はじめに
大日向小学校は、日本の学習指導要領に則って教育活動を行う「一条校」として初めてのイエナプランスクールです。
イエナプランとは、ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが創始した、「一人ひとりの子をその子らしく、最大限の可能性を引き出して育てる」ことをビジョンとした学校の土台となる考え方を指します。
前編では、イエナプランの特徴的な学びである、子ども一人ひとりが課題に向き合い、計画を立てて学ぶ「ブロックアワー」、子どもたちが協働で探究をする「ワールドオリエンテーション」、自己表現を学ぶ「全校催し」の様子について紹介します。
本記事は2025年6月27日に行った、学校見学やインタビューを基に記事化したものです。
後編では、大日向小学校の先生方から伺った、これまでの大日向小学校の歩みや学びの環境について紹介しておりますので、ぜひ、併せてお読みください。

ブロックアワー
子どもたちが自分で学習計画を立て、自律的に学ぶブロックアワーという時間があります。これは、自分の課題を1週間の中で計画し、学びを進めていく時間です。

子どもたちはスケジュールと今週の課題から取り組むことを計画し、振り返りを行います。
ブロックアワーでは、子どもたちは学習をまとめ記入するカードを作成したり、グループリーダー(教員)に相談したりしながら、自分のペースで学びを深めます。グループリーダーは「インストラクション」と呼ばれる導入でおさえるべきところをおさえていきます。その上で、例えば、引き算でつまずいている児童がいれば、「もっと分かりやすい方法がないか」「どうやったら解けるか」などを一緒に考え、子どものプロセスを見守り、サポートすることに重きを置いています。
今週の課題が終わって追加課題に取り組んでいる児童や、課題を終わらせるために追い込みをしている児童など、同じ教室空間でそれぞれ異なる作業や進捗で学んでいる様子が見られました。
中学年の図工の時間
学習指導要領を基に、図工や音楽などの時間も設定されています。図工の授業でも、教室空間を共有する子どもたちそれぞれが異なる作業や進捗の学びを進めている様子が見られたので、合わせて授業の様子をご紹介します。
まず、サークルに集まって、グループリーダーによるインストラクション(導入)が行われました。
子どもたちは半円状に並んでいる長椅子に座り、スライドが表示されるテレビとグループリーダーを囲って話を聞きます。グループリーダーは、この時間は紙粘土で「想像の木」を作る活動(仕上げ)に取り組むこと、仕上げのポイントなどを伝えます。
子どもたちは、インストラクションの後、それぞれの机で作品づくりに移っていきます。
子どもたちは時に自由に席を移動し、友達に色を混ぜるコツを話したり、飾ってある過去の作品と自分が今作っている紙粘土の色を見比べたり、それぞれの方法で自分の作品に向き合っていました。

ある児童は、「この赤を作りたい!」と、自分が作った粘土と見比べながら紙粘土の色を作っていました。
ワールドオリエンテーション
ワールドオリエンテーションは、「イエナプランのハート」と呼ばれる学びです。
大日向小学校のワールドオリエンテーションは、子どもたちにとって身近な暮らしの中にある題材を使って、協働で探究します。探究の時間は月曜日と木曜日にそれぞれ90分ずつ行います。「コミュニケーション/作ること・使うこと/共に生きる/私の生/技術/めぐる1年/環境と地形」といった7つの大きなテーマから、子どもたちは1年間ですべてのテーマに取り組みます。
ワールドオリエンテーションの学びは、「刺激」から始まります。グループリーダーは、子どもたちがテーマや題材に興味をもち、問いをもてるよう、インストラクションを行います。例えば、大日向小学校の校庭を題材にした際、「この写真のものは、校庭のどこにあるかな?」というクイズが子どもたちに出題されました。写真を見てみるとそれは、校庭にあるものをズームアップした写真たち。子どもたちは、「毎日見ているはずの校庭なのに、まだまだ知らないことがあるのか!」という気づきを通して、違う視点で校庭を見つめるようになり、関心を高めていきます。
次に、子どもたちから問いを集めます。取材に伺った際、下学年では、「人と人とが出会う場所」というテーマで、「さくほっこ」という大日向小学校の子どもたちも通っている児童館を題材として学びを深めていました。

問いを出していきます。

一人ひとり付箋で書き出していきます。
子どもたちは、自分たちで選んだ問いについて調べる計画をたてていきます。調べ方やまとめ方は学年やテーマによって異なり、写真のように子どもの意見を模造紙にまとめて掲示する様子も見られました。

グループリーダーは、教室にテーマに関連する本を置いて子どもたちが学びの道具を取り出しやすくしたり、子どもたちが学びを深める環境づくりを行います。
子どもたちの学びの記録・保管を大切にしており、例えば、「全校催し」では、ワールドオリエンテーションの学びとその過程を発表する機会も設けられています。
「全校催し」
全校催しとは、発表やイベントの機会を通して互いの学びを共感し合う、「催し」の一つです。1年生から6年生までの子どもたちやグループリーダーだけでなく、保護者も参加します。
取材日には、上学年のワールドオリエンテーションの中間発表が行われました。
中間発表の前に、音楽クラブによるギター演奏や、誕生日を迎えた児童やグループリーダーをみんなで祝う時間もあり、学年・大人子どもの隔たりなく催しに参加している様子でした。
ワールドオリエンテーションの中間発表では、テーマについて探究した学びの過程と分かったことを発表します。「自然のめぐみと生きるとは?」という上学年のワールドオリエンテーションのテーマのもと、にわとりチーム、金魚チーム、とりチーム、米チーム、小麦チーム、イチゴチーム、きゅうりチーム、さつまいもチームの8つのテーマごとにチームに分かれ、それぞれの探究で発見したことを共有します。
発表の時間では、それぞれのテーマに関心のある子どもや大人が自由に集まり、発表を聞き、質問を投げかけることで、学びがさらに深まっていきます。
発表形式は様々で、ポスターを用いて4人で発表するグループや、スライドを使って2人で発表するグループもありました。
スライドの漢字に振り仮名をつけて下学年の児童もスライドを読むことができるようにしたり、クイズを取り入れて発表を聞く人も一緒に考えたり、様々な仕掛けや工夫がみられました。
編集後記
大日向小学校を訪問し、子どもたちの姿を見て感じたのは、「同じ空間を共有しながら、それぞれの方向を向いている」「自分の言葉と考えを持っている」ということです。特に驚いたのは、全校催しの発表の時間に大人や子どもたちからの質問に対して、自分の言葉を紡ぎ出すスピードの速さと、言葉が本人の身体や感情とつながっている(大人の言葉をかりそめで使っているのではない)印象を受けたことでした。子どもたちの一日を、その成長を、もっと知りたいと思える時間となりました。(編集・文責:EDUPEDIA編集部 下園絢音)
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