【著書紹介】『ぼく、わたしのトリセツ』(松下隼司先生)

10

目次

1 はじめに

本記事は、2020年12月24日発売の『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)について、著者の松下隼司が皆さまに紹介する記事となっております。

2 書籍について

絵本の概要

いつも怒られてばかりの「ぼく」と「わたし」が、「自分の取り扱い方」を親や先生に突きつけます。子どもたちが巻き起こす、“親や先生をもっと好きになりたい子どもたち”の物語です。もっと笑いたい親や先生に贈る、子どもからのメッセージです。

絵本を作った背景①

私(松下隼司)は、大阪の小学校で教師をして17年目(2021年1月現在)です。
 もともと怒りっぽい性格で、初任のころは、お腹が減っただけでイライラしてしまっていました。今は慣れたのですが、初任のころは、12時半ごろから給食を食べるのが耐えられませんでした。
 教師になって9年目のとき、自分の怒りの感情をコントロールできるようになりたくて、アンガーマネジメントの資格をとりました。20万円ぐらいかけて、ファシリテーターとキッズインストラクターの資格をとりました。アンガーマネジメントの勉強をして、自分の怒りっぽい性格を冷静に分析できるようになりました。分析すると、必要以上に「すぐ怒る」「長く怒る」「強く怒る」「以前にあったことをまた怒る」と、子どもにとって最悪の怒り気質でした。
 アンガーマネジメントの1つに、「6秒ルール」というテクニックがあります。「6秒ルール」とは、簡単に言うと、すぐに怒るのを防ぐテクニックです。でも、かなりの怒り気質の私にとって、6秒ルールは逆効果でした。時間が経てば経つほど、怒りの感情が膨れ上がっていくタイプです。たとえば、放課後に保護者から「子どもがいじめられた」と連絡があれば、加害者の子どもへの怒りがどんどん膨れ上がっていきます。本来は、まず事情を確認するのが大切なのですが……。自転車に乗って帰宅しているとき、翌日にどうやって怒るか、怒り言葉をぶつぶつ呟いて練習することがありました。すぐに怒れないことが、かえって怒りの感情が大きくなる原因になっていました(叱れないで、怒ってしまうタイプでした)。
 アンガーマネジメントの理論は知識としては勉強になりましたが、自分は学校現場で使いこなせるようになりませんでした。高いお金とたくさんの時間をかけてもうまくいかずショックは大きかったですが、切り替えるきっかけになりました。「怒りの感情をコントロールしたい」という考えから、「“怒り”の場面を、どうやったら“笑い”に変えられるか」と考えるようになりました。発想を転換しました。「冷静になろう」と意識を捨てると、気持ちが楽になりました。すると、だんだん、必要のない怒りの感情の爆発、子どもにとって効果のない怒りの感情の爆発をコントロールできるようになりました。
 この絵本『ぼく、わたしのトリセツ』は、怒りどころ・怒られどころを、逆に“笑い”で包む楽しいお話です。

絵本を作った背景②

本屋さんには、たくさんの「トリセツ(取扱説明書)本」があります。息子、娘、夫、妻、男、彼女、親、小児感染症、足、英文法、北海道、大阪……様々なテーマを取り扱ったものがあります。でも、これらトリセツ本のほとんどは、「扱う側」目線で書かれたものばかりです。「子どもには、こうやって接したらいいですよ」「英文法は、こうやって取り組んだらいいですよ」と、大袈裟な表現をすれば“上から目線”で書かれた本ばかりです。そこで、「扱われる側」の視点に立ったトリセツ本を、絵本という形で表現しました。「私をこうやって扱って♪」と、扱う人に対して上から目線で伝えるトリセツ本にしました。

3 一部を紹介!

