中3道徳「日常から探る自分らしさ」(関東中高まなびプロジェクト) 第2回授業記事

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目次

1  はじめに

この記事は、NPO法人ROJE関東中高まなびプロジェクトが、2018年11月から2019年2月にかけて佼成学園中学・高等学校(男子校)の中学3年生4クラスで実施した、全8回道徳の授業実践についてまとめたものです。

中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。その中で、今回記事化した活動は「佼成よのなか科」と呼び、生徒たちが自分らしさ(「佼成よのなか科」では、自分らしさを「俺の哲学」と名付けています)を見つけ、あるがままの自分を受け入れていくことを目標に活動しています。
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今回は、第2回の授業実践をお届けします。
対象:佼成学園中学校3年 4クラス(各クラス30~34名)
コマ数:8回(各回50分、最終回のみ80分)
授業形態:グループワーク中心

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2 授業の目的

第2回の授業目的は以下のようになります。
①日常から「自分らしさ」を探り、俺の哲学に向かう1つの柱とする
②自分らしさを知り、自ら選び獲得する人生のきっかけとする

3 実践

本授業の流れは大きく2つに分けられます。
①日常と自分らしさの関係の説明
②ワーク

①日常と自分らしさの関係の説明

第2回の授業は、クラス単位に分かれて各教室で行う初めてのよのなか科の授業です。そこで、第1回の授業でキーワードとなった「俺の哲学」の説明から始めました。第1回の授業を普段の教室ではなく講堂で行ったことで、印象が強かったからか、生徒は「俺の哲学」をほとんど完璧に覚えていました。
次に、日常とその「俺の哲学」の関係を、まずは隣の生徒同士で考えてもらいました。多くの生徒は「日常が土台で、それが自分らしさになる。」と考えていました。よのなか科としては日常と俺の哲学の関係を相互または循環的な関係としています。ですので、両者の観点から自己探求をすることが可能ではありますが、今回は初めての自己探求ですので、生徒が想像しやすい「日常」から探っていくこととしました。

②ワーク

ワークではまずルールと合言葉を定めました。ルールは「相談しながら考えてよい」というものです。先程も書いたように、初めての自己探求となりますので、雰囲気が固くならないようにするためにこのルールを設定しました。また、合言葉は「気軽にまじめに」として、大学生は授業の中で生徒に「合言葉は?」と何度も聞き、雰囲気づくりを行いました 。
ワークは全5段階となっています。内容は、
⑴日常の点数づけ
⑵日常に対する感情
⑶感情の分析(what & why)
⑷○○性に言い換える
⑸共有
の5つです。

⑴日常の点数づけ

自身の日常を大雑把に100点満点で点数をつけてもらいました。結果は生徒によって様々で0~100までいました。そして、その点数の理由を考えると同時に、自分の日常の中から1つ「日常代表」として日常の中のエピソードを選んでもらいました。

⑵日常に対する感情

その日常代表を考えたときに出てくる感情を「プラス感情・マイナス感情」の2つにわけて書き出してもらいました。プラス感情には「楽しい、面白い、楽」などが多く並び、マイナス感情には「めんどくさい、だるい、面白くない」などが並びました。
ここで授業中ですが2分間の休憩を入れました。自己探求をする際の頭の疲労感は、大人と子どもで大きく異なります。子どもは初めての作業に苦戦するので、大学生側が大学生の日常などを話して軽い休憩を入れました。

⑶感情の分析(what & why)

ここでは分析の手法として「what & why」を行いました。まずは「what」つまり「何に対する感情なのか」を具体化します。ただ部活が「楽しい」といっても「コーチとの会話が楽しい」のか「練習メニューが楽しい」のか「仲間との時間が楽しい」のかわかりません。ですので、ここで感情をより正確に記入してもらいます。その後、「why」つまり「どうしてその感情を持つのか」について考えます。今回のワークではここが一番難しい部分です。「なぜ仲間との時間が楽しいのか」などという、今まで考えたことがない問いなので多くの生徒は苦戦します。ここで「なぜ、どうして」という疑問を持つことが自己探求の第一歩だと私たちは考えています。
「why」の分析の例
日常代表とその感情:「部活で仲間といる時間が楽しい」
   ↓
問い:どうして部活で仲間といると楽しいのか
   ↓
部活後に達成感があるから、部活だけに集中できるから

注目すべきところは、分析の軸を自分に当てているところです。自己探求の際には分析結果の主語を常に「自分」とします。「仲間の〇〇くんが面白いから」という分析であると、分析の主語が「仲間の〇〇くん」になっているので、自己探求ではなくなってしまうのです。ここに注意しながら、「自分がどうしてその感情を持ったのか」を考えていきます。

⑷○○性に言い換える

分析を終えたら、その分析結果を「〇〇性」という言葉に落とし込みます。これによって、自分の性格や個性を身近に感じられるようになります。ここでは、「〇〇性」の〇〇は特に名詞でないといけないなどの縛りを設定しないことで、生徒がより自由に〇〇性と名付けられるようにしました。つまり、「積極性・勤勉性」といったものだけでなく、「親知らず性・鳶が鷹を産む性」などの個性的なものでもよいということです。ここで注意しなければならないことは、「〇〇性」の〇〇に入る言葉は、自分の性格でなければならないということです。そのため、分析する対象は自分である必要があります。

分析の注意点の例
分析対象:「監督が嫌いだから部活の時間がめんどくさい」
    ↓
間違いの分析:「監督が厳しいから」
間違いの〇〇性:「鬼コーチ性」

    ↓
正しい分析:「監督が厳しいと自分のやる気が出ない」
正しい〇〇性:「褒められて伸びる性」

⑸共有

生徒が班員の個性的な「〇〇性」を聞き、次に自分の性格を説明します。説明することによって、自然と自分がどういった人なのか考え、人に伝えることを覚えます。

4 ふりかえり

初めての自己探求の授業ということもあって、難しくて終始悩んでいる生徒もいました。クラスによっても進行の度合いは変わり、早く終わったクラスでは⑸の共有後に〇〇性に、当てはまるエピソードを考える時間を設けていました。今回は生徒にとって自分と向き合う最初の機会となりました。そこで、大学生側も慎重に準備をしなくてはいけませんでした。今回のワークはとても自由度の高いものなので、作業を適当にこなし、簡単だったと感じる生徒もいました。しかし実際はとても難しく、大学生にも使えるようなワーク内容です。そういった生徒の取り組みの違いをどう改善するか、来年度以降も考えていかなくてはいけないと思いました。 

5 関東中高まなびプロジェクトとは

中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。
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6 記事作成者の一言

自己探求を始めるには中学でも高校でも早い段階でないといけません。なぜなら自己探求とはとても難しく、また際限なく続くものだからです。しかし、自分の人生を決めるには、まず自分がどのような人間なのか、そして、だからこそどういったことが向いていて、何をしたいのかを考えなくてはなりません。これからの進路を考えなくてはいけない中学生、高校生では受験の準備もあって学生生活の後半には自己探求を一からやっていく時間はありません。こうした自己探求に触れる機会が少しでも増えるよう、これからも努めていきます。
(編集・文責:関東中高まなびプロジェクト)

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