「一つの花」~戦後のコスモスのシーンについて

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作成者: けんごさん

私はこの物語を5場面に分けて授業をしています。最期のコスモスがいっぱいに咲いているシーンから、子ども達がどのようなことを考えるのか、何回か授業をしてきた結果を以下に書き残しておこうと思います。

下記の記事もご参考にしてください。
「一つの花」板書例と授業の流れ 全時間
「一つの花」~題名とコスモスに込められた意味

「それから、十年の年月がすぎました。」

さりげなく一行でかかれた十年という年月ですが、この間にあったこと・・・・は、とてつもなく長く苦しい日々です。それを子どもに考えさせることは難しいかもしれません。

ゆみ子の家がとんとんぶきの小さな家(バラック)に変わっていることに子どもが気がつくかどうかというと、これも難しそうです。ゆみ子と母は、どんな形にしても罹災したのであり、もしかすると命からがら炎の中を逃げ回っていたのかもしれません。お父さんの見送り時に親戚がいる様子がないことも併せて考えると、お父さんが出征してからの母子が相当な苦労をして生き抜いたことも類推できると思います。

「あのお母さんでしょうか」

母親が生きているのか死んでいるのかも、議論になる場合があります。お母さんも亡くなっていて、本当の母親ではないとかいう意見も。想像を言い出すときりがないので、「そうかも知れないなあ、それもあるかもなあ」と、流すぐらいでいいと思います。

「ゆみ子は、お父さんの顔を覚えていません。自分にお父さんがあったことも、あるいは知らないのかもしれません。」

お母さんがゆみ子にお父さんのことを話していないのはなぜでしょう。十年という歳月を考えると、小学校6年~中学生ぐらいになっていると考えられます。時が来ればゆっくりと話すつもりなのでしょうか。

「でも、今、ゆみ子のとんとんぶきの小さな家は、コスモスの花でいっぱいに包まれています。」

ゆみ子はお父さんを知らないのですから、ゆみ子はお父さんを知らないのですから、“コスモス=お父さんの愛情”というつもりでコスモスを大切にする動機はありません。お母さんが十年間、コスモスを育て続けたのではないかと考えられます。いつか、ゆみ子にコスモスの由来を話すつもりで・・・

コスモスが「お父さんの愛情」を表現しているのは間違いないと思います。それと同時に、ゆみ子の成長とゆみ子の家族の「平和」・戦争から解放された日本社会「平和」の象徴でもあるのでしょう。雑草のように根強く戦中・戦後を生き残る民衆の姿とも言えるかも知れません。

「そこから、ミシンの音が、たえず速くなったり、おそくなったり、まるで、何かお話をしているかのように、聞こえてきます。それは、あのお母さんでしょうか。」

ミシンはおかあさんの内職なのでしょう。なんとか食いつないでいくための生活の糧としての「苦しさ」を表すと同時に、なんとか食いつないでいけるような職を得られる時代が来た、これからの豊かな時代を表す「音」なのでしょう。文章の流れからするとどちらかというと後者のイメージを喚起するかもしれません。

「『母さん、お肉とお魚とどっちがいいの。』」

食料選択ができる裕福さが示されています。戦前の「一つだけ」との対比。

「と、ゆみ子の高い声が、コスモスの中から聞こえてきました。すると、ミシンの音がしばらくやみました。やがて、ミシンの音がまたいそがしく始まったとき、買い物かごをさげたゆみ子が、スキップをしながら、コスモスのトンネルをくぐって出てきました。そして町の方へ行きました。今日は日曜日、ゆみ子が小さなお母さんになって、お昼を作る日です。」

ゆみ子の成長を表しています。「ひとつだけ」と、駄々をこねていたゆみ子が、「小さなの母さん」になっています。お父さんは恐らく亡くなったのだろうけれど、お父さんの愛情は引き継がれていることを表して、物語は終わっています。

1 戦時中と戦後の変化を読み取る

ちなみに、この最後の場面は「戦時中」と「十年後」の対比「何が変わったのか」を読み取らせながら進めてもいいのではないかと思います。「スキップ」など、十年前と直接対比する言葉がないものも含めると、かなりたくさんの意見が出てきます。(ネットで「一つの花、対比」を検索してみてください)

戦争中               10年後

・ゆみ子が小さい               ・ゆみ子が大きくなっている
・ゆみ子はだだをこねる、泣く         ・ゆみ子がお手伝いをしている
・お父さんがいる               ・お父さんがいない
・食べ物が少ない               ・肉と魚から選べる
・ふつうの家                 ・トントンぶきの小さな家
・一輪のコスモス               ・コスモスいっぱいさいている
・コスモスはゴミ捨て場のようなところにあった ・コスモスは家の周りなどにある。
・ちゃんとした家               ・とんとんぶきの家
・ミシンがない                ・ミシンがある
・お母さんは働いていない           ・お母さんがミシンをしている
・ばくだんがおちてくる            ・平和
・(敵の飛行機が)ばくだんを落としている   ・ばくだんを落としていない
・毎日てきの飛行機が飛んできた        ・てきの飛行機が飛んでこない
・町がやかれてはいになった          ・町が復活している
・はげしい                  ・平和 ・ゆたか ・のどか
・色がくすんでいる(挿絵より)        ・色が明るい
・あまり楽しいことはなかったかも       ・スキップをして楽しそう

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