音読の追究⑤(岡篤先生)

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作成者:福山 浩平 (Edupedia編集部)さん

1 はじめに

本記事は、岡篤先生のメルマガ「教師の基礎技術~音読の追究~331号~339号」から引用・加筆させていただいたものです。
音読の指導で気を付けるべき点を紹介した記事です。間とイントネーションの指導を今回は紹介しています。
岡篤先生のメルマガはこちらを参照ください。→http://archive.mag2.com/0001346435/index.htm

また、関連記事としてこちらの記事もあわせてご覧ください。
音読の追究①
音読の追究②
音読の追究③
音読の追究④
音読の追究⑥

2 実践内容

音読指導のポイント

低学年の子ども相手の時の呼び方ですが、間違えなくスムーズに読むことを「すらすら読み」、読み取ったことを表現に加える読み方を「上手読み」といっています。高学年では、ふつうに音読と朗読といいます。すらすら読みは、間違えずに読めばよいのですからできるかどうかは別にして、目指すところは1年生にもわかります。間違いが多い子は減らしていけばよいし、間違いが少ない子はなくなるように練習すればよいだけです。そのために、連れ読みや交換読み、宿題などで練習をくり返します。
しかし、上手読み、あるいは朗読のときには何に気をつけて、何ができるようになればよいのかがあまり明確ではありません。「気持ちを込めて読みましょう。」とだけいって、出来る子もいます。一方、どんな「気持ち」をこめたらよいのかさえ分からない子もいるはずです。さらに、「悲しそうに読んでごらん。」でさっと変化が出る子もいれば、それもわからない子もいます。私自身の反省として、以前の上手読み、朗読の時間は、得意な子の読みに頼っていたような気がします。苦手な子には、具体的な手立てを示さず、ただ「がんばれ」といったことしかいっていませんでした。

■上手読みの内容を明確にして底上げ

私は文章の内容がイメージ化できることを目指しています。そのために、上手読みは有効な手立てです。ところが、これが得意な子だけが目立つ場でしかないのであれば、底上げになっていません。そこで、上手読みに関しても、目指す内容を明確にしたいと考えました。そのために、朗読やアナウンサーに関する本をかなり調べ、朗読講座にも参加しました。自分の読み聞かせを録音しては聞き直しています。それぞれのことがとても勉強になりました。ただし、アナウンサーや俳優は教師ではありません。あくまで、教育実践の参考になるものを探すという意識を持ち続けました。これがないと、知識が一人歩きしてできもしないことを子どもに要求したり、方法が先にあって子どもの実態と離れた取り組みをいつの間にかしている、ということになりかねません。

■指導する4つのポイント

現在のところ、私が指導する上手読みの内容は、以下のようなことです。

  • 題名と本文の間を充分にあける。
  • 「  」の前後は間を開ける。
  • 「  」の読み方は登場人物をイメージし、仕草をつけて読む。
  • イントネーション

色々調べ、試したところ、この程度のことで子どもの読みは充分に変わるという実感を得ています。では、一つずつ具体的に説明していきましょう。

■間が与える聞こえ方への影響

プロの朗読に比べて私の読み聞かせや子どもの音読は、その間が短すぎます。以前、「不思議だけど学力が低い子の方が良い読みをする」ということを実践報告の中でした方がいました。学力の高い子の方が、間違いなく読める場合が多いはずですし、内容の理解も深いはずです。それなのに、内容理解を反映するはずの上手読みで、「学力の低い子がよい読みをする」という状況がどうして起こるのでしょう。

■間の問題

私なりに考えたところ、一番大きな要因は、「間」です。いわゆる学力の高い子は、読むスピードも一般に速いはずです。そして、音読の際もスピードがどちらかというと速い子の方が多いはずです。これはこれで、優れた点なので悪いわけではありません。ところが、これが上手読みとして聞くと、間のことを意識していないために、聞き手にイメージを浮かべるゆとりが無いということになってしまいます。一方、学力の低い子の場合、読むスピードは、とつとつとしたものになる場合が多いはずです。もちろん、間違いだらけでは、聞き手も集中できませんが、すらすら読みができる段階になれば、学力の低い子の間は、聞き手にとってちょうどよいイメージを浮かべるゆとりとなります。つまり、速く読む力がないことが結果的には聞き手に伝わる読みの間をつくっていたということです。

■題名と本文の空間

間の最初は、題名です。題名と本文は、1行空きになっているはずです。この空間を間で表します。句読点より、はるかに大きな間になります。ふつう、いくらいっても間は短すぎるものです。「思いっきり大きな間を取りましょう」といっています。それくらいいっても、まだまだ足りません。題名の後、間を開けることを忘れてすぐに読んでしまう子がほとんどです。間を取ることを覚えていたとしても、速すぎるのがほとんどです。この題名と本文の間に十分な間をとることができれば、聞き手はそれだけでも引きつけられます。

