『卒業ホームラン』で、「生きる」を考える(坂本哲彦先生)

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作成者: EDUPEDIA編集部 (Edupedia編集部)さん

1.はじめに

 この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ、「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://p.tl/a-TK-

2.この記事で紹介する実践

資料

『卒業ホームラン』 重松清 著 新潮文庫 (2011)

○概要

小学校6年生の智(さとし)の父は、智の所属する野球チームの監督である。卒業を間近に控えた日曜日、20連勝を賭けた最後の試合を迎えた。智は上手ではないことから、今まで一度も試合に出たことがない。父は、最後の試合に出場するメンバー表に補欠として我が子を登録するかどうか迷ったが、連勝がかかっていたこともあり、6年生の部員の中でただ一人外した。

試合は、大量リードされてしまった。最後の試合だったので、補欠の選手も出してやることにした中、智はメンバー登録されてなかったので最後まで出場は叶わなかった。

試合が終わって、「中学校に入ったら、部活はどうするんだ?」と聞く父に、「野球部、入るよ。」と答える智。「3年生になっても球拾いかもしれないぞ。そんなのでいいのか?」と確認する父に、智は「いいよ。だって、僕、野球好きだもん。」ときっぱり答える。

対象

中学校3年生

ねらい

自分の好きなことに対して、より高いめあてを立て、希望と勇気をもってやり抜こうとする気持ちを高める。

3.学習内容

(1)現在の自分の学習のめあてと取組状況(成果や課題等)を再認識する。

  • めあてと取組状況をプリントに書くこと。
  • 照れくさいようであれば、思い出すだけでもよい。
  • 学習以外の状況をとりあげてもよい。例えば、部活。
  • 授業の最後に、自分のめあてを再度認識する。

(2)登場人物「智」のよさを理解する。

  • いいこと(望ましい結果)があるかどうかにとらわれるのでなく、好きなことにひたむきに取り組んでいること。
  • 自分に厳しく、人にやさしく行動していること。

4.授業指導案 (60分授業)

①学習のめあてや状況をプリントに書く(思い出す)。(5分)

発問1:「現在の自分の学習上のめあてや成果・課題をプリントに書いてください。」

  • プリントに書かなくてもよい。発表することに抵抗があるなら、それも行わない。
  • 「振り返る内容」を限定しなくてもよい。教科ごとに尋ねるのもいいし、学習時間や取組の状況(集中・継続等)という観点で一般化して振り返らせてもよい。
  • 学習状況は、なかなか自分の思うようにならないということを確認した後、本時の学習課題「学習のめあてを達成する上で、大切なことを考えよう」を板書する。

②学習のめあてを達成する上で大切なことについて話し合う。(10分)

発問2:「学習のめあてを達成する上で大切にしたいこと(心根・考え方・態度等)は何だと思いますか?」

Ⅰ【めあてそのものに対する意見】

a.めあてそのものを明確にする。

b.めあてをたくさん立てる。

c.めあてをたくさん立てずに大切なものに絞る。

d.めあてを一層具体的な行動目標にして、何をすればいいか、どうすればいいかわかりやすくする。

e.複数めあてがある場合は、大切な順に順番を付ける。

f.決められた期間ごとに振り返って、その都度めあてを立て直す、など。

Ⅱ【めあてを達成するための心情に対する意見】

a.めあてを立てたら、何が何でもやろうという強い意志をもつ。

b.自分の気持ちで弱いところを自分で意識する。

c.1つでもめあてが達成できたら、それを何度も確認して、自分をほめ、一層やる気を出すなどの工夫をする。

d.人に励ましてもらったり、しかってもらったりしてやる気を強くする、など。

※Ⅰ、Ⅱに大きく分け、その中を分類しながら板書する。同じ意見の生徒同士が互いにわかるようにその都度、同じ意見を持っている生徒を確認したり、黒板にネームカードを添付したりする。Ⅰ・Ⅱに納まらない意見はⅢ・Ⅳなどとして、必ず黒板に位置づける。

③読み聞かせ(30分)

素晴らしい意見ばかりであることを価値付けた後、「これらの考えを一層膨らませるためにとてもいい読み物があるので、是非聞いてほしい」と投げかけ、この物語を読み聞かせる。

※教師がゆっくり読み聞かせるとすると22分かかる。途中、立ち止まって、語句理解や内容理解を図るとともに、生徒の感想を引き出したり、交流させたりしながら読み聞かせる。

④「智」のよいところについて話し合う。(15分)

発問3:「自分が学びたい智のよさは何か。話し合ってみよう。」

a.自分が試合に出られなくても、人をしっかり応援する優しさがある。

b.試合に出られなくても最後まで一生懸命練習する。

c.父に甘えない、など自由に意見を発表させる。

  • これほどまでに、結果がでないのに(6年間一度も試合に出させてもらえない、しかも、6年生ではただ一人出場していないにもかかわらず)一生懸命努力できるのは、「野球の中に自分の好きな何かを見出しているから」である。「好きだから努力できる」と智は言うが、実は、無意識に智は「努力する対象に自分が好きな部分を見付けている。だから、一層努力できる」ことに気付かせる。
  • 自分が今努力しなくてはならない対象に(つまり、本時の場合は、勉強に)自分が好きな部分を見出すことが大切ではないか、結果が出ようと出まいと、一生懸命取り組める「好きな部分」を見出し、学習それ自体を好きになることも、学習のめあてを達成する上で大切な心根ではないかと投げかけ、発問2の答えとしての板書に色チョークで付け加える。
  • 家族の存在などについての意見が出た場合は、価値付け、黒板に位置付ける。

5.編集後記

目標を立て、それに向かい前に進んでいくことは大切なことです。この題材は、高い目標を立てその目標に向かってどのように行動していくべきかを考えることができます。また、自分の好きなことに対する気持ちも確認できると思いました。この実践を参考に、先生方と生徒が目標をもつことの大切さを改めて考えることができればと思います。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 川原悠成)

6.実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。
1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページ

http://sakamoto.cside.com/

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