実験結果が教えたい内容の反証となってしてしまう
4年生で学習することになっている「天気と温度変化」では、
- 天気によって気温が違うことがある。
- 気温の測り方について・・・温度計に直接日光が当たらないように、地表から2m~1.5mの高さで、風通しの良いところで測定する。
- 晴れ・曇りの日の区別は雲の量で決めている(晴の日は雲の量が空全体の8割・曇りの日は9割と10割という区分については5年生の学習事項)。
- 晴れ・曇り・雨の日の気温の変化を折れ線グラフに書く。
- 晴れの日の午後は気温が上がり、雨・曇りの日の気温の変化は少ない。
といった程度の事を押さえておけばテストの点はそこそこ取れます。勿論、テストのために学習しているわけではありません。これらの学習内容を元にどう子供たちが興味関心を持って学習活動をするのかを考えねばいけません。ところがこの単元、あまり楽しくはない展開になりがちです。
温度の測定を子供たちに任せられるとよいのですが、1日中、1時間ごと(授業中)に温度を自分たちで測定するのはあまり現実的ではないです。早朝と夕方のデータを取るのがむずかしいですし、「1日中、晴れ・曇り・雨の日」を待たねばなりません。しかも、「晴れ・曇り・雨の日」の特徴がグラフに顕著に表れるような1日は思いのほか少ないです。天気が授業の日に合わせてくれるわけではありません。天気予報を見てグラフに顕著に表れるような日を予測するのも困難です。そんな日を待っていると観測する期間がとても長くなってしまいます。
そうすると、理科実験あるあるの「実験結果が教えたい内容の反証となてしまう」ような事態となり、子供たちがとても混乱してしまいます。苦労してよい結果を得られたとしても「1」や「5」の内容は小学4年生にとって経験上分かっていることなので、それほど楽しい活動ではありません。「雨や曇りの日が晴れの日より気温が低い」という知識を実験から得ても、あまり感動はありません。それでは子供たちが悲しくなってしまいます。
データはネットから顕著な日を選ぶ
そこでバッサリ、「晴れ・曇り・雨の日」を待つのは諦めます。子供が気温を観測するのは1日(1回)ぐらいにしぼって朝・昼・帰り際に3回やればいいと思います。とりあえず、活動はさせる。後は、グラフにするデータをネットから取得するという方法を取ってみました。
MAX35人の子供が1つしかない百葉箱を1時間おきに覗きに行くというのも現実的ではありません。そもそも百葉箱を撤去していたり、百葉箱の中身が整備されてなくて湿度計や気圧計・自動温度記録計は壊れていたりします。百葉箱の中身はYoutubeの動画にいいものがありますので、それで紹介すればよいと思います。
1日の気温の変化は「tenki.jp」に数年前からのデータが蓄積されています。そこから折れ線グラフに顕著に表れやすい1日中「晴れ・曇り・雨の日」のデータを選びます。できれば授業日に近い日を選んで利用するといいと思います。大雨の日や、運動会の日でずっと晴れていた日など、子供の記憶に残っている日が1日でも入っていると子供も少しは身近に感じるでしょう。
子供に「晴れ・曇り・雨の日」3日分のデータとグラフを3つつけたプリントを配ります。エクセルで作成したプリントをつけていますので、よろしければご利用ください。
このプリントを使えば、7割程度の子供がそこそこ正しく「晴れ・曇り・雨の日」3日分のデータを折れ線グラフに表すことができました。15時間分のデータ3日分をグラフ化するのはちょっとしんどい子供もいました。小数を四捨五入して整数にした方がよかったかもしれません。
エクセルに載せているデータは「tenki.jp」から2024年度の授業日から1か月以内の3日間で、「晴れ・曇り・雨の日」の特徴が顕著に出ているものを選んでいます。できればtenki.jpから、利用する地域の最近のデータを取りこんでお使いください。
エクセルにデータを取りこんでいるので、下のようなグラフが出来上がるように作りこんでいます。子供が折れ線グラフを3つ完成させた次の理科の時間に配ってあげるといいと思います。
「じゃあ、最初からこれを配ったらよかったのに!!」と言う子供もいましたが(笑)、それはそれで、「君たちは折れ線グラフを書く練習ができてよかったんだよ」と返しました。
楽しい理科実験
以上、「楽しい理科実験」と銘打ちながら、あまり楽しくはない取り組みだったかもしれません。しかし、文部科学省が求めている内容が、
ア 次のことを理解するとともに,観察,実験などに関する技能を身に付けること。
(ア)天気によって1日の気温の変化の仕方に違いがあること。 (学習指導要領理科)
となっていて、これを教科書会社もあまり面白いアプローチができないのだろうと思います。闇雲に長々と活動をさせた挙句、結果が出なくて混乱させるのはかわいそうです。
すっきりと折れ線グラフに違いが表れ、「あー、気温の変化にはこんな特徴があるのか」と分かった方が楽しいのではないかと思います。ネットから選んできたデータを使うことで授業が速く進むので、下記の4つの天気情報のサイトを紹介してタブレットで見せてあげる余裕ができました。特に雨雲レーダーは見せてあげるといいと思います。天気のことに興味を持てるようになると、5年生の天気の学習の時にまたその経験・知識が役に立つと思います。
日本気象協会 tenki.jp【公式】 / 天気・地震・台風
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