ベテラン教師が語る児童・生徒指導法 ~学級崩壊・いじめを起こさないために~

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はじめに

こちらの記事は、港区立青山小学校の渡辺満子先生への取材をもとにしたものです。渡辺先生は過去に様々な方法で問題のあるクラスを立て直してこられました。若手の先生が学級運営をしていく上で、学級崩壊やいじめといった問題を予防・解決する効果的な児童・生徒指導を行うことは難しいと思います。また、教師を目指している方々にとっても不安なポイントではないでしょうか。今回はそんなベテランの渡辺先生に伺った指導法を紹介します。

目次

1 子どもたちを叱る時、褒める時のポイント ~みんなに守らせるルールが必要~

厳しく叱る

組織には必ずルールが存在するように、クラスにも子どもたちに守らせるルールが必要です。しかし、あれもこれもルールにしていては、子どもたちも守り切れず中途半端なものになってしまいます。したがって、教師がみんなに守らせるルールはただ一つ、仲間の人権、身の安全を脅かすことは絶対にしてはいけないということです。たとえば、暴力をふるったり、友達を仲間外れにしたりなど、いじめにあたる行為です。まずは、一人ひとりが平等の権利と義務を持っているという、最も大切なことをしっかりと子どもたちに理解させましょう。そしてこのルールを破るような行為をした場合には厳しく叱ります。

ルール作りの基準

では、時間を見て着席をする、忘れ物をしない、教師が話すときは静かにする、などといった子どもたちに個人差のある日常生活における決まりはどうすればよいでしょうか。これらは、教師が褒めることで子どもたちの中でルールの基準が決まっていくのです。教師が褒めると、子どもたちはどうしたら褒めてくれるか考えるようになり、自己指導能力が身に付いていきます。口うるさくいつも叱ってばかりいると子どもたちに嫌気がさしてしまうでしょう。一度注意したら待ち、子どもに気づかせることが大切です。そうすることで、教師に見守られているという安心感も生まれます。

2 考えるべきはまず授業 ~子どもを逃がさない~

授業時間は一日の学校生活の中で大半を占めており、児童・生徒指導と学習指導(教科指導)は互いに密接に関連しています。したがって、いきいきとした学級を作るためには、楽しい授業で子どもたちを惹きつけることが基本です。まずは授業力を磨きましょう。

子どもたちを逃がさない授業

子どもたちにとって、苦手な授業ではどうしても集中力が途切れがちになってしまうものです。つまり、子どもたちを授業から逃している状態です。そこで「あなたはどう思うの?」と質問を投げかけたり、参加せざるを得ない活動を取り入れたりし、授業中常に子どもたちに緊張感と考える時間を与えることで、一人も授業から逃しません。

3 若い先生に伝えたい ~「教えること」と「育てること」~

教え、育てると書いて「教育」。「教育」は「教えること」と「育てること」がバランスよく行われなければなりません。しかし、とくに若い先生の授業では、指導書に凝り固まり、教え込み型になってしまうことが多いようです。授業では「教えること」だけに執着せず、授業の中でも「育てること」が大切です。
では、「育てること」とは具体的にはどうすることなのでしょうか。それは、物の見方について子どもたちが自ら考える時間を確保することです。忘れてはいけないのは、教科書の中身を教えるということではなく、各教科の単元を通して何を育てたいのかということです。ここが塾の役割との大きな違いでもあります。
“単元を教えるのではなく、単元で教育する。” 教材研究とは、学習指導要領の目標を授業でどう具現化するのかを考えることなのです。

4 編集後記

「学級崩壊」や「いじめ問題」というワードを聞くと、なんとかしなくては、と思う反面、自分が解決できるのかという不安な気持ちにもなります。実際、そういった問題に対処し切れず、鬱状態になってしまう先生も少なくありません。
しかし、渡辺先生に取材をしていて驚いたのは、学級崩壊したクラスや問題のある子どもの指導にあたっていた時の様子をとても楽しそうにお話されていたことです。渡辺先生は、荒れているクラスほど立て直すことができて楽しい、また、問題を抱えているクラスほど、子どもたちも保護者たちも先生の統率力を期待しているのだとおっしゃっていました。
難しい教育問題も、子どもたちの心をつかむことと信頼関係を築くことができれば解決できるものであり、そしてなにより先生が楽しい気持ちを忘れずに指導にあたることが大切なのです。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 岡本佳菜子)

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