【小2道徳】「ぐみの木と 小とり」の授業アイディア

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目次

1 はじめに 

本教材「ぐみの木と 小とり」は、小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳(平成29年7月)」の内容項目B「親切、思いやり」に該当する教材です。

親切とは、相手の気持ちや立場を理解し、自分のことのように考えて行動することです。
親切にするためには、相手の苦しみや困難に共感し、思いやる心が不可欠です。
相手を励ましたり、援助したりする親切な行動は、人間関係をより良くし、和やかな雰囲気を作り出す助けとなります。

親切を受けた側はうれしさや感謝の気持ちが生まれます。
そして、次第に親切を他者に向けて行動しようという思いが芽生えていきます。
こうした親切の積み重ねは、自分自身を温かい気持ちにし、より良い人間関係を築く基盤となります。

思いやりも親切と深く関係しており、相手の立場を自分のことのように置き換えて考えることが求められます。
思いやりの心をもつことで、相手に対してよかれと思う気持ちをもち、相手の存在を受け入れる姿勢が養われます。
そして、親切な行動には相手を思いやり、温かく見守ることも含まれます。

学校生活ではさまざまな人との関わりがあり、思いやりや親切な行動が重要になります。
相手の気持ちを考え、立場を理解することを通じて、子どもたちは協働力を育み、思いやりの心を深めていきます。

2年生になると、家族だけでなく、近所の人や学校の先生、友達など関わる人が増えてきます。
まだ自己中心に考えることがある年齢ですが、いろいろな人と接するなかで、相手の気持ちや考えを理解できるようになってきます。
身近にいる子どもや高齢者、友達などに目を向けて、温かい気持ちで接し、親切にする大切さについて考える授業を構想していきましょう。

2 教材、あらすじ、授業のねらいについて

  • 小学校2学年 道徳科 主題名「あたたかい こころで」
  • 教科書 東京書籍 『新しい道徳』「ぐみの木と 小とり」
  • 内容項目 B-(6)親切、思いやり

あらすじ

ある日、小鳥がぐみの木にやってきて、お腹がすいていると訴えます。
ぐみの木は小鳥に実を分け与え、友達のりすのことを思い出します。
りすは最近姿を見せず、ぐみの木は心配していました。
小鳥はりすの様子を見に行くことを約束し、ぐみの実を持って山へ向かいます。
りすは病気で寝ており、小鳥はぐみの実を届け、ぐみの木が心配していることを伝えます。
りすは元気を少し取り戻し、次の日も小鳥が実を届けます。

ある日、激しい嵐の中、小鳥はぐみの実を届けに行こうとします。
小鳥は嵐を乗り越えて、力を振り絞ってりすのもとに到着し、りすは小鳥に感謝します。
その後、嵐がやみ、小鳥はぐみの木のところに無事帰り、ぐみの木は小鳥に感謝の気持ちを伝えます。

ねらい

身近にいる人に温かい心で接し、親切に接する心情を育てる。

3 授業の工夫

「ぐみの木と 小とり」の授業は、小鳥の気持ちを考える展開を中心にします。
ただ、「親切、思いやり」には相手がいます。
りすの気持ちも考える場面を作ると、「親切、思いやり」を深く考えることができます。

小鳥の気持ちを中心に授業を展開

小鳥が常にりすのことに気付かせる授業展開を心掛けましょう。
ここでは、場面ごとに発問例を紹介します。

小鳥がりすの様子を見に行くと言った場面

T「どうして小鳥さんはりすさんの様子を見に行くといったのだろう?」

C「りすさんが心配だったから」
C「ぐみの木さんにぐみを食べさせてもらって、何か恩返しがしたいと思ったから」

T「小鳥さんはりすさんとは知り合いなのかな?」

C「教科書の文章からじゃわからない」
C「たぶん知り合いじゃない気がする」
C「りすさんは遠いところにいそうだから、知り合いじゃないと思う」

T「りすさんとは知り合いではなくてもぐみを届けようと思ったんだね」

教材の文章からは小鳥とりすの関係性は不明です。
ただ、特別に仲が良いわけではない人の様子を見に行くのはかなり勇気がいりませんか?
「面倒だなぁ」「ぐみを食べに来ただけなのになぁ」という小鳥の気持ちがあってもおかしくはないのでしょうか?
そんな気持ちがありながらも、小鳥がりすの様子を見に行こうと決心した優しさや思いやりに触れられるとよいと思います。

