1 はじめに
本記事は、海洋学習教材サイト「LAB to CLASS」の許可をいただき、サイト内の教材について掲載したものです。ここでご紹介するのは、小学生・中学生向けの教材「実物大のイルカをつくろう!」です。
この教材は、数名のグループごとに、型紙とプラスチックシートを使って1頭のイルカ模型をつくるというものです。目やフン、ひれ、へそ、排泄孔などの場所などを、野生イルカの水中映像を見て確認してつくることで、体の構造だけでなく、各部分の役割、海洋哺乳類の特徴(肺呼吸、母乳育児、脚の退化など)を学びます。所要時間は45分から2時間です。この教材によって、子どもたちは
- イルカの大きさを実感
- 実物の観察が難しいイルカの体のつくりを観察
- 人間の体との共通点・相違点を発見
- 海洋哺乳類ならではの体の特徴を学習
することができます。
この教材は、小学校4年理科の「人の体のつくりと運動」、小学校6年理科の「人の体のつくりと働き」、中学校理科の「動物の生活と生物の変遷」、あるいは総合的な学習の時間に使用していただけます。理科の授業や総合的な学習の時間を、もっと楽しく学びのある時間にしたい先生方におすすめの教材です。教材データや指導者用資料もダウンロードしていただけますので、ぜひ明日からの授業にお役立てください。
※画像は「LAB to CLASS」サイトより
2 準備するもの
- 実物大のミナミハンドウイルカ型紙
※こちらからダウンロードしたものを拡大してください。A4サイズでダウンロードすると1/2の大きさになりますので、それをA3サイズに拡大していただくと実物大になります。なお、A5サイズに縮小していだくと、赤ちゃんイルカのサイズになります。
- ワークシート「どこにあるかな?」
※こちらからダウンロードいただけます。
- プラスチックシート
※グレーや銀のカラーごみ袋、あるいはスーパーのグレーのレジ袋などでも代用可能です。
- セロハンテープ
- 両面テープ(1cm幅程度)
- クレヨン
- はさみ
- ドライヤー
- 画板