■会話文の間

題名の次は、会話文です。「会話のカギ括弧は、聞いている人には見えないね。だから、聞いている人にも会話だと分かるように、『。』のところより、間をあけると上手だよ。」といっています。仮に、「、」が1拍、「。」が2拍だとすると、会話文は、3拍くらいあけてから、読み始めることになります。これも、できるようになるとぐっと読みがよくなります。なぜ「」の間で読みが大きく変わるかというと、読み手にとっても会話文を読む気持ちの準備ができるからです。準備とは、小さな仕草のことです。

■登場人物についてのイメージを持つ

題名の後の間は、絵本でいうと本を開く間です。聞き手にとっては、絵本の世界に入る心の準備の間といえるでしょう。会話文の場合、聞き手にとっては、地の文と違うことに気づく間です。読み手にとっては、この間を使って会話文の人物の声を出す準備をします。それをするには、事前に登場人物についてイメージを描いておくことが必要です。例えば、『くじらぐも』(光村1年下)であれば、1年生と、雲のくじらが登場します。両者が「おうい」と声をかけ合う場面が出てきます。1年生は、自分たちと同じ学年であること、くじらぐもは、空にいてかなり大きなくじらであるはず、といったようなことを確認しておきます。

■会話の場面の理解

さらに、「おうい」の場面では、1年生ならきっと両手を口の横にあてたり、手を振ったりするだろうということも深めておきます。くじらぐもの「おうい」は、ゆったりした低い、大きな声で言うだろうと考えられます。ところが、いざ音読をしてみると、せっかくこういった読解をしているのに、それがなかなか音読には現れません。そこで、私は会話の前の間で二つのことをするように言っています。
 一つ目は、気持ちの切り替えです。地の文はふつうに読めばよいのですが、会話文は1年生やくじらぐもといった登場人物になることが必要です。ところが、これも言葉でいくらいっても忘れがちです。
 二つ目として簡単な仕草を入れるように言います。劇の指導ではないので、大げさにする必要はありません。くじらぐもならちょっと体をそらしたり、胸を張ったりといったことになります。低い声は低学年の子には難しいので、声があまり変わらない子がいるかもしれません。ただし、この小さな仕草で変化を出すには地の文のときには、正しいフラットな姿勢でいることは必要です。それでこそ、わずかな姿勢の変化で声の違いが出てくるわけです。適切な間と読解を生かした会話文の読みができれば、それで十分だと思います。しかし、あえてさらに高度なことを目指すとすれば、イントネーションです。

■音読で感じていた違和感

素人が音読をするとプロと何か、違うところがあります。もちろん、声の質や変化はとてもプロにかなわないことはわかります。しかし、もっと基本的なことが何かが違う。ずっと分からないままだったのですが、ある朗読セミナーに参加して分かりました。私がひっかかっていたのはイントネーションでした。例えば、私の読み聞かせを録音して聞いてみると、不自然なイントネーション部分がどうしてもあります。自分では、意識しているつもりでも、やはりどこかが不自然に聞こえます。それはイントネーションが理解できていないために、上げるべきでないところで上がったり、下がったりしているので、違和感があったのです。

■イントネーションを活かした指導

イントネーションは、低学年の子どもに指導するのは、やや難しい面があります。前にも書いたように、間と会話文がしっかり読めていれば、それだけでも十分だと私は思っているので、低学年の子にはあまりしつこくは指導しないことにしています。しかし、高学年では逆にこのイントネーションの指導が効果的な場合もあります。それは、子ども自身がイントネーションによる読みの違いを聞き分け、理屈も理解することができるからです。自分は音読が苦手だ、あるいは下手だと思っている子の場合、なぜ下手だと思うのかがはっきりしていないこともあります。何となく苦手意識があるというときは、このイントネーションの指導で、自分が何をどう変えればよいのかを明確にすることで、意欲が高まるかもしれません。

■ICレコーダーの活用

音読の指導では、ICレコーダーがとても有効です。特に高度な機能は必要ないので、試しに購入されることをお勧めします。音読指導に力を入れていこうと考えているなら、きっと元はとれるはずです。もちろん、ICレコーダーを使った指導は、イントネーションだけでなくてもかまいません。ただ、イントネーションの改善は本人に分かりにくい場合があります。録音した読みを再生して、「最初の方は、~のところで上がってるでしょう。2回目はそれがなおっているから、最初よりイントネーションがよくなってるということだね。」と指摘できます。
低学年の場合、比較的録音に抵抗が少なく、むしろやたらと「録音して」という子が出てくるかもしれません。できる範囲で希望をかなえてやりたいところですが、音読の改善を目指しているのであまり意図を持たずに録音しすぎてしまうと、後でどの読みを聞かせればよいのかが分からなくなってしまうので、その点は注意が必要です。問題は、高学年で録音を嫌がる子の場合です。

