音読の追究①(岡篤先生)

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作成者:福山 浩平 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~音読の追究~307号~313号」から引用・加筆させていただいたものです。
音読指導を通じて読解指導をするためにどのようなことが大切になるのかを紹介した記事です。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

また、関連記事としてこちらの記事もあわせてご覧ください。
音読の追究②
音読の追究③
音読の追究④
音読の追究⑤
音読の追究⑥

2 実践内容

音読の追究に至る経緯

初任者のときから、学力研(当時は、落ち研)に参加していた私は、諸先輩から、音読の重要性や実践の仕方について、くり返し聞かされていました。そして、自然に音読を重視し、国語の時間は音読に大きな比重を割いていました。読解が何をしてよいのか分からなかったので、音読に逃げていたという面もありました。それでも、音読の重視は正論であることが一般的であるから誰からも批判されませんでしたし、それなりの手応えもあったので深く考えることなくワンパターンの音読指導を続けていました。

■読解指導の多様性への気づきと工夫

しかし、読解指導にも様々な方法があることが分かってきました。文芸研、読み研、鍛える国語教室、児言研などの分析批評が話題をさらっていました。どれも、理論と実践を併せ持ち、そこに描かれている子どもの姿は当時の私には本当にまぶしいものでした。それに比べて自分の国語の授業の貧弱さ、単調さを痛感しました。たくさんの本を買い求めて、そのまねを始めました。講座や研究会にもできるだけ参加するようにしていました。それから本当に色々なことをやってみました。そうすると、たいてい時間が足りなくなります。とてもではありませんが、音読にじっくりと取り組んでいる場合ではありません。

■様々な読解指導を試す中でのクラスの状況

何回読ませてもたどたどしく、全員で読むとさぼって読まない子がいる、時間をかけても、期待したような伸びはなく、徐々に音読指導に対する意識は弱くなっていました。そんなことより、読解指導がおもしろくなりました。そして、いつの間にか、音読は宿題に出すだけで、授業ではほとんどやらなくなりました。だからといって、読解の授業がうまくいったわけではありません。自分なりに考えて、準備した授業ですが、思ったような反応がなかったり、一部の子しか乗ってこなかったり、といったことのくり返しでした。色々なことを知ることで逆に迷いが出てきた面もあります。せっかく、たくさんの本を読んで勉強しているのに、授業はちっともうまくできません。以降、読解指導についてはずっと自信のないままでした。私は、読解指導を意識しながら、他の分野にも手を広げていくようになりました。

■最初は「見たこと作文」

教師になって数年間の間で、一番手応えがあったのは、「見たこと作文」です。上条晴夫氏の提唱する作文の方法です。生活作文とは違い、「見たこと」という視点から指導するものです。テーマを継続して持たせたり、読み聞かせによって広げたりするなど、具体的な方法も書かれており若い頃の私にも実践できました。

■他に影響を受けた気付き

このころ、伊東信夫先生の講座を受け、衝撃を受けました。これも今でも覚えています。「莫」についての説明でした。「漢字でこんなおもしろい話があるのか。」と、本当に頭がしびれるような思いでした。今年で、教師24年目に入ります。今となっては、長い間、読解の授業に手応えを得られなかった理由は、はっきりとしています。私が納得できるような読解指導は、音読がセットになっていなければならなかったのです。それなのに、音読が読解につなげることを意識して指導できていないので読解がうまくできず、読解がうまくできないので音読にも関心が薄れていくという悪循環を自分の中で起こしていたわけです。

自分のスタイルの決定のきっかけ

普段から粗暴で、授業を妨害することもある女の子がいました。連動する男の子がいて、二人でどんどんエスカレートしていき、周りの子ども達も諦めている状態でした。「海の命」の授業のときでした。事前にクエのカラー写真を拡大して見せているうえに、教科書にも挿絵が載っています。音読の練習していたにも関わらず、ストーリー上とても重要なクエという魚のことを「漁師の道具と思ってた!」といったのです。クエのことを道具と解釈してはとてもストーリーが理解できるはずはありません。かといって、音読練習をその子がしていなかったわけではありません。教室ではもちろん、ペアを組んだりして確実に読んでいました。宿題もきちんと取り組んでいました。しかし、なぜこんなことが起こるのでしょうか。

■何かひっかかるもの

音読練習はしっかりやっていた子が重要なクエを道具と勘違いしていたこと、そしてその子が頻繁にトラブルを起こす子だったことは、何かひっかかるものがありました。

  • いい加減に読んでるからそんなことになる。
  • 理解力が低すぎる。

と考えることも間違いではないでしょう。
しかし、この子はよくも悪くも思ったことをすぐ口にします。それによるトラブルもよく起きます。ということは、もしかしたら他にもクエを道具と思っていた子がいて口に出さなかっただけかもしれません。また、クエは特別としても、それより小さな勘違いはきっとあったはずです。

■本当に「意味」が「分からん」ときもある

この女の子は、「意味分からんし」とふてくされた表情でいうことがよくありました。その態度の悪さから、つい「なんだその言い方は!」「ちゃんと聞いてないからだろ」といった対応をしてしまいがちでした。ある日の授業中、またこの「意味分からんし」が出ました。「なんだ」と出かけたその言葉をぐっと飲み込んで、もう一度説明を繰り返したところ、「へえ、そうか。分かった。」と素直に勉強を続けました。ふだんの言動と、「意味分からんし」というときの態度の悪さから、「意味分からんし」を「今やっている授業が理解できません」とは解釈していませんでした。これは、反省しました。その後も、冷静に対応してみると、「意味分からんし」といったとき、3つの「意味」があると分かりました。

