小学校で植物を育てる「猛暑・虫害・土づくり」 ~ 教師も楽しい理科実験

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失敗

 今年、ホウセンカとマリーゴールドを育てるのに失敗しました。
どの学年でも様々な植物を育てて、ほとんど失敗をしなかったので、とても残念な気持ちでいっぱいです。今年は海の日を含めた3連休があって、そこは休日出勤して水を撒いてなんとか切り抜けたのですが、夏休みに入った直後の土日、まだ家に持って帰っていなかった約20個の植木鉢の半分が修復不可能なぐらいにやられてしまいました。夏風邪をひいて、休日出勤ができなかったのが悔やまれます。

植物を育てるにはとても時間がかかりますし、育てるノウハウもわからなかったし、特に植物に興味がなかったので、教師になりたての頃は仕事として植物を育てるのが辛かったです。しかし、子供たちと農作業をし、失敗を含めて経験を積んでいくうちにだんだん植物に愛着がわくようになってきました。今回の失敗は興味深かったので記事にして記録しておきます。

植物を育てるのがあまり教師の負担にならないように、そしてできるだけ失敗を回避できますように。

小学校で扱う植物は育てやすい?

小学校で扱う植物がどうやって決められているのかについては、よく知りません。例えば学習指導要領3年生理科では、

 「植物の育ち方」については,夏生一年生の双子葉植物を 扱うこと。

と記述されています。何を植えるかに関しての指定はしていません。それぞれの学習(実験・観察)の目的に合ったものを育てればよいということでしょうか。どの教科書を見てもほぼ同じような植物が載っていて、実験や観察の対象として扱われています。「小学校の理科教科書に載っている植物は育てやすいものが選ばれている」と、先輩の先生方からよく聞かされましたし、自分が様々な植物を育ててきた経験からもそう思います。あまり植物が好きでない私でも、失敗をしたことはありません(今年が史上最大の失敗です)。

 12年:サツマイモ・ヒマワリ・ミニトマト(12年は生活科)

3年:ホウセンカ・マリーゴールド

4年:ヘチマ・ゴーヤ

5年:インゲン豆

6年:ジャガイモ・ホウセンカ

あたりが教科書に載っていることが多く、私は今まで教科書に素直に従ってこれらを育てることがほとんどでした。学習園が広いときには、ヒョウタンやナス、ビオラ、オクラ、コメなどを育ててみたこともあります。食べられる植物は子供たちには好評です。

ホウセンカとの戦い ~ 土・虫・暑さ

以前在籍していた学校で一人が植木鉢一鉢を所有して6年間をかけて毎年、植物を大事に育てるという取り組みをやっていました。なかなか良い取り組みです。今年は転勤があったことも影響して色々と事情があったため、一人一鉢は諦めかけたのですが、子供たちが育てたいと言うのでチャレンジしてみました。

「水をあげなくて枯れたら、それは自分の責任だからね。責任をもって育ててください。」

「とは言うものの、水をあげていない隣の植木鉢の土がガチガチに乾いていたら、それはお情けで助けてあげてね。」

と、子供たちには話をしました。

今年の3年生はホウセンカとマリーゴールドを育ててみました。6年生が顕微鏡で気孔を観察するのにも使えます。ところが、これまでになくうまく育てることができませんでした。

  • 土が悪かった・・・学習園から取った土が良くなかったようです。連作したわけではありません。肥料を十分に混ぜ込んだはずだし、苦土石灰を撒いて弱酸性を目指しました(適量だったかどうかは不明)。ところが、うまくいかない。植物を育てるには土づくりが成否を分けるのに、この段階で失敗してしまいました。子葉や本葉がやっと出てきたところで成長が止まったままになってしまいました。残念。
    仕方がないので子供たちに「ごめんねー」と謝り全員の鉢から教師の作業でもう一度作り直した土に、根を痛めないように移植しました。すると、1週間もせずに育ち始めました。色もよく、元気になってきました。改めて、「土づくりは大切」。
  • イモムシが、ヨトウムシが・・・ところが、今度は幼虫が付き始めました。セスジスズメという黒色をした蛾のグロテスクな幼虫です。幼い葉が好物であるらしく、前日に点検した時にはいなかったのに、次の朝には本葉をほとんど食べつくすという虫害です。ホウセンカを育てるのは多分、3回目ぐらいです。これまではワンシーズンで1匹ぐらいしか見かけなかったのが、私のパトロールだけで20匹以上を退治しました(子供もパトロールしていたので、もっといたようです)。半分以上のホウセンカが虫害に遭い、4分の1ほどが再起不能となる大惨事です。
    マリーゴールドも、(犯人は特定できませんでしたが)たぶんヨトウムシにやられました。こちらは4分の3ぐらいがやられました。ここまでやられるのは見たことも聞いたこともありません。こんな事態に備えて、プランターで20株ほどの予備を育てていたので、ほとんど葉がなくなってしまって残念そうにしている子供たちに分けてあげることができました。予備を育てておくのは大事です。
  • 猛暑・・・土と虫の対策をしてこれでやっと育つかなと思った頃に、猛暑がやってきました。「自分の責任で水やりをしなさい。先生は水をあげないからね。」と突き放しつつ、毎日、武士の情けで水をあげていました。ところが。今年の猛暑は相当きつく、夏休みに入ってすぐの土日だけでほとんどのホウセンカがしなびてしまいました。少し葉がしおれることはあっても、ここまで残念な状況は初めてです。こうなってしまうと復活は難しいです。