■録音を嫌がる理由

録音を嫌がる子に、無理に読ませて録音しても指導としての効果はあがりません。むしろ、ますます音読に苦手意識を強く持つようになる危険性があります。音読に取り組むのであれば、1回限りの指導で終わることはありません。長い目で見て、あせらず対応していきましょう。まず、自分の声を聞くのは大人でも嫌なものだということを理解しましょう。それを実感するためには自分の音読を録音し、それを聞いてみることです。

■録音を嫌がる子への指導

録音した自分の声にがっかりした経験のある方は、それを思い出せば録音をいやがる子の気持ちがある程度は理解できるはずです。無理強いせずに、録音することに慣れさせることを考えます。慣れさせるとは、例えば、以下のようなことが考えられます。録音に抵抗のない子にどんどんやらせて、指導し、上手くなるという例を見せる。そのとき、下手であることや失敗することは決して責められず、馬鹿にもされないことが分かる。グループやクラス全体での音読の録音を経験させる。実は、他にも下手な子はいるがその子たちは気にせず、録音し練習していることを認識させる。

■音読を変える

録音に抵抗がなくなってきたら、いよいよ慣れるための録音から、上手くなるための録音に入ります。大切なのは、「録音したおかげでうまくなった」「うまくなったことがよくわかった」という実感です。まず、分かりやすいのは、間です。題名と本文の間、会話文の前後、といった明確な部分をうんとあけることで、明らかに読みは変わって聞こえます。また、登場人物の理解による、会話文の読み方も、よくなる可能性が高まります。

■具体的にほめる

録音を聞いた場合、何となくでは自分がうまくなったのかどうかが分からないときもあります。「題名の後の間がよくとれている。聞いている人は、題名で色々想像したり、物語を聞く気持ちの準備ができるね。」「会話の前があいて、声も変わってるから、『会話だ』とすぐに分かる。」などと、指導したことにそって具体的にほめます。特にイントネーションについては、上手くなったとしてもそれを聞き分けるのが難しい面があります。「1回目のときは途中で上がってしまっている。2回目では、最初に上げて、だんだん下がっていくのができている。」と、よくなっている部分をはっきりと指摘してやることで他の子も少しずつ理解できるようになっていきます。

■効果的の活用のために

人数が多いとき、1回の授業で一人に2回録音しているとなかなか全員回ってこなくなってしまいます。班ごとに録音する日を決めたり、単元の最初の方で1回目の録音をし、充分練習してどの子もうまくなった後半で2回目の録音をするなど、工夫が必要になってきます。ちなみに、クラス全体に聞かせるときにはICレコーダー本体からの音量は小さすぎます。私は、家で使っていたパソコン用の古いスピーカーと100円ショップで買ったミニアンプをICレコーダーにつないで、使っています。教室にいつもプロジェクターを置いている人はこれにつないでスピーカー代わりにしている場合もあります。

■説明の声を入れておく

それと、録音したものが一つずつレコーダーの中では、ファイルとして独立しています。日付が自然にファイル名になるものが多いはずです。その意味では、かなり整理・保存には便利にはなっています。とはいえ、少し録音をためると、誰の何のときの音読だったかすぐに分からなくなってしまいがちです。そこで、録音のときにあえて、私の声で、「山本さん、1回目のすらすら読みです。どうぞ。」「田中さん、2回目の上手読みは、会話の間に気をつけてどうぞ。」などと、入れるようにしています。これで、少なくとも再生すれば、何の音読だったかは、分かります。

■録音の使い方

録音した音読の使い方の原則は、その場で聞き直すということです。時間がなければ、「一番上手だったのは誰かな?」などと子ども達の反応を見て、再生する子どもを選び、よかった点を指摘します。劇的に変わっているはずですから、「すごいねえ。」「上手くなってるよね。」といったプラス評価ができるはずです。もちろん、事前にファイルがどれかを確認しておかないと授業中に無駄な隙間時間を作ることになってしまいます。もう少し長い目でみると、3学期に、「1学期のころの音読を聞いてみようか。」といった使い方もできます。また、私が2年連続で1年生を担任したときは、「これは、前の1年生の音読です。」と「たぬきの糸車」の音読を聞かせたこともありました。次は、読み聞かせについてです。私は、音読指導と読み聞かせをセットで考えています。

3 執筆者プロフィール

岡 篤(おか あつし)先生
1964年生まれ。神戸市立小学校教諭。「学力の基礎をきたえどの子も伸ばす研究会(略称学力研)」会員。硬筆書写と漢字、俳句の実践に力を入れている。(2017年5月3日時点のものです)

4 書籍のご紹介

『読み書き計算を豊かな学力へ』2000年

『書きの力を確実につける』2002年

『これならできる!漢字指導法』2002年

『字源・さかのぼりくり返しの漢字指導法』2008年

『教室俳句で言語活動を活性化する』2010年

5 編集後記 

自分でも気づきにくいイントネーションの変な部分や間は録音で改善できます。
音読の指導を実践されている先生方も多いと思いますが、是非今回紹介した実践をとりいれてみてはいかがでしょうか。

(文責・編集 EDUPEDIA編集部 福山浩平)

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