1 概要
この実践は(株)教育同人社の許可を得て、「はなまるサポート」の学習指導ポイント一覧の実践を転載しています。
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2 はじめに
本記事は、小学校3年生「物と重さ」・4年生「ものの温まり方」・5年生「電流の働き(電磁石の働き)」・6年生「水溶液の性質」の学びを深めるための事象提示や実験の様子を載せています。
3 3年「物と重さ」A区分 粒子(粒子の保存性)
概要
学習のねらいは
①物は形がかわっても、重さは変わらない。
②物は体積が同じでも重さの違う物がある。
この単元は、今回の指導要領で初めて導入されました。3年生の物の重さと物の形や体積との関係に対する素朴な実感とそこに生ずる疑問を大切にした単元構成にしていきたいですね。
知識の系統としては、「粒子の保存」ということで5年生の「物の溶け方」における質量保存の概念を身につける土台となります。
事象提事・・・・
ここでは、物や変化の要因が多様に出るように、多様な事象提示を考え、物質の保存概念に対する児童の認識を揺さぶる事象提示を工夫してみましょう。
たとえば、
①物の形が変わると重さはどうなるか(変わるか?)
- 「折り紙をまるめてくしゃくしゃにします。」
- 「1枚のせんべえが割れてしまいました。」
重さは変わるかな?
②枡に米と塩を入れました。体積は同じですが重さはどうでしょうか。
*1合枡で、体積は同じであることを教えておきます。
③大きさが同じ色紙があります。同じ大きさの折り紙があります。
黒い折り紙と白い折り紙ではどちらが重いでしょうか?
*質感が関係します。
*①、②、③とも、重さの違いはわずかです。繰り返し、手で持って、重さを比べます。
その実感をもとに、本当に重さはかわったのか?
変わらないのか?を予想してデジタル計り(自動上ざら天秤)で調べます。
4 4年「ものの温まり方」 A区分 粒子(粒子のもつエネルギー)
金属・水・空気と温度・・・温まりかたの違い、温度と体積変化
この単元は問題解決の学習過程が身についているか評価するためにはとても良い単元です。是非、子ども達が考え、計画し、実行する場を確保し、定着させていってください。
まず、温まり方の違いを学習します。身近な事象から問題つくりをさせましょう。
事象提示・・・火にかけたなべの黒い部分は、どのような役目をしているのだろう。
子どもたちの意見、考え。
・持つところが熱いと持てない。
・鍋のふたのところも、熱くて持てないと、ふたを開けることができないね。
T:結局、熱いと困るというわけですね。ところで、なぜ、熱いのかな?
・当たり前でしょ、火にかけているんだから。
T:でも、火は鍋の底にあてているんだよ。
・だって、先生、熱さが鍋全体に伝わってくるんだよ。だから、火にかけたすぐは、熱くないけど煮えてくる頃には、どこも熱くなってしまんだ。
・だから、手に持つところは、熱くならないような工夫がされているんだ。
T:なるほど、T:では、何をはっきりさせれば、君たちの考えが正しいとわかるのかな?
*ぜひ、この発問を使ってほしい。それは、体験を論理的にくみ上げ、言語化していくきっかけになるからです。つまり
①事実1 鍋の底を火で熱する・・・触ることができる。
②事実2 鍋全体が熱くなる。→熱くて手で触ることができなくなる
③事実3 鍋に手で触ることができる箇所がある。→把手と鍋のふたの最上部
これらの事実の一貫した要因は、これらの事実の一貫した要因は、「熱」が伝わっていく、ということです。事実現象からその事実現象を起こしている原因、要因を探ろうとすることが科学的思考です。そして、それは、問題解決の思考であり、事象という体験を科学的思考を用いて論理的に解明する(思考すなわち言語化)することです。
子どもたちは、鍋全体が熱くなるという事実から、「熱は伝わっていく」、また、持つことができるということから、「熱が伝わりにくい物質がある」、ということを推論します。
そこで、「本当に熱が伝わってくるのか、どのように伝わってくるのか調べてみよう」「熱が伝わりにくい物質はどのようなものがあるのか。」という問題を競ってしてくるはずです。
このように事象とその要因を丁寧におさえるトレーニングをつむことによって、「さあ、今日の問題は・・・・。」という教師の押しつけでなく、自分たちで問題設定ができる力が育成されると考えています。
水と空気については、「金属の温まりかとどのように違うのだろうか」ということで展開します。
◎生活の中からの事象提示
・部屋の上の方が暖かく、足下は冷たい
・味噌汁を温めたとき、中の具が動き出している様子
◎金属の熱の伝導との比較
・空間での温度差を計測する→ 温度測定にはこの(放射温度計)を使うと効果的です。
・水の場合は、流体なのでやはり、空気と同じではないか、という
問題意識を活用します。
そこで、水の中に何か(浮遊物)を入れて、動く様子をじっくり観察させます。
*正確な、流体の熱伝導について理解しなくても、「温まった部分が移動して全体に熱が伝わる。」という水や空気の温まり方の特徴をつかめばいいと考えます。
そして、金属・水・空気ともすべて熱の伝導の状況は見えないので、熱の伝わり方をイメージ図に表し、考察させるとよいでしょう。
5 5年「電流の働き(電磁石の働き)」 A区分 エネルギー(エネルギーの変換と保存)
鉄心の磁化 ・極の変化 ・電磁石の強さ
*12月もこの単元は続いていると思います。そこで、今回は、実験をより科学的にするためのアドバイスをしたと思います。
電磁石の実験についての留意事項・・・より科学的にするために。
さて、上記の写真ですが、日野市立日野第四小学校での全国大会の写真です。この写真でわかる、より科学的な実験を紹介します。
①数値化の試み・・・磁化されない鉄(マグチップ)を使う
新指導要領の趣旨には科学的思考の育成、考察力の育成があります。その土台として、データの処理における数値化の重要性がいわれています。
そこで、電磁石の磁力の強さを測るための道具として、引きつけたマグチップの重さを量っています。マグチップは磁化されないため、電源を切れば、きれいに落ちます。釘のように磁化されてしまって、その分の釘の重さが加わってしまうということはありません。
②電子天秤と電源装置を使う。
電気(電流)を強くすると強い磁石になる。という子どもの発想を生かすために、しっかりと根拠(事実)を明示しなくてはなりません。そこで、単位の意味はわからなくても数値化できる電流計を使います。また、正確な重さを出すために電子天秤を使います。
実践の続き
上記の6年「水溶液の性質」の続きが下記URLに掲載されています。
続きは、はなまるサポート本サイトでご覧下さい。
http://www.djn.co.jp/support/special/point/docs/2012/12/3/4.php
実践全体のダウンロードもできます。
添付ファイル
6 実践者紹介
初等教育研究所
太田 由紀夫 プロフィール
元東京都小学校理科教育研究会副会長、現全国構造学習研究会常任講師。
小学校のときから理科大好き人間。部活は中高大と生物部で蝶を追いかけていました。それがきっかけで山登りも好きになりました。
理科教育の楽しさを子供たちや先生方に知ってもらいたくて、この仕事をさせていただいています。また、地域のボランティアとして鮎も遡上するきれいに復活した多摩川で地域の方々と共に「多摩川で泳ぐ会・探鳥会」を続け、子供たちに自然の中で遊ぶ楽しさを味わわせています。
7 サービス紹介
同社の「はなまるサポート」では、若い先生のための授業ヒント集として、毎月の学習指導ポイントを細かく解説をしたり、不明点や疑問点などを無料で相談できたりします。
http://www.djn.co.jp/support/
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 坂本一途)
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