昨今の暑さでは学校での植物育成は難しいのかもしれないです。1年生の時に子供に買わせる青色のプラスチック植木鉢では保水力に限界があります。

密を避けて間引きしたホウセンカを移植した中で、プランターが足りなくなって結局小さいプランターに密に移植したホウセンカもこの通り。

ついでに実験も兼ねて小さい植木鉢(700ml程度)に間引いたマリーゴールドとホウセンカを移植してみました。マリーゴールドは半分ほど生き残りましたが、ホウセンカは1個を残して全滅でした。残った1個も10cm程度しか育ちません。マリーゴールドより小さいです↓↓↓。植木鉢の大きさ(≒保水力)は、大事です。

ヘチマも実験的に同じ植木鉢(700ml程度)で育ててみました。なんとか蔓がネットに巻き付いたものの、とても貧弱で、すぐに弱って枯れていきました。学習園に植えた方は葉が大きくてネットを駆け上がるようにして育ち、棚を覆いつくしています。保水力(大き目の植木鉢)が大事なことがよくわかります。

大きいプランターで育てたホウセンカは、元気です。

植物は根の部分が土から上の部分と同じぐらいの張り具合になるとよく聞きます。しっかり根を張らないと大きくなれないのです。

2年生が植えていたミニトマトも子供の植木鉢ではなかなか育たず、ひ弱い茎で小さい実がなるに留まっています。こちらも苗を植える時期が遅れ、学習園の悪い方の土を使ったそうです。

早い時期に学習園に植えたミニトマト↓↓↓は巨大になって実が鈴なりについているのに・・・。

それでも、トマトが大好きなカラスがやってきて、実が赤くなったとたんに持って行かれてしまいます(鳥害)。農業って、難しいのですねえ。今回の暑さにやられた失敗から、

植物には十分な土と間引きが必要であり、間引きは肥料や水の取り合いを回避する効果がある。

ということがよくわかりました。水分の供給の重要性を子供たちといっしょに学習できたと思います。

不思議なことに同じように育てても、猛暑の中しなびずにきりっと立っているホウセンカもありました。種を取った後に抜いて根のはり具合を調べて、倒れてしまったものと比べてみようと思います。

猛暑の夏が来るまでに

それにしてもこんなに残念な結果になったのは教員人生初です。失敗から学ばないといけません。

  • 諸事情があって種を蒔くのが遅れたのは良くなかったです。昨今は梅雨が明けるや否や猛暑が来るのが普通になっています。プロの農家だって野菜作りがうまくいかずに値上げを招いています。教師は素人なのだから、猛暑対策としてなるべく早い時期に種を蒔くという意識を持って授業を進めないといけませんね。涼しい地方にある学校なら大丈夫かもしれないけれど、暑い地方は急ぐべきです。7月に入ると土日の2日間、水をあげられないことが致命的になります。

  • 種を蒔くのが遅れたせいで7月初めに蕾さえひとつもついていませんでした。本当は7月初めの懇談会中に保護者に持って帰ってもらいたかったのですが、あまりにも育っていない状態で「持って帰ってほしい」というお手紙を出せませんでした。早い時期に蒔いて、梅雨明け前には持って帰らせ、休日も家で水をあげるようにすれば違う結果もあったかもしれません。※ 野菜を植えるときは始業式直後から始めてもいいかも知れません。早く育てれば学期末に実ができて、学校でワイワイと収穫を楽しめます。
  • 土づくりに種まき培土を使う・・・児童数が多いと予算が大きくなってしまいます。予算に余裕があればこんな贅沢もありかもしれません。
  • 児童水撒き装置を設置する・・・これも予算の問題が…
  • 土日の前に天気予報を確かめて、雨が降らないようであれば日陰に避難させておけばよかったかもしれません。せっかく一人一鉢で可搬性は良かったのに・・・後悔先に立たず。
  • そもそも草丈が大きいホウセンカを育てるには児童の小さい鉢では難しいのかも知れません。大きいプランターのホウセンカが生き残っているのを考えると、保水力の問題は大きいのでしょう。

失敗から学ぶ

農業や園芸は経験値がものを言います。土づくりの時点で、どれくらいの㏗がいいのか、肥料をどのくらい入れるのかなど、素人の教員に多くの課題をうまくクリアするのは難しいです。学校に1人は園芸に精通している人を育てるべきだと思います。イニシアチブをとってアドバイスをしてくれる人。離農が進み切った都会では年配の教員でないと知識・経験に乏しく、分かっている人がどんどん少なくなっています。

子供への指示も難しいです。いつも、

「たくさん土を入れないといけないよ」

と指示をするのですが、いつも土の量が少なすぎたり、はり切って土をぎゅうぎゅう詰めに固めて入れてしまったりします。

「満タンに、ふわっと入れてあげてね」

にすると少しはましになります()。満タンにしてもふわっとなら、水を入れるとかさが減りますから。

失敗も学びにはつながりますが、できれば花を咲かせてやりたいと思います。今回の失敗からの学びは、私にとっては有益でしたが、子供にとってホウセンカを育てるのは初めてでしょう。もしかすると、一生に一回きりになるかもしれません。

今後は、猛暑は毎年やってくることを想定して、早く種を蒔いたり苗を植えたりする準備に取り掛かるようにしていきたいです。

植物や天気に関する単元は屋外の自然を相手にしているので、授業の進度の都合に合わせて育ったり、都合よく雨が降ったりしてくれるわけではないのが難しいです。教師が知識を共有しながら、声を掛け合って作業を進めて伝承していかなくてはならないと改めて思いました。大変ではあるのですが、花咲く喜びを教師同士、子供同士で分かち合えるといいですね。

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