【小2道徳】「かくしたボール」の授業アイディア 

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目次

1 はじめに

本教材「かくしたボール 」は、小学校学習指導要領解説「特別の教科 道徳(平成29年7月)」の内容項目「規則の尊重」に該当する教材です。

2年生は、良くも悪くも小学校生活に慣れてくる時期です。

学習に対する意欲や集中力が少しずつ高まり、当番活動や係活動などの仕事も1年生に比べてスムーズにできるようになります。

「2年生として1年生のお手本にならないと!」「約束やきまりを守れないお兄さん・お姉さんは格好悪い!」という2年生としてのプライドも芽生え、成長意欲が旺盛です。

「約束やきまりは守らないとダメ」という気持ちがある一方で、「少しくらい守らなくてもいいか」「約束を守らなくてもそんなに怒られない」といった気持ちも出てきます。

学校生活に慣れ、ちょっとした気のゆるみが出てくるのが2年生であり、考え方もまだ自分の視点が中心。

ただ、1年生の頃よりも他者の気持ちや考えに気付く力が育ち始めている時期ですので、授業では子どもたちが自己の考えを広げていく工夫が大切です。

2年生の「規則の尊重」の授業では、「約束やきまり」を「守るもの」から「みんなが気持ちよく生活するためのもの」と考えられるようにします。

そのためには、「規則の尊重」を2年生なりに多角的・多面的に考える授業が必要です。

多面的に考えるとは、ある出来事や問題について今まで一面だと思っていたものが、実は多くの面を持っていると気づくことです。

たとえば、「車の運転」という行為を考えた場合、「規則の尊重」だけでなく、「思いやり」「感謝」「親切」「家族愛」「善悪の判断」などさまざまな道徳的価値が同時に関係しています。

多角的に考えるとは、ある一つの面や価値について、さまざまな角度や立場から見たり考えたりすることです。

「親切」という価値を考える場合、「困っている友達に声をかけるのは親切か?」「何もしないという選択も親切になり得るのか?」と、「親切」という一つの価値を、状況や相手の立場、タイミングなど、異なる角度から考えることが多角的な見方です。

