中3道徳「自分らしさとは?」(関東中高まなびプロジェクト) 第1回授業記事

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目次

1 はじめに

この記事は、NPO法人ROJE関東中高まなびプロジェクトが、2018年11月から2019年2月にかけて佼成学園中学・高等学校(男子校)の中学3年生4クラスで実施した、全8回道徳の授業実践についてまとめたものです。

中高まなびプロジェクトでは、中高生に教科学習に限らない幅広い学びを届けるために、大学生が中学校・高校に行き、さまざまな授業実践を行っています。その中で、今回記事化した活動は「佼成よのなか科」と呼び、生徒たちが自分らしさ(「佼成よのなか科」では、自分らしさを「俺の哲学」と名付けています)を見つけ、あるがままの自分を受け入れていくことを目標に活動しています。
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今回は、第1回の授業実践をお届けします。

  • 対象:佼成学園中学校3年 (120名前後)
  • コマ数:8回(各回50分、最終回のみ80分)
  • 授業形態:初回と最終回のみ大講堂、その他各クラスでの一斉授業

第1回授業案

授業で使用したワークシート
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2 【佼成よのなか科】授業の目的

第1回は、次の2つのことを目的としました。
1:どんなことを目指して何を行うのかなど、生徒がざっくりと「佼成よのなか科」について知ること
2:生徒自身がこれからの授業に主体的に取り組めるよう、「佼成よのなか科」に対して興味・関心を持つこと
これらの目的を達成するために、第1回の授業では、「佼成よのなか科」で大切にしている考え方である、「深ぼる」ことを楽しみながら体験するゲームを実践しました。

3 実践

本授業の流れは大きく3つに分けられます。
①導入
②Dig Dig ゲーム
③「よのなか科」の説明

①導入

導入では、「君らしさって何ですか?」という「佼成よのなか科」の核心を突く問いを生徒に投げかけて「自分」へ意識を向けてもらい、これから私たちと一緒に「君らしさ」というものを探求していこう、と、「佼成よのなか科」の授業の目的を伝えました。
 
初めて関わるということもあり、生徒の警戒心を解くために、「なんだこの人たち?」や「何しに来たんだろう」といった生徒の気持ちを代弁した内容をパワーポイントに反映させたり、初回から「難しそう」というマイナスな印象にならないよう、難しい言葉を使わず、簡潔に優しい言葉で伝えることを心がけたりしました。
 生徒の多くが、目新しい大学生という存在に興味を示してくれました。

②Dig Dig ゲーム

Dig Digゲームとは、「佼成よのなか科」が大切にしている「深ぼる」という考え方を生徒に楽しみながら体験してもらうために私たちが開発したゲームです。手順とルールは以下の通りです。

《手順》

①5~6人のグループで円になり、一人が回答者、その他の人が質問者となる

②回答者はスクリーンに映し出された一つの質問に答える
 (質問例)趣味はなんですか?
     最近はまっていることはなんですか?
     一日の中で何をするのが好きですか?
     好きな先生は誰ですか?

③質問者がその回答についてWhat?(なぜ?)かWhy?(何を?)を用いてさらに質問をすることを2分間繰り返す。}
 (例)趣味はなんですか?→「YouTubeを見ることです。」→なぜYouTubeを見るのが好きなのですか?→「自分がやったことがないことを実際にやっているのが面白いからです。」→なぜ自分でやったことがないことをしていると面白いのですか?→「自分が知らなかったことを知ることができるからです」

④質問タイムが終わったら、質問者全員が回答者に対して「○○さんは○○な人だと思います」とコメントをする
 (例)「○○さんは探求心がある人だと思います」

⑤回答者を変えて①∼④を繰り返す
《ルール》
①質問者は聞いていることをはっきりさせよう
②質問は本人に関する質問をしよう
③質問・回答はそれぞれ10秒以内で

授業では、「深ぼる」ことを「ディグる」という言葉で表現しながらDig Digゲームの目的を伝え、大学生数人が前で手本を見せながら方法を説明した後にゲームを実践しました。実践では、1グループに1人の大学生が加わって取り組みました。
生徒たちは、大学生と初めて話す生徒が多かったですが、徐々に心を開き、大学生とのコミュニケーションを楽しんでいる様子が見られました。一方で、Dig Digゲームのやり方がうまく伝わっておらず、相手を深ぼれないような質問が出たり、回答に無関係な質問が出ることがありました。また、Dig Digゲームを難しいと感じる生徒も多く、質問や回答に詰まってうまくゲームが進まない場面も見られました。とはいえ多少の問題点はあったものの、初めて自分や友達を深ぼる経験をし、「楽しかった」「自分の知らないことを知っていくのが楽しい」というコメントをしてくれました。

③「よのなか科」の説明

Dig Digゲームの後は、「よのなか科」の目的を私自身の体験談を踏まえながら説明しました。
私は自分が中・高生の時、自分に「自分らしさ」は全くないので勉強や部活で結果を出すしかない、と思うような自信のない人間でした。しかし大学進学と同時に上京し、あらゆることを自己決定しないといけない状況になって初めて自分のことを深く探求するようになり、自分にしかない「自分らしさ」に気づくことができました。その時、別に結果を出さなくても自分は自分だと思い、気持ちが楽になったという経験があります。だからこそ、今学校で生活する生徒たちに、自分を知り、自分を受け入れ、自分を認められるようになってほしいと思うのです。
生徒は、私の中学生時代の話を興味を持って熱心に聞いてくれている印象でした。もしかしたら佼成学園の生徒の多くが、私の話に共感してくれた人が多いのかもしれないと思いました。

4 ふりかえり

今回の目的は、「よのなか科」について知ることと、「佼成よのなか科」に興味・関心を持つということでした。
「佼成よのなか科」について知るという目的については、「佼成よのなか科」の目的を私自身の体験談から説明したため、生徒にわかりやすく伝わったと思います。生徒への授業後アンケートにおける、「佼成よのなか科の活動内容が理解できた」「佼成よのなか科の目的が理解できた」という2つの項目は、比較的高い評価を得たことからも、この目的は達成できたと言えます。しかし、「俺の哲学」など、佼成よのなか科特有のワードについての説明が抽象的過ぎて、よくわからなかったという感想が多くみられました。今回の佼成よのなか科では、『哲学』という普段中学生が聞きなれない言葉をあえて使うことで、生徒に新しい世界観を感じてもらうという意図があったものの、もう少し説明を詳しくしなければならないと感じました。
また、二つ目の目的である「よのなか科」に興味・関心を持つという目的についても、生徒が私自身の体験談を熱心に聞いてくれた様子から関心を持ってくれていたことが分かる一方で、Dig Digゲームでは、深ぼることが難しいと感じた生徒が多かったです。生徒への授業後アンケートにおける「これからのよのなか科が楽しみ」という項目の平均は中程度であり、こちらの目的は達成できたとは言えない結果となりました。
今後の課題としては、新たによのなか科の要素が凝縮されている且つ楽しい導入のワークショップを考案し、一層生徒の主体性を引き出せるような初回授業にしようと思います。

5 中高まなびプロジェクトとは

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6 記事作成者の一言

お互いの様子が分からない状態での授業でとても緊張しましたが、生徒が興味興味をもってくれていることが態度や振り返りシートから伝わってきて、この活動のやりがいを感じました。
(編集・文責:関東中高まなびプロジェクト)

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