生徒の反応をダイレクトに感じられる教員という仕事【比べてみよう、教育キャリア~春のOB・OG大集合スペシャル~】第15回EDUCAREERイベント

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目次

1 はじめに

 この記事は2023年6月4日にNPO法人ROJE EDUCAREER(旧:教育と仕事フェス)が主催した第15回EDUCAREERイベント「比べてみよう、教育キャリア〜春のOB・OG大集合スペシャル〜」を記事化したものです。

 登壇者に中澤歩さんをお招きしました。中澤さんは本サイトの母体であるNPO法人ROJEに2016年から2019年まで所属されていました。京都府内公立中学校の非常勤講師を経て、2020年から鳥取県の青翔開智中学校・高等学校の国語科教諭、2022年からは同校の社会科教諭として勤務されています。現在は高校3年生の担任で、広報部として学校ホームページの管理なども担当しています。

 ROJE第15回EDUCAREERイベント関連記事はこちらからご一読ください。

社会にインパクトを!民間企業の教育キャリア【比べてみよう、教育キャリア~春のOB・OG大集合スペシャル~】第15回EDUCAREERイベント | EDUPEDIA

2 今の職業について

 勤務校は変形労働時間制を採用しているので、普段は8時出勤・18時退勤で勤務しています。これは、夏休み等の休暇が長い代わりに、普段は少し長く勤務する仕組みです。

 授業は地理4つ、公民1つを担当しています。また、そのほかに探究学習やロングホームルームもあるので、合計で週20コマ程度の授業を担当しています。そして、高校3年生の担任に加え、校務分掌として広報部を担当しています。部活動は、私が顧問をしているのは未経験の文化部なのであまり忙しくはないですが、部活が忙しい教員ももちろんいます。 

教員になってみて感じたこと

中学教員と高校教員

 中学校教員の方が「満遍なく何でもできること」を求められる印象があります。⾼校教員は教科指導や進路指導、ICT活⽤など、尖った強みや専門分野があるとやっていきやすいと思います。ただし、勤務校のような中高一貫校では、中高どちらの担当になる可能性もあるので、大学生のうちに様々な年代の子どもと関わっておくのは大事だと思います。

教員になる前とのギャップ

 ⼤学⽣のときから現場に⻑く関わらせてもらっていたので、そこまでギャップは無かったです。ただ、⽣徒たちは想像以上に素直で、楽しく仕事をさせてもらっています。

教員の魅力

毎日がイレギュラーの連続で飽きない!

 教員の面白さは、生徒や周りの教員をきっかけにして、自分が思ってもみないことが起こることだと思います。これは、日常的な授業や生徒とのやり取りでもたくさんあるのですが、学校行事などで普段とは違う一面を目にしたときに特に強く感じます。高校生になるとそのような学校生活の様子は保護者さんには届きにくいので、学年通信という形で発信しています。

すぐに反応がある!

 いろいろなものにすぐ反応が返ってくるというところも面白いところです。私は授業によってスライドを使ったり、スライドをプリントアウトしたものの配布も行ったり、あえてスライドを使わなかったりなど、授業の目的と生徒の実態に合わせて、教材や授業展開を試行錯誤しています。そして、生徒の反応を見るため、授業の最後に質問・コメントを書いてもらっています。それを見ると、同じ授業に参加していても、生徒一人ひとりが興味を持つ内容や感じることが違うということも実感できます。

裁量が大きくやりたいことが実現できる!

 裁量の大きさも1つの魅力だと思っています。

 学校外との連携として、スマートニュースというニュースアプリの会社とゲーム教材を用いたメディアリテラシーの授業をして本に載せてもらったり、奈良大学の地理学の先生・学生さんに協力していただいて街を歩く「フィールドワーク」の授業を実施したり、NPO法人ROJEの「わたげプロジェクト」という防災教育に関する活動をしている団体を呼んで出前授業をしてもらったりなどしています。一人の教員でできることには限りがあるので、外部の方と協力することで、生徒の学びの幅が大きく広がると思っています。

 生徒の活動支援もやりたいことのひとつです。私は現代文と地理を専門とする教員ですが、課外活動では、「小論文コンテスト」、「ビジネスコンテスト」、「探究学習の学会発表」などをサポートしてきました。生徒が何をやりたいかはそれぞれ異なるので、授業で興味を持ったことを広げるサポートはもちろん、ビジネスコンテストのように授業の枠組みでは扱いづらい経験を積む機会も提供したいと考えています。

教員の限界

 教員は担当している生徒にしか関われません。教員という立場からは、目の前の生徒に対して自分ができることをするのが精一杯だと限界を感じるときもあります。ただ、「教育」は学校の中だけで完結するものではないので、先述した学校外との連携や、ICT活用の普及などの分野で自分自身が学校の枠を超えて活動することで、自分ができることの引き出しを増やしていくことが大切なのではないかと思っています。

意識していること

 教員になってから一貫して大切にしているのは「どんなときもフラットな立場で話を聞くこと」です。最近は「面倒を見すぎて小さな失敗をする経験を奪ってしまうことを防ぐこと」も大切だと感じています。生徒たちが失敗を恐れず取り組むためには、生徒が教員に対して「困ったときには相談に乗ってくれる」と信頼してくれることが必要だと思っているので、面倒を見過ぎず放置し過ぎずの丁度いいラインを模索しています。

3 一日の動き

授業が少ない日(1コマ)

7:50 出勤

   事務作業

8:30 朝ショートホームルーム

   掃除の見回り

1限 授業準備(スライド作成、印刷など)

2限 自習監督

3限 会議(学校ホームページの更新日程)

4限 授業(中2地理)

12:30 昼休み 昼食・休憩

   高校2年生と面談(探究学習のテーマ決めの相談)

