1 簡単にできる「手回し交流発電機」の開発と交流電流の学習
この記事では福井県内中学校勤務の、月僧秀弥先生による、東レ理科教育賞を受賞された「中学第一分野 簡単にできる『手回し交流発電機』の開発と交流電流の学習」の授業実践を紹介します。
「手回し交流発電機」「整流器」「直流交流実験機」の三つの教材教具の製作方法やその過程の写真が掲載された、月僧先生の実践内容はこちらからダウンロードしてください(PDF:1.4MB)。
授業実践の目的
中学校理科における新学習指導要領において「交流電流」に関しての学習が追加された。交流電流は家庭で使われている電流であるが、電流の変化の様子が見えないため、イメージすることは難しい。
そこで実験によって交流電流を理解するために、手回し交流発電機を開発し、それを用いた授業実践を行った。
実践効果
授業実践の結果、今回開発した「手回し交流発電機」は、以下の点で交流学習に効果的な器具であることが分かった。
Ⅰ.電磁誘導の復習に有効。
Ⅱ.交流の確認と学習を効果的に進めることができる。
Ⅲ.整流を示すことにより、直流電流と交流電流の違いを確認することができる。
などの点においてこれまでの教材より、授業で生かしやすい。
学習指導方法
今回の授業実践では手回し交流発電機を生徒に授業時間内に作らせるのではなく、予め用意した発電機を用いた。これはこの教材を用いることで、大幅に学習時間が増えてしまうことを避けるためと、この発電機は構造が簡単で、生徒は作らなくても発電の仕組みが容易に理解できるためである。
授業では発光ダイオード付きの発電機以外に、発光ダイオードを外し、端子をつけた発電機も使用した(写真1)。
授業展開
Ⅰ、電磁誘導の確認
- 手回し交流発電機の軸を回し、発電を体験。
- 電磁誘導、誘導電流の復習と確認。
Ⅱ、交流の確認と説明
- 乾電池と直流交流実験機を使い、乾電池が直流電流であることを確かめる。
- 手回し交流発電機を直流交流実験機につなぎ、発電機が交流電流を発生していることを確認(写真2)
Ⅲ、交流の波形を確かめる実験
- 発電機をオシロスコープにつなぎ、波形を観察し、交流電流の波形であることを確認(写真3)。
Ⅳ.整流の実験
- 整流器を発電機に接続して、整流器に直流交流実験機をつなぎ、整流器を通すと交流電流が直流電流になっていることを確認。
生徒の感想
授業後にアンケートを実施した。その結果を下に示す。
また、ほとんどの生徒が、この器具を使った授業で実験が内容の理解に役立ったと答えている。また、楽しみながら授業を受けている。授業後の感想は以下の通りである。
- 発光ダイオードを左右に振ったら、2つとも光がついたのですごいと思った。
- 興味を持って実験することができた。途中、とまどうこともあったが、無事に楽しく実験してまとめることができた。
- 直流と交流の違いが最初はいまいち分からなかったが、交流のいいところ、直流の特徴などが知れて、実験も楽しかった。
授業後のアンケート [単位:人]
Q1 この実験器具を使っての授業は楽しかったですか。
楽しい・・・17、やや楽しい・・・11、やや楽しくない・・・0、楽しくない・・・0
Q2 この装置を使った学習は、内容の理解に役立ちましたか。
役立った・・・16、やや役立った・・・12、やや役立たない・・・0、役立たない・・・0
(生徒数=28)
講師プロフィール
1968年生まれ。福井県内中学校勤務。科学部顧問。
福井県内小中学校の勤務を経て,福井県児童科学館に勤務しサイエンスショーや科学普及事業を担当する。その後,福井県内の中学校に異動。
全国の青少年のための科学の祭典やいろいろな科学館や科学イベントで,サイエンスショーや科学実験教室の講師を務める。
科学の祭典や全国の科学館、科学イベントで、サイエンスショーや科学実験教室の講師を務める。科学の鉄人(サイエンスフォーラム主催)で2006年「あれこれ音(おと)っと」で2位。2007年「空気のすご~い力」で3位。2008年「強風が吹けば!?」で3位。2009年「三原色は誰が決めた?」で2位。サイエンスプレゼンテーション2009科学の鉄人「その時あかりが灯った」2位。
第8回小柴昌俊科学教育賞 優秀賞受賞。
(平成基礎科学財団HP
http://www.hfbs.or.jp/
第8回「小柴昌俊科学教育賞」最終選考結果
http://www.hfbs.or.jp/prize_8_result.html )
所属:オンライン自然科学教育ネットワーク(ONSEN)、NPO法人サイエンスEネット、ガリレオ工房、科学漫才研究会(科学屋イカの足)所属。
所属学会:エネルギー環境教育学会、応用物理学会教育分科会
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