道徳と国語 ~両教科の違いと教科横断的な学習の可能性~(幸阪創平先生インタビュー)

1 はじめに

この記事は、2022年4月5日に行った、東京学芸大学附属竹早小学校 道徳部の幸阪創平先生へのインタビューを記事化したものです。インタビューは、2022年3月に開催された第6回道徳教育研究会『語ルシス』春季オンラインセミナーを踏まえて行いました。

今回のインタビューでは、道徳科と国語科における学習の違いだけでなく、両教科を横断的に学習することの可能性教科横断的な授業をする際に大切な考え方についても伺っています。

◎こんな先生におすすめ!

  • 道徳科と国語科の学習が似ていると感じている方
  • 道徳科と国語科は切り離して考えるべきだと感じている方
  • 教科横断的な授業のポイントが知りたい方

2 道徳科と国語科をめぐる問題意識

道徳科と国語科が似ているということは以前から言われてきました。しかしどの部分が似ていて、どの部分が違うのかは現場の教師にとって曖昧で、混同されたまま授業されることもあります。

道徳科と国語科が混同されることで生まれる「読み取り道徳」(詳細は下記参照)と呼ばれる道徳科の授業や、「道徳っぽい国語」と呼ばれる国語科の授業では、両教科の特質がないがしろにされているのではないかというのが私の問題意識です。

※「読み取り道徳」= 教材中の主人公の心情を時系列に従って教師が説明し、それに対応する問いに子どもが答えるといった形式の授業のこと。

3 道徳科と国語科の違い

 道徳科と国語科の違いとは

国語科は言葉の学習であり、あくまでも教材の叙述をもとに与えられた課題に取り組みます。一方道徳科は教材の行間に注目します。道徳科では叙述と叙述の間にある空白を使って、子どもたちは自分の経験を振り返り、想像を膨らませます。

また国語科では単元を組んで複数時間で教材の学習を進めますが、道徳科は違います。道徳科は年間の授業時間数が34~35時間であるため、1つの主題に使うことができる授業時間は1~2時間であるのが一般的です。そのため、同じ教材であっても扱い方は異なるといえます。

 「読み取り道徳」はなぜ問題か

そもそも「読み取り道徳」とは、教材中の主人公の心情を時系列に従って教師が説明し、それに対応する問いに子どもが答えるといった形式の授業を指します。
こうした授業の大きな問題点は、子どもの道徳的な問題意識を無視して展開されているところにあります。

また「読み取り道徳」の授業では、道徳科において重要な多面的・多角的に考えることや自己を見つめることがないがしろにされているといえます。
多面的・多角的に考えることや自己を見つめることは道徳科で育成される資質・能力である「道徳性」を獲得するまでの学習過程であり、現在は道徳科での学習を評価する際の材料にもなっています。

4 道徳科と国語科の教科横断を考える

 道徳科と国語科を横断的に学習するメリット

道徳科と国語科を横断的に学習するメリットの一つとして、国語科で育成される読みの技術を活かして道徳科での学びを深めることが可能ということが挙げられます。国語科では細かい叙述や表現の違いなどに着目することで、教材の読みを深める資質・能力が育成されます。一方、道徳科では道徳的価値を介して教材を読み、自分事として捉えることで道徳性を育成することが求められます。

国語科で培われた読解力によって教材の読みを深めることは、子どもたちが教材やそこに内在する道徳的価値を多面的・多角的に考えることに繋がります。こうして教材や内容導項目として定められている道徳的価値を自分事として考えることが重要なのではないでしょうか。

 教科横断的な授業で特に大切なこと

教科横断的な授業では、カリキュラムデザインが特に重要です。授業において大きなテーマを設定したのであれば、授業の最後にもう一度始めのテーマに立ち返って考えられるように順序を工夫する必要があります。

たとえば、始めに道徳科で教材から子どもの問題意識を引き出したなら、その後国語科で教材を読み解き理解を深め、最後にもう一度子どもの問題意識に立ち返った授業を行うといった順序が考えられます。

 授業を考えるときに大切なこと

道徳科と国語科に限らずすべての教科において、授業の根っこに子どもの問題意識を据えることが大切です。目の前にある教材から子どもたちが持った問題意識や疑問を軸に授業を展開するということです。

子どもの学びを教科という形に分断しているのは教師側であり、子どもたちは必ずしも教科を意識して学習していません。教師が一方的にカリキュラムを決定して授業するのではなく、子どもの問題意識に根差したカリキュラムを作成していくことが大切です。

5 プロフィール

 幸阪創平(こうさか・そうへい)

東京学芸大学附属竹早小学校教諭。東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士課程で「子供の学びの主体性を育むカリキュラムデザイン」を研究中。元文部科学省「私たちの道徳」編集委員、東京書籍道徳科教科書編集委員。道徳教育研究会「語ルシス」運営、セミナー「ポスト・コロナ時代に対応した道徳授業づくり—道徳授業の普遍と変革—」を随時開催中。(2022年4月25日時点のものです。)

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7 編集後記

道徳科と国語科はいずれも特定の教材文を用いながら授業を展開するという点において似た性質を持っています。そのため私自身、両教科での学習が混同されたり、あえて必要以上に切り離されたりしていると感じていました。しかし今回セミナーに参加し、インタビューをさせていただいたことで、両教科を横断的に学習することの可能性や面白さに触れることができました。

また、「子どもの学びを教科という形に分断しているのは教師側である」というお話が印象的でした。教師にとって各教科で育成される資質・能力が何であるか明確に理解しておくことは不可欠だと考えますが、同時に子どもの問題意識を出発点にした教科という枠組みにとらわれない学習にもとても魅力を感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 柳川悠月)

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柳川悠月

興味がある分野は、平和教育・国語教育・日本語教育です。2か月に1記事を目標に頑張ります。ねこを飼っています。
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幸阪先生 写真.jpg

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