1 はじめに
この記事は、NPO法人ROJE関東中高まなびプロジェクトが、2018年11月から2019年2月にかけて佼成学園中学・高等学校(男子校)の中学3年生4クラスで実施した、全8回道徳の授業実践についてまとめたものです。
中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。その中で、今回記事化した活動は「佼成よのなか科」と呼び、生徒たちが自分らしさ(「佼成よのなか科」では、自分らしさを「俺の哲学」と名付けています)を見つけ、あるがままの自分を受け入れていくことを目標に活動しています。
中高まなびプロジェクトのHPはこちら
今回は、第4回の授業実践をお届けします。(授業案はこちら)
- 対象:佼成学園中学校3年 4クラス(各クラス30~34名)
- コマ数:8回(各回50分、最終回のみ80分)
- 授業形態:初回と最終回のみ大講堂、その他各クラスでの一斉授業
〇授業で使用したワークシート
・①宿題用 ワークシート
・②質問シート(DigDigゲーム)
〇関連記事〇
第1回記事
第2回記事
第3回記事
第5回記事
第6回記事
第7回記事
第8回記事
2 【佼成よのなか科】授業の目的
第4回では、自分の心惹かれるフレーズ(歌詞・小説・名言など)から「自分らしさ(俺の哲学)」を探求し、「自分が大切にしていきたいと思うものに気づくことができるようにする」ということを目的に授業を行いました。
お気に入りの歌や小説・名言のフレーズを探し、共感する理由を考え、「自分が大切にしたいもの・考え方」が潜んでいることに気づいてほしいと思い、この目的を設定しました。
自分が選択したフレーズに対して、「なぜ惹かれるのか」を突き詰めて考えるために、クラスメートと質問し合うという形をとりました。
3 実践
本授業の流れは大きく3つに分けられます
①心惹かれるフレーズのうち共感できるフレーズを選択する
②最も共感できるフレーズを1つ選択し、そのフレーズに共感した理由を考察する
③ペアで共感した理由をディグり(深掘り)、ディグりの中から自分の「大切にしていきたいこと」を見つける
① 心惹かれるフレーズのうち共感できるフレーズを選択する
前回の授業時に、「心惹かれるフレーズを5つ以上探す」という宿題を出しました。まずは、宿題(資料①参照)で探してきた「心惹かれるフレーズ」のうち自分が最も共感できると思うフレーズに印をつけました。
生徒たちはこれまで経験の中で、歌に励まされたり、小説の言葉に感動した経験が少なくとも一度はあると考え、この宿題を出しました。しかし、半数以上の生徒が宿題をやってきていませんでした。宿題をやってこない生徒が一定数いると予測して、事前に救済ワークシート(4曲の歌詞が書かれたワークシート)を用意していましたが、こんなにも多くの生徒が宿題をやってこないということは予想していませんでした。この点が①での反省点であり、宿題の出し方や、宿題を出さずにできるだけ授業内に収める工夫を考えるべきだと思いました。
宿題をやってきている生徒の「心惹かれるフレーズ」を見ると、現在流行しているアイドルの歌やアニメの主題歌、漫画の一コマ、部活動の先生に言われた言葉などを書いていました。
② 最も共感できるものを1つ選択し、そのフレーズに共感した理由を考察する
①で選択したフレーズのうち、最も共感できるフレーズを1つ選び、丸をつけました。そして、丸をつけたフレーズに、なぜ共感したのかを考えました。
生徒の多くが「自分のやる気を引き出してくれるから」や「落ち込んだ時に励ましてくれるから」、「自分の理想だから」という理由を書いていました。一方で、「歌の最後だから」と歌の本質の意味を考えている生徒もいました。フレーズを選んだ理由を通して、生徒の心情が垣間見えました。
③ ペアで共感した理由をディグり、ディグりの中から自分の「大切にしていきたいこと」を見つける
Dig Digゲーム(ゲームの詳細は第1回授業記事を参照)を行い、②で考えた共感した理由を深掘りました。大学生でDig Digゲームを行った際に、途中で相手に関することではない質問をしてしまい、質問内容を考えることが難しかったため、質問内容の参考として質問シート(資料②参照)を作成しました。
質問シートを元にペアで3回質問を繰り返し、「大切にしていきたいこと」を見つけました。生徒から出た「大切にしていきたいこと」を一部紹介します。
「自分から気づくこと」
「諦めない心」
「何が重要かということを判断すること」
などの「大切にしていきたいこと」を見つけていました。フレーズを選ぶ段階で、このフレーズから何を大切にしていきたいのだろうかと疑問に思うフレーズを選択していた生徒もいましたが、最後にきちんと「大切にしていきたいこと」を見つけていました。生徒の柔軟な発想と、歌詞の意味を自分の経験等にあて想像する力に驚きました。
4 ふりかえり
今回は「自分らしさ(俺の哲学)」を探求し、「自分が大切にしていきたいと思うものに気づくことができるようにする」を目的に授業を行いました。今回の授業は、ワークが難しい、空欄が目立つなどの反省点が多く見つかりました。
前回の授業から間が空いたこともあり、「心惹かれるフレーズを5つ以上探す」という宿題をやってきていない生徒が多くいました。救済として、大学生が選んだ歌詞が書かれてあるワークシートを用意し、そのワークシートからフレーズを選んでもらいました。しかし、生徒にとって本当に「心惹かれるもの」がその歌詞にあるかどうかはわかりません。本当に「心惹かれるもの」は、自分で感じて、見つけるのであって、他人に選んでもらってその中から選ぶものではないと思います。だから、宿題を出すのではなく、授業内に「心惹かれるフレーズ」を見つける時間を設けるなど改善が必要だと思いました。
これにより、予想していた授業進度が大幅にずれ、最終的に生徒全員が「自分が大切にしていきたいこと」を見つけることができませんでした。自分が見つけた「心惹かれるフレーズ」とは関係なく、ただ「自分が大切にしていきたいこと」を書いている生徒もいました。「心惹かれるフレーズ」から「自分が大切にしていきたいこと」を導き出す過程をもう少し考える必要があると思います。
今回の授業では、反省点が目立ちますが、来年度はこの反省点を踏まえ、改善していきたいと思います。
5 関東中高まなびプロジェクトとは
中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。
中高まなびプロジェクトのHPはこちら
〇関連記事〇
第1回記事
第2回記事
第3回記事
第5回記事
第6回記事
第7回記事
第8回記事
6 記事作成者の一言
手を挙げて発表するという授業の概念を取り払い、生徒が自由に発言できる環境を作った結果、よのなか科の授業4回目にして生徒が徐々に本音や考えを素直に話してくれるようになりました。例えば、大学生が「心惹かれるフレーズ」を発表した際に、「この歌はもう古い、時代遅れだ」と言われたり、1人で上京し、寂しい思いをしているという話を聞きました。このように中学生と大学生という年齢差がないからこそ話してくれることもあります。また、教科学習ではなく、評価をしないからこそ、生徒たちは自由に発言することができます。今回の授業では、授業の成功の喜びよりも、生徒が積極的に話してくれる喜びを大いに感じました。
(編集・文責:関東中高まなびプロジェクト)
コメント