いじめの定義を小学生にわかりやすく教えよう

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いじめとは

子供は、痛くない程度に少し叩かれても「いじめられた」と言う事があります。「いじめ」の定義は一般的に『本人が「いじめ」と感じれば「いじめ」である。』と言われるようになっています。

文科省は、「いじめ」の定義について、ホームページの「いじめ防止対策推進法」の中で、次のように記述しています。
—————-
第二条 この法律において「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
いじめ防止対策推進法

平成25年法律第71号
—————-

文科省としては公式見解を出しておかないと、後々裁判になるケースがあるので、上記のような定義になるのでしょう。

ところが、「心身の苦痛を感じている」と言っても人それぞれで、あいまいな部分が多いというのが現実でしょう。ささいなトラブルまでいちいち「いじめ」と認識していると、本当に陰湿な「いじめ」との区別がつかなくなっています。「いじめ」を、重大な事件として受け止めさせるためにも、「いやなことをされた」のか、「いじめられた」のかを区別して話すように子供に教えるとともに、どういうときに「いじめ」なのかを定義しておく必要があると思います。

文科省の定義に基づいてしまうと、3項目を満たしていないいじめを網羅できなくなってしまいます。これも困ったものです。現場では、「当該行為の対象となった児童」が心身の苦痛を感じているいないに関わらず、早期に手を打たなくてはならない場面があります。

小学生に対して定義づける

そこで、私はローカルルールとして、いじめを次のように定義して早い段階で子供たちに告知します。

  1. 本人がどんなにがんばってもすぐには直らないことを言った時です。例えば、家族の悪口、例えば、体のことです。
  2. 長く(1週間ぐらい?)いやなことをされたときです。
  3. たくさんの人数に1人や2人がいやなことをされたときです。
  4. 力の差があって、強い方が弱い方にいやなことをしたときです。
  5. ひどいやり方をしたときです。

これらのことが、「いじめ」であり、絶対にしてはいけないことだと、4・5月の早いうちに話をしておきます。何かトラブルがあったときに、「いじめ」られた方にも、「いじめ」た方にも、そして周囲の子供たちにも、「4人がかりでA君をしつこくけったのでしょ。それはいじめです。」と、宣告することができます。大切なのは、当人たちだけではなく、周囲の子供たちが「いじめ」を許さない態度をとり、許さない雰囲気を醸し出すことです。そのためにも定義づけは必要です。こうして定義することを「いじめを限定的に定義している」と批判する向きもあるようですが、そうではなく、「本当に酷ないじめ」に本人や周囲が早く気がつき、早期発見・早期対処を可能とするための手立てであると考えてください。

いじめへの対処を示しておく

そして、「いじめ」があったときには先生・学校がどのような対処をするかをはじめから明確にしておくべきでしょう。

  1. いじめは絶対に許しません。なくなるまで先生・学校が許しません。
  2. まず、先生が両方に話を聞きます。本当のことが分かるまで聞きます。
  3. 【物理的な距離を置く】いじめた人といじめられた人を離します。席を離します。離れるのは、いじめた側です。当分の間、近づかないで下さい。
  4. それでもいじめが続くときには、いじめた人の家の人に話をしに行きます。
  5. それでもいじめが続くときには、教頭先生に話しに入ってもらいます。
  6. それでもいじめが続くときには、校長先生に話しに入ってもらいます。

実際には根が深く数年間続くいじめが起こっている場合、根絶は難しいものです。保護者や担任まで巻き込んで感情的になっている場合や、中途半端ないじめの制止がかえっていじめをエスカレートさせるケースも少なくありません。

いじめについての考察は、下の著作が鋭い所をついていると思います。

いじめの構造—なぜ人が怪物になるのか (講談社現代新書)内藤 朝雄

対処より予防を

どろどろとした負のエネルギーを他のものに向けさせるサイクルを学校・クラスの中に作っていくマクロな視点が大切ではないかと思います。いじめ関係ができてしまってからの対処はたいへんですから、予防をしっかりしておくことが必要でしょう。例えば異学年間交流をしておけばクラスで居り場がなくて邪魔者扱いされる子供でも、下の学年の子供と遊ぶという大儀を持って休み時間をやり過ごすことができます。このように、相性の悪い相手との時間の共有を減らすという現実的な考え方も(やむを得ず)必要な場合もあるのではないでしょうか。

それにしても、いじめへの対処は難しい問題であるのに、担任まかせであったり、はっきりした対処法が確立されていなかったりするのは困ったものだと思います。担任次第で良くも悪くもなるという状況ではなく、学校ぐるみで取り組む姿勢・組織作りが必要だと思います。

いじめにどのように対処するかについては、
いじめへの対処
をご参照ください。

(2022年7月25日 タイトルを「いじめの定義~何がいじめなのかをクラスで共有する」より変更)

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