小鳥がりすの様子を見に行った場面

T「小鳥さんはりすさんにぐみを届けてどんなことを思ったかな?」

C「りすさんが少し元気になってよかった」
C「りすさんが元気になるまでぐみを届けたいな」
C「明日もりすさんのところに行くぞ」

嵐に見舞われた場面

T「小鳥は嵐を見ながら何を考えていたのかな?」

C「この嵐は怖いな」
C「でも、りすさんのところにぐみを届けないと」
C「早く嵐が過ぎないかな」

T「小鳥さんが嵐の中、りすさんのもとへ飛び立ったのはなぜでしょう?」

C「りすさんと約束したから」
C「りすさんの具合が心配だから」
C「ぼくが届けないといけないと思ったから」

嵐で危険があるなかでも、小鳥がりすの気持ちに思いを寄せていることに気付かせていきます。
やはり、小鳥はりすのことを懸命に考えているのです。
相手のことを真剣に考えることが、親切な行動の源になることに気付かせたいですね。

りすやぐみの木に感謝されたとき

T「りすさんやぐみの木さんに感謝されたとき、小鳥はどんな気持ちだったかな?」

C「ぐみをずっと届けてよかった」
C「りすさんのためにぐみを届けてよかった」

「ありがとう」と感謝されたことで、小鳥の親切な行動は実を結びます。
小鳥とりす、そしてぐみの木もお互いによい思いになっているところを押さえたいです。

親切にされる側の気持ちを考える

T「小鳥さんはずっとりすさんにぐみを届けていました。りすさんの気持ちも考えてみましょう」

T「りすさんは小鳥さんにぐみを届けてもらったとき、どんな気持ちだったかな?」

C「とてもうれしかった」
C「涙が出るほどうれしかった」

T「小鳥さんがぐみを届けるのは迷惑じゃなかったかな? あまり知り合いではなかったんだよね?」

C「迷惑じゃなかったと思う」
C「むしろ、ぐみを食べて元気になったからうれしい」
C「ありがとうと言っているから迷惑じゃない」

ここで押さえたいのは、「親切が相手のためになっているか?」という視点です。
親切心が強すぎて、ありがた迷惑になる場合は日常でよくあることです。
例えば、友達が一人で遊んでいたり、静かに過ごしたりしているときに、無理に遊びに誘ったり、参加させたりする行動は、友達が迷惑に感じることがあります。
また、友達が自分でやりたかったことを他の子や大人が過剰に手伝うと、友達が自分でやりたかったことができず、ありがた迷惑に感じることがあります。

小鳥の行動がりすの迷惑にならなかったか?
「ありがとう」と言われる行動であったか?
親切にされる側の気持ちを考えさせると、「親切、思いやり」の本質に触れられるのではないでしょうか。

親切にするときに大切なことって何だろう?

授業の後半では、親切の本質に迫る展開を用意しましょう。

T「親切にするときに大切なことって何だろう?」

C「小鳥さんみたいに、相手のことを考える」
C「相手がどうしてほしいかとか気持ちを考える」
C「それをされてうれしいかを考える」
C「迷惑じゃないか確かめる」

親切や思いやりは、相手を思う心・相手の気持ちを考える心が起点になることを振り返り、授業をまとめていきます。
そして、「ぐみの木 小とり」での学びを子どもたちが日常生活で生かせるように温かく見守っていきましょう。

執筆者プロフィール

マー

小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

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