子どもたちは1年生のときに、『がっこうのものは』『よりみち』といった教材で「規則の尊重」を学習しています。

その学習にプラスワンをするイメージで授業を構想していきましょう。

2  教材、あらすじ、授業のねらいについて

  • 小学校2学年 道徳科 主題名「みんながつかうもの」
  • 教科書 東京書籍 『新しい道徳』「かくしたボール」
  • 内容項目 C-(10)規則の尊重

あらすじ

主人公「ぼく」のクラスではボール蹴りが流行っている。

ある日、一人でボール蹴りをすると、空気がしっかり入っていて使いやすいボールだとぼくは気づきます。

ぼくは「決められた場所に返す」というルールを知っていながらも、使いやすいボールを他の子に使われたくないと思い、植え込みの中にボールをこっそり隠します。

昼休みになり、隠されたボールを上級生が見つけました。

そのことをきっかけにぼくは自分の行動について考えます。

ねらい

身近な約束やきまりは、みんなが気持ちよく安心して過ごすためにあることを理解し、約束やきまりを守ろうとする意欲や態度を育てる。

3 授業の工夫

「かくしたボール」の授業では、主人公「ぼく」の心情を深掘りし、「規則の尊重」を多面的・多面的に考える工夫をしていきます。

主人公「ぼく」の心情を深掘りする

子どもたちに考えさせたい場面は大きく3つです。

①ボールで遊んでいるとき

②ボールを隠すとき

③隠したボールが見つかったとき

この3つの場面を中心に話し合い、「きまりを守れなかったぼくの心情」を深掘りしていきます。

①ボールで遊んでいるとき

T「ボールで遊んでいるときのぼくはどんな気持ちですか?」

C「最高!」

C「気持ちいい!」

T「何が最高(気持ちいい)なの?」

C「ボールに空気がしっかりと入っている」

C「壁にぽーんと当たってはね返ってくる」

C「楽しすぎる!」

T「良いボールを手にしたぼくの気持ち、わかるかな?」

C「すごくわかる!」

C「サッカーやるときに良いボールを探すから、きっと同じだと思った」

C「きれいなものを使いたい気持ちに似ている」

この場面では、ぼくの気持ちを共感的に受け止めたり、子どもたちの経験を想起させたりして、話し合う気持ちを高めていきます

②ボールを隠すとき

T「ボールを隠すとき、ぼくはどんな気持ちですか?」

C「こんな良いボール、誰にも渡したくない」

C「きまった場所に返さないといけないけど……」

C「ぼくの誰にも取られたくない気持ち、すごくわかる」

C「でも、ダメだよ」

この場面は、主人公「ぼく」が葛藤している場面です。

ぼくも、そして子どもたちもおそらく「ボールを隠すことはダメ」「きまりをまもらないと」と思っています。

しかし、一方で「この良いボールを自分のものにしたい」「ボールを隠したい」というぼくの気持ちにも共感できます。

この2つの気持ちで揺れ動くぼくの心情を考えさせましょう。

そのためにも①の場面で、ぼくの気持ちを共感的に子どもたちが受け止めることがポイントになります。

③隠したボールが見つかったとき

T「隠したボールが見つかったとき、ぼくは『はっ』としました。どんな気持ちだろう?」

C「しまった」

C「見つかってしまった」

C「どうしよう」

T「『しまった』という気持ちだけかな?」

C「ボールを隠さなければよかった」

C「なんで決まった場所に返さなかったんだろう」

C「ルールを守らなくて反省している」

T「ぼくが使っていたボールは誰のものだろう?」

C「学校のもの」

C「みんなで使うもの」

C「だからきまりがある」

C「たぶん昼休みにボールを使いたかった人がいると思う」

C「ぼくはすごい自分勝手だ」

最後の場面では、自分だけのことを考えてルールを破ったこと、みんなが使うものを独り占めしたことが正しかったのかを反省する心情を話し合います。

「規則の尊重」を多面的・多角的に考えさせる

「規則の尊重」を多面的・多角的に考えさせ、1年生の学習にプラスワンをします。

「かくしたボール」の主なテーマは、「規則の尊重」だけではなく、「みんなのことを考えて行動する大切さ」も含まれています。

「規則を守ること」にある多面性に気づかせていきましょう。

T「どうしてボールを決まった場所に返すのかな?」

C「みんなでボールを使うため」

C「返すルールがないとぼくみたいに隠す人が出てくるから」

C「自分勝手にボールを使わないようにするため」

また、以下のような多角的な視点で「規則の尊重」を考えさせる展開も考えられます。

  • みんなで使うものを自分勝手に独り占めせず、周囲の人のことを考えてルールを守る
  • 自分の都合や気持ちだけでなく、集団や友達の立場を考えて行動する
  • ルールを守らないことで周りに迷惑をかけたり、結果的に自分も嫌な気持ちになることがあると気づく

以下の発問で、子どもたちが視点を変えて規則を考えられるようにしましょう。

T「きまりを守らないとどうなるかな?」

C「みんなが好き勝手にボールを使うようになる」

C「ケンカが起こる」

C「楽しくない」

C「みんな良い気持ちで過ごせない」

T「きまりは何のためにあるのだろう?」「どうしてきまりがあるのだろう?」

C「みんなが良い気持ちで過ごすためにきまりはある」

C「きまりがないとみんなが好き勝手になっちゃう」

C「きまりを守ると、みんなのためになる」

「かくしたボール」のお話を通して、子どもたちが「なぜルールがあるのか」「自分勝手な行動がなぜいけないのか」を自分自身の問題として考え、社会や集団で気持ちよく生活する規範意識を育てていきましょう。

執筆者プロフィール

マー

小学校教員を15年務めた後、フリーのWEBライターに転身。教員時代は安全主任、体育主任、生徒指導主任、学年主任を担当。現在は「物事のよさをより多くの人に」をモットーに教育系記事、金融系記事を主に執筆。趣味は野球観戦とランニングで、野球やマラソン・駅伝を応援するブログを運営している。

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