5限 会議(探究学習の授業資料の改訂)

6限 広報の仕事(学校ホームページの更新)

7限 会議(進路支援の教員用スプレッドシートの改訂)

15:55 帰りショートホームルーム

16:10 放課後

    部活動の生徒と面談

16:45 書類仕事

18:15 退勤

授業が多い日(5コマ)

7:50 出勤

8:10 事務作業

8:30 朝ショートホームルーム

   掃除の見回り

1,2限 授業(高2公共)

3限 テスト採点

   授業準備

4限 会議(社会科の定例ミーティング)

12:30 昼休み 

   午後からの出前授業準備(体育館設営、取材対応)

5,6限 出前授業のファシリテーター(高1地理総合)

7限 ロングホームルーム

15:55 帰りショートホームルーム

16:00  体育館片付け等

16:30 定例職員会議

18:15 退勤

4 キャリア選択のきっかけ

大学生時代

所属したサークル

・NPO法人ROJE(先生のための教育事典EDUPEDIAなど)

・エレクトーンサークル

教員になるためにしていたこと

・塾講師(個別指導/中学生の集団授業)

・公立学校でのボランティア(中学校・国語/高校・ICTなど)

・N高校でのインターン(ティーチングアシスタント)

・京都教師塾(教育委員会が実施する教員養成講座)

 出身校である京都大学の教育学部は「教育学の研究」をするところで、教員養成を目的としている学部ではなかったため、教育現場での実践的な授業に関する講義はあまりありませんでした。そのため、このような形で経験を積みました。

 塾講師としては、小学校4年生から高校3年生まで多種多様な生徒を担当させてもらい、学校のフォローから難関校対策の集団授業まで経験できたことが今に繋がっていると思います。 また、公立の定時制高校と私立の通信制高校の現場にそれぞれ1年ほど関わらせてもらったことは、教育観を広げる意味でとても有意義だったと感じています。

キャリア選択

 私のキャリア選択のスタンスはシンプルで、仕事そのものが面白いと思えるようなものを選びたいと思っていました。大学生のうちから様々な教育現場を見てきたので、教員という仕事の面白さは感じていました。ただ、教員不足の時代なので新卒にこだわらなくても教員になれるのではないかとも思っていました。

 ちなみに、教員免許は大学在学中に中学国語高校国語高校地歴を取得しました。その後、通信制大学で追加の免許も取得しました。

 3回生のときには、単発インターンに参加した後、民間企業の就活を始めました。一番選考のスケジュールが早かったマスコミ系の会社に内定をいただいたので、そこで記者として働いてから国語科の教員になるという道も考えていました。一時期行政も考えていて、国家公務員の教養区分を受けようともしていました。しかし、やはり国家公務員は仕事のスケールが大きく、私には現場に出る仕事の方が合っていると思ったので結局受けませんでした。

 その上で、4年生の5月、6月頃に教育実習に行ったときに「やっぱり教員になろう」と思い、私立の学校の就職活動を始めました。教育実習をする時期にはもう公立校の採用試験の出願が終わっていたこともあり、私立校を選びました。

 今の学校は、①少人数教育ができる、②ICT環境が整備されている、③裁量が大きく、風通しがよいという基準で選びました。地域にこだわりはありませんでした。

 このような流れで4年生の8月頃に就活を終えて、新卒で鳥取に移住しました。

5 ROJEでの活動がどのように活きたか

 2年生のときは、関西EDUPEDIAのプロジェクトリーダーをしていました。ミーティングを運営したり、取材に行ったりしていました。また、Webサイトに関する活動だけでなく、合宿や教員向けのイベント企画も経験しました。  取材やイベントを通して知り合った教員や研究者の方とは、今でも研究会などで繋がりが続いています。

 これらの活動のなかで組織をまとめて動かしていく経験をしたことが、今の仕事に活かされていると思います。私は今高校3年生の担任を持っていますが、小規模校のため、学年団は担任2人と副担任1人の3人のみです。教員4年目でこのような立場になっても仕事をこなせているのは、大学時代の経験があるからだと思っています。また、Webサイトの執筆や取材の活動は、学校の広報に関する仕事に直接繋がっています。企画から投稿までを全て自分でできるのはROJEでの経験のおかげだと感じます。

6 プロフィール

中澤 歩さん

京都府内公立中学校の非常勤講師を経て、2020年から鳥取県の青翔開智中学校・高等学校の国語科教諭、2022年からは同校の社会科教諭として勤務。現在は高校3年生の担任で、広報部として学校ホームページの管理なども担当している。

学校HPの教職員紹介→https://seishokaichi.jp/teachers/2559/ 

関わった本(担当:実践10)→https://bookpub.jiji.com/smp/book/b597275.html

7 主催団体

NPO法人ROJE EDUCAREERプロジェクト(旧:教育と仕事フェスプロジェクト)
「一人一人が納得して自身のキャリアを決められる」ことを目標に、大学生向けイベントの企画・運営を行っている、大学生によるプロジェクトです。
私たちは教育業界のキャリアの面白さを広く発信し、多様な教育キャリアと出会う機会を創出することで、教育業界でのキャリアを歩みたいと思う学生を増やし、納得のいくファーストキャリアを選択してもらうことを理念に掲げています。詳細はこちら▷EDUCAREER(旧:教育と仕事フェス) | NPO法人日本教育再興連盟(ROJE) (kyouikusaikou.jp)

8 編集後記

 目の前の生徒としか関われない分、生徒ひとりひとりに真摯に向き合っていることがわかりました。先生は大変な仕事ではありますが、それを超える充実感や達成感があるということをこの記事を通して知っていただきたいです。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 丸山和音)

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この記事を書いた人

先生を目指す学生の方に向けた情報を中心に発信していきます。

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