『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)より、一部をご紹介いたします。本作には、下記の特性を持つ子どもたちが登場し、大人に「自分のトリセツ」を突きつけます。
①すぐ拗ねる子ども
②拗ねたら長い子ども
③喧嘩っ早い子ども
④自分勝手な子ども
⑤素直に謝れない子ども
⑥仲直りが苦手な子ども
⑦手遊びが多い子ども
⑧下品なことを言う子ども
⑨反抗的な子ども
⑩友達にちょっかいをたくさんかける子ども
 自分が悪いことをしたのに素直に「ごめんなさい」を言えない子が登場します。「ちゃんと謝りなさい!」と怒鳴ってしまったりネチネチ怒ったりすると、子どもは心を閉ざしてしまいます。怒る方も、余計にイライラが大きくなってしまい、逆効果です。そこで、こちらが「ごめんなさ」まで言ってあげると、残りの「い」の1音は言えます。次は、こちらが「ごめんな」まで言ってあげると、残りの「さい」の2音を言えるようになります。次は、「ごめん」まで言ってあげると、「なさい」を言えます。さらに次は、「ごめ」だけ言います。すると、「んなさい」と子どもは言います。「んなさい」が言いにくくて、笑いに包まれます。そして、とうとうこちらが「ご」の1音だけを言うようになります。すると、子どもは「めんなさい」と言います。言う子どもも笑顔、周りの子どもも笑顔、教師も笑顔です。最後は、「最初から言ってごらん」と手でジェスチャーをします。子どもが最初から「ごめんなさい」を言うと、まわりから拍手喝采が起きます。
●「い」→「さい」→「なさい」→「んなさい」→「めんなさい」→「ごめんなさい」
その子の成長をまわりも見ているから、感動場面になります(合計6回も謝っていることになります。それも褒めて伝えると笑いに包まれます)。
 子どもですから、同じようなことを何回もしてしまいます。しかし、もしまた同じ子どもが謝らないといけないようなトラブルが起きたとしても、子どもと対峙している大人もそのまわりの人々も、このやり方をすればワクワクするようになります。また、あの感動を再び共有できる! と期待感に包まれます。

4 プロフィール


まつした じゅんじ 小学校教諭
・1978年生まれ。
・2003年、奈良教育大学の小学校教員養成課程美術専攻を卒業。
・関西の小劇場を中心に10年間、演劇活動をする。
・アンガーマネジメントの資格(ファシリテーター・キッズインストラクター)を取得。
・第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞を受賞。
・日本最古の神社である大神神社の第17回短歌祭で、最優秀賞の額田王賞を受賞。
・プレゼンテーションアワード2020で、優秀賞を受賞。
・第69回読売教育賞で、優秀賞を受賞。

5 Amazonページ

・『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)

6 読者へのメッセージ

怒ってばかりいた大人、怒られてばかりいた子ども、どちらもが笑顔になれる絵本です。怒ってばかりいた相手を、可愛らしく思える絵本です。学校現場だけでなく、育児や保育、人材育成に関わる方にも、是非、手にとっていただきたい絵本です。(公務員なので原稿料、印税等は一切受け取っておりません。)

7 関連記事紹介

・「『万糸乱れて』踊るニャティティソーラン(松下隼司先生インタビュー)」https://edupedia.jp/article/5e59be92e9fe8da8ad1da5fb

・「教師の「やってはいけない」「言ってはいけない」集」https://edupedia.jp/article/57c139cef32ff7e9430e7868

・「【みんなのミニネタ】ざわざわのしずめ方、クラス目標の立て方」https://edupedia.jp/article/5aa5ddaf120f6000000286da 

・「弱者視点に立った教育」https://edupedia.jp/article/5a87e312a9be0304e347cc65

・「宿題を忘れる子への対応」https://edupedia.jp/article/583ad6c301e1368209bd1f85

・「子供は教師の顔色を窺う」https://edupedia.jp/article/575cd2d21fa5bd2a7c818120

・「教師としての心構えと学級経営のポイント」https://edupedia.jp/article/55a614444028c3bef23605e9

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次