学習したことを生かして (椋鳩十作 「大造じいさんとガン」)

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目次

1 単元について

本学級の児童は、全体的に心が優しく、また、感性が豊かである。そのため、物語などの読み物や道徳の資料などを読むと、様々な感想が出されてくる。また、協働学習による教材の読み取り活動については、説明文では「サクラソウとトラマルハナバチ」 「千年の釘にいどむ」 「ニュース番組作りの現場から」において、段落ごとに要旨を読み取り分かりやすくまとめること、自分たちの付け足しの説明や考えなどを織り込みながら発表することを経験してきた。物語文では「わらぐつの中の神様」において、児童一人一人が読み取ったことを整理していくつかの課題を作り、友達と意見を交わしながら読みを深め、全文に目を向けながらその課題に沿って読み込んで物語を深く味わうことを経験してきている。

本単元は、小学校学習指導要嶺「国語」第5学年及び第6学年の内容C 「読むこと」ウ「登場人物の心情や場面についての描写など、優れた叙述を味わいながら読むこと。」エ「書かれている内容について事象と感想、意見の関係を押さえ、自分の考えを明確にしながら読むこと。」を受けて設定されたものである。

また、本単元に関わる3つの達成目標は、 <読むこと> 「文章全体から、書き手の述べたいことを読み取ることができるようにしましょう。」であり、場面構成や展開、登場人物の心情の変化、風景描写などに注意を払いながら読みを進め、作者が物語に込めた思いや読者に伝えたかったことを読み取るようにするということである。
5学年という時期は、登場する人物像について、心情や性格、考え方などをより多面的にとらえることができるようになってきている。したがって、今まで学習してきたことをもとにして、人物の心情を表現や叙述と関係付けながら、自分の読みを確かなものとして高めていきたい。

このような点から考えて、 「大造じいさんとガン」は、明快な場面構成、展開にそって変化する心情、美しい情景描写の表現、作者の込めた思いなどがとらえやすく、学習のねらいを達成するために適した教材文である。
また同時に、 「大造じいさんとガン」は、児童の心をつかむ教材でもある。この物語は、作者による取材時の様子の説明から始まり、はっきりとした場面の転換、大造じいさんのガンに挑む姿、知恵を働かせたり巧みに戦ったりする頭蘭としての残雪、残雪の堂々とした姿、憎んでいたはずの残雪を手当てして放す大道じいさんの心情の変化などについて、美しい自然描写を交えながら表現している叙述は児童の感受性に強く訴える力を持っており、児童の心を揺り動かしながら興味・関心を引き出す優れた作品である。

本単元では、大造じいさんの残雪に対する接し方や心情の変化の細かい描写、残雪威厳ある態度、情景を描き出す美しい表現などに着目させながら学級全体で読み取りを行い、作者の伝えたかったことに迫っていく。

まず、児童の興味・関心にしたがって課題を立てさせ、それを整理してグループを作る。このグループでの協働による読み取りが本単元の学習活動の中心である。ここでは、各課題に沿って繰り返し読み込ませ、自分たちの意見を明確にもたせることが大切であると考えている。

そのためには、一人一人の読み取りを大切にしながらも、グループ内での話し合う時間を多く取り、意見交換をすることによって考えを練り上げていくことに重点を置く。そして、グループごとに深めたことを伝えあうことによって今後の読みをより豊かなものにし、自ら考える力を育てていきたい。

2 本単元における協働学習

第5学年では、 「個々の読み取りをもとにして話し合い、読みを深める。」 「課題にあわせて、必要な部分の読み取りを行う。」を重点にしている。話し合うことによって友達の読み取りと比較しながら自分の意見を見直したり、グループで課題を分かりやすく伝えるためのまとめを作ったりするなど、協働で読みを深め、学習の質を高めることをねらっている。

協働学習に関する日常的な活動としては、朝のチャレンジタイムを中心にして、二人組などによる1分間スピーチ、それを聞き取って内容を紹介するというコミュニケーション能力を高める活動などに取り組んでいる。
また、他者と学びあう活動として、様々な教科でグループによる話し合いの場面を意図的に授業に取り入れている。指導にあたっては、以下のような観点を意識させながらグループ活動に取り組ませている。

(本単元では、 ④及び⑤の観点を中心に指導)
(丑話し合いに際して、事前に自分の意見をまとめる。

②自分の意見をはっきり述べたり、友達の意見をじっくり聞いたりする。

③一人一人の意見を大切にしながらグループとしての意見をまとめる。

④集約された意見を手短に、且つ、分かりやすく発表する。

⑤他のグループの意見を自分の意見と比較しながら聞く。

⑥学級全体の意見の一致を図る。                    など

今まで説明文や物語文の学習では、学級全体による読み取りや児童一人一人による読み取りをもとにしながら、課題に沿って文章を読み直し、内容を整理・分析してきた。本単元では、グループによる読み取りとまとめをよりよいものとするために、繰り返し教材文を読み込み、課題に対する読み取りや発表の構成について協働学習によって深めあう活動に取り組んでいく。

本時では、協働学習を取り入れることによって学習の目標をより効率的に達成させ、より深い理解を目指すため、次の手立てを取る。

①課題解決のために小グループを構成し、協働で読みを深めていく。 (前時∼)

②課題に迫る3つの視点をそれぞれA ・ B、 2グループずつ担当させる。 (前時∼)

③同じ課題のグループ同士で学習を深めあう。 (本時)

④ペアグループからもらったアドバイスをもとに、発表に向けてまとめの見直しをしていく。(本時∼)

協働で行う学習は、その活動自体が学習の目的ではなく、協働学習することは相互に学習を高めあう手段であると考えており、本単元でもそのスタンスに立って指導にあたる。

つまり、本時で行う協働学習を通して、個々の読み取りや自分たちのグループの読み取りを、他のグループからアドバイスをもらうことによってよりよい読み取りにしていこうというものである。このような協働の活動により、本単元では、友達の読み取りを参考にしながらの個々の読み取り、課題に迫るための視点に注目した読み取りの能力を高めさせていく。

なお、本発表会はA・ B、各グループごとのポスターセッションとし、同時進行でそれぞれのグループで発表を行う計画である。

3 単元の目標と評価基準(◎は重点目標)

4 指導と評価の計画



5 本時の学習指導

(1)目標

◎ペアグループ同士の話し合いを通して、読みを深めることができる。
* 読み取ったことや自分たちの考えを分かりやすく伝えることができる。
* 自分たちのまとめと比べながら発表を聞き、疑問に思う点や分かりにくいと感じた点について質問することができる。

(2)評価指標

(3)知の定着を目指す協働の視点

本時のミニ発表会は、発表すること自体が主となる授業ではなく、質問やアドバイスをしあうことによって発表をよりよいものにすることが主眼である。そのため、本時のねらいを十分に理解して分析的にペアグループの発表を聞くことが必要とされる。説明が分かりにくかったり、読み取りが不十分であったり、根拠がはっきりしなかったりしているような部分について質問していく。

発表側のグループは、質問されたことについてとりあえず回答するとともに、次時の手直しの活動で再度その部分の読み込みを行い、よりよい発表となるように話し合っていく。

また、聞き手側のグループは、改善点を批判的ではなく協力的にペアグループに伝えるとともに、改善の工夫などを一緒に考えることによってアドバイスの賃も高めさせていきたい。

なお、話し合いによっては新しい視点が盛り込まれることも予想されるため、実際に発表を手直しする時間は次時の活動とした。

(4)展開  協働の視点

5 単元の評価指標

6 指導計画

6 講師プロフィール

東松山市立松山第一小学校 岩本教裕先生

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