さだまさし「償い」で人間愛について考える(坂本哲彦先生)

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作成者: 石川瑛士 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

この記事は、坂本哲彦先生が運営されているホームページ「坂本哲彦 道徳・総合の授業づくり」から引用させて頂いたものです。坂本哲彦先生のホームページはこちら→ http://sakamoto.cside.com/

2 対象

中学3年生

3 ねらい

人間には弱さや醜さを克服する強さや気高さがあることを信じ、人間としてよりよく生きようとする心情を高める。2-(3)

4 学習内容

(1)人物の心情を共感的に理解すること。

  • もし、自分が「ゆうちゃん」だったら、「奥さん」に許してもらえるような誠実な謝罪ができるかどうか考えること。
  • もし、自分が「奥さん」だったら、「ゆうちゃん」をゆるすような心の広さがあるかどうか考えること。

(2)自分の生活を振り返って考えをもつこと。

  • 実際の生活で、誠実な謝罪ができているかどうか、また人を許すような寛容さがあるかどうか考えること。

※(1)と(2)は学習活動を別にせずに、同じ学習活動の中で行う。

5 資料

絵本『償い』さだ まさし(2003.1.10 サンマーク出版)

音楽CD『償い』さだ まさし
~『SONGS OF LIFE』所収~(2003.4.23 フォア・レコード)

※内容等(参照)
http://www.geocities.jp/torabane/tv29.html

6 学習過程

①絵本前半を読んで話し合う。(15分)

「今日は“自分の犯した罪を償う”ということについて考えます」と告げ、板書。すぐに絵本を提示(OHCで拡大提示)。「自分が主人公ゆうちゃんだったら、と思って聞いてください。」

提示1:「ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり」

発問1:「何のために、郵便局にいくのだろう」「貯金を何に使うのだろう」

ハートの花束、ハート型の人影を描いた絵に着目させ、自由に意見をつぶやかせる。ここは、今後の展開への期待感を高めるためなので、深く追わない。「何のために郵便局に行っているのか、続きを読みましょう。」

提示2:「哀しい過ちを犯してしまったのだ」

発問2:「よく似た問いです。ゆうちゃんは、どんな過ちを犯してしまったのだと思いますか?心の中で想像してください。」
指名なし。30秒、沈黙。

提示3:「頭を床にこすりつけるだけだった」

発問3:「もしあなたがゆうちゃんなら、どんなことを考えているでしょうか。そして、あなたなら、この後どうしますか?ゆうちゃんになったつもりで想像してください。」
指名なし。30秒、沈黙。

提示4:「毎月あの人に仕送りをしている」

発問4:「ゆうちゃんが人が変わって、何もかも忘れて働いているときの気持ちや郵便局にとび込むときの気持ちを考えてみましょう。」

ここで、指名。生徒の発言としては、短い、なかなか言葉にならないものが出される。次々と、しかしゆったりと発言者を指名して、その子どもなりの考えを引き出す。そして、「相手の奥さんの気持ちはどうだろうか。」「奥さんは、どんな気持ちでお金を受け取っているだろうか」と問い返しながら、

  1. 「お金では命は買えないこと」「いくらお金を払っても夫は帰ってこないこと」
  2. 「それでもせめてお金を払うことしか、ゆうちゃんにはできないこと」「ゆうちゃんの誠実さは、お金で示されていること」「しかも、毎月、毎月、欠かさないことで、謝る気持ち、償いをしていること」
  3. 「ただお金を払えばいいというものではなく、人が変わったように働くことで、ゆうちゃんは、誠実に償う気持ちを相手にも(伝わらないかも知れないけれど)また自分にも示していること」

を共通理解する。

言葉にならない思いを教師が拾い、代弁するようにしながら板書する。また、人の命を奪ってしまうこと、また、罪を犯すことの重大さを教師から補説する。まさに「取り返しがつかない」事態の重さである。

②絵本の後編を読んで話し合う。(15分)

提示5:最後までゆっくり間を取りながら、読み聞かせる。

発問5:「手紙を送った時の奥さんの気持ちを想像してみましょう。」

この発問は、「あなたなら、自分の最愛の人の命を奪った人を許せるだろうか」と問っているのと同じである。また、「自分は、日頃人を許す寛大さをもっているだろうか」と考えるのと同じである。

奥さんには、

  1. 文字を見るたびに主人を思い出して辛いという切実な何とも言えない感情があること
  2. 7年間毎月、毎月仕送りをしてもらって、ゆうちゃんの誠実な償いの思いが伝わってきたと考えていること
  3. ゆうちゃん本人の幸せを祈らざるを得ない気持ちになっていること

を手紙の文面をしっかり読み合う中で感じ取らせる。出てこなければ、教師の方から話して聞かせる。

「あなたならできるか」と問い返したり、「自分(教師)は、できないかもしれない」と教師も語ったりしながら、思いを膨らませる。そして、「でも、そうできる人間が素晴らしいと思う。」「人間ってすごいなあ、ゆうちゃんも、奥さんも・・・」「人間は弱さも醜さもあるが、それを乗り越えていける強さや気高さがあるのだ」と子どもたちの納得を広げる。

③絵本のさだまさしによる「あとがき」を読み聞かせる。(10分)

この絵本が、さだまさしの歌の歌詞であることなどを告げて解説をはさみながらゆっくり「あとがき」を読み聞かせる。(この文章は、秀逸である)時間があれば感想を求めてもいい。続いて、「この歌を聴いてみましょう。ゆうちゃんのきもちや奥さんの気持ちを想像しながら、聴いてみましょう。」CDを流し、みんなで聴き合う。

「間違ったと自分で認識したとき、どう対処するかというところでその人の心が試される。」(あとがきから)、「人間って哀しいね だって みんなやさしい それが 傷つけあって かばいあって」(歌詞から)を短冊で教室掲示。

7 実践者プロフィール

坂本哲彦(さかもとてつひこ)
山口県山口市立徳佐小学校教頭。1961年生まれ。
山口大学卒業、山口大学大学院修了。
山口県内公立小学校教諭、山口大学教育学部附属山口小学校教諭、山口県教育庁指導主事等を経て、現職。
自身の経験を活かして、道徳実践をHP、メルマガで数多く配信している。
坂本哲彦 道徳・総合のページhttp://sakamoto.cside.com/

8 編集後記

日本を代表するシンガーソングライターさだまさしさんの、絵本・楽曲を使うという点で新しいタイプの実践です。「飲酒運転」をテーマに、「人の死」と「謝罪」が複雑に絡み合う重い題材です。中学校を既に卒業した私の心にも深く響きました。重い題材だからこそ、生徒一人一人が学び取ることが多くあるはずです。ぜひ、扱って欲しい実践だと感じました。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 石川瑛士)

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