■生徒が示す「わからない」の3つの意味 

一つ目は、いらいらしていたり、気にいらないことがあったときに、相手を挑発したり、不満をぶつけたりするときの言葉です。この印象が大きかったので、この言葉が出ると、私はつい「なんだ、その言い方は!」という対応をしてしまっていたわけです。
二つ目は、口癖です。何でも「かわいい」という子がいます。同じように、語彙が少ないので、「意味分からんし」を多用しているのです。よく見ていると、友だちと会話していて、おもしろいことがあった時も、にこにこしながら、「意味分からんし」といっていることがあります。この場合、「意味分からんし」に「意味」はありません。聞き流せばよい言葉です。
三つ目が、文字通り「意味が分かりません」という「意味」です。この場合は、もう一度教えてやると素直にいうことを聞きます。ただし、一つ目の印象が強いので、「では、問題を始めなさい」「意味分からんし」と来ると、なかなか「どこが分からないかな?」とはできていませんでした。実際にそれまでも、ふてくされて、いくら教えても全くやろうとしないでわざと授業妨害を繰り返すこともよくありました。それでも、「分かりません。教えて下さい。」といっているときも中にはあったのです。
この子の問題行動の原因の一つは、勉強が分からないことにありました。そして、さらに具体的にいうと、分からなくなる理由の中には、クエを道具と勘違いしたように、言葉や文脈からイメージすることが苦手ということもあったようです。

イメージ化とトラブル

再三、授業妨害や友だちとのトラブルを起こすこの子は、文章中の言葉や文脈からイメージを持つことが苦手な子でした。考えてみると、友だちとのトラブルの中にも、相手の気持ちが想像できないことが原因ということがよくありました。あるいは、相手がいやがっているのに、その表情から気持ちを読み取ることができず、しつこくからかい続けるといったことも度々あります。このクエと道具を勘違いしたことと、友だちとのトラブルが多発することの原因の一部はイメージ化する力の弱さかもしれません。とすると、授業でイメージ化する力を育てることは、生徒指導上のトラブルを減らすことにもつながるわけです。

■イメージ化を授業のメインのねらいに

それまでもイメージ化は、授業を考える際のキーワードにはしていました。しかし、この女の子のことをきっかけに、国語の授業の最重要課題をイメージ化に置いて考えていることにしました。すると、いままで国語の授業をどう進めたらよいのかについて迷い続けてきたことが、実にすっきりと解決することができました。イメージ化を目的に、読解を考えると教材文の中のどこをイメージ化させたいかという視点で教材分析をするようになります。それまでは、教材分析をしても、どれだけすればよいのか、それをどう授業に生かしていくのかがあいまいなままでした。イメージ化をメインのねらいとすることで、かなりシンプルに考えることができるようになったわけです。効率的で、効果的な準備にもつながります。

■イメージ化のためには音読はとても重要

イメージ化をメインにすえると、音読はとても重要になってきます。音読がスムーズに出来ない状態で、言葉のイメージを広げたり、行間を読んだりすることはとても難しいからです。イメージ化をいう明確なねらいを持つと、音読は切実な課題となってきます。スムーズな音読ができずに、イメージ化はできないのですから、まず何とかしてすらすらと音読ができるようにすることが、イメージ化のための第1段階となるからです。そう考えると、これまで自分なりに音読に力を入れてきたつもりでしたが、まだまだ甘かったことに気づきました。音読のねらいをイメージ化のための手段ととらえることで見えてきたことがあったのです。 

▼2方向の課題から読解へ

音読をイメージ化のための手立てととらえると、2方向の課題が見えてきました。一つは、クエと道具の例のように、音読はしているが、イメージ化につながっていない場合があるということです。おそらく、多くの子は、音読練習を充分にすれば、ある程度自然にイメージ化は進んでいくと考えられます。授業では、子どもだけではできないイメージ化の深めることや、友だちのイメージを共有することを目指すことになります。現在は、この音読と読解をつなぐものとして、「言葉探し」という取り組みを行っています。これによって、それまで、ただ文字を追っていた子も少しずつ文脈を理解するようになっていきます。そして、イメージ化の活動にそれまでよりも全体が底上げされた状態で取り組むことができるようになります。

▼音読の不徹底 

もう一つは、音読の不徹底です。音読自体を目的にしていたときは、苦手な子に対して「こんなにやったんだから、後はできなくても仕方ない」と心のどこかで思っていたのかもしれません。しかし、イメージ化を目指す音読としては、せめてすらすら読めないと次に進めません。1年生を担任して、改めて音読が苦手な子の指導の難しさを再認識しました。もちろん、1年生の教科書ですから、難しい文章などありません。音読が得意な子は、1回目からすらすらと上手に読めます。ふつうの子であれば、1年生にとって多少長い文であっても、数回練習すれば、ある程度はスムーズに読めるようになります。これが、苦手な子になるとひらがなを一文字一文字を読むことになり、しかもすぐに読み方が出てこない字もあります。これに加えて、私が担任した音読がとても苦手な子は、集中力がない子も多かったので、横につきっきりで音読練習をさせていても、途中で読んでいる場所が分からなくなることも度々ありました。こういった音読がかなり苦手な子もなんとか、そこそこスムーズに読めるところを目指したいところです。そうでなくては、イメージ化どころではありません。イメージ化の手立てとしての音読と位置づけることによって、音読とイメージ化をつなげることと、音読自体をより徹底して取り組むという二方向の課題が出てきたわけです。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年2月9日時点のものです)

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

イメージ化をすることが友達とのトラブルを減らすことにもつながっています。そのイメージ化の基礎になるものが音読です。音読をする時、読解とつなげるにはイメージ化をねらいとしてみてはいかがでしょうか。
(文責・編集 EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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