんの所に行ったのだろう?」

C「やまがらさんが可哀想だと思ったから」
C「やまがらさんにおめでとうと言いたかったから」

みそさざいにとってやまがらは大切な存在(友達)であることを押さえていきましょう。

また、この場面ではやまがらの気持ちを想像させる展開も有効です。

T「やまがらさんは今、どんな気持ちだろう?」

C「誰も祝ってくれなくて悲しい」
C「一人ぼっちで寂しい」
C「何もやる気が無くなる」

T「きっとみそさざいさんもみんなと同じように考えているかもね」

「自分の誕生日会に友達を呼んで、誰も来なかったらどう思う?」という補助発問で、やまがらの立場を自分の立場に置き換えてもよいです。
やまがらの気持ちを想像すると、みそさざいの迷いや思いがさらに浮き彫りになります。


三つ目の場面は、みそさざいがやまがらの所に行った場面。

T「みそさざいはなぜ『ああ、やっぱりきてよかった』と思ったのはなぜですか?

C「やまがらさんがうれしそうだったから」
C「遠くまで飛んで、やまがらさんが喜んでくれたから」
C「友達が喜んでくれたから」

意を決してやまがらの所へと飛び立ち、思いが通じたみそさざいの気持ちを共感的に理解していきたいですね。

授業の後半で友情の本質を問う

みそさざいが友情を大切にしていることがわかり始めてきたところで以下のような発問をし、友情の本質に迫ってみましょう。
担任する学級の実態に応じて発問を変えてみてください。

T「みそさざいさんのよかったところって何だろう?」

C「やまがらさんのところに行ったところ」
C「友達のことを考えていたところ」
C「優しかったところ」

T「今日の授業で勉強になったことは何ですか?」

C「友達のことを考えること」
C「困っていたら助けること」

T「友達を大切にするってどういうことだろう?」

C「友達の気持ちをよく考えること」
C「友達が嫌な気持ちにならないようにすること」
C「一緒に喜び合うこと」

T「友情とは何だろう?」

C「友達に優しくすること」
C「友達のことを考えること」

「相手を思う」「相手の気持ちを考える」「相手に寄り添う」という意見が出てきたら、友情の本質に気付き始めているといえます。
ぜひ、この気付きを実生活に生かせるように子どもたちをフォローしていきましょう。

執筆者プロフィール

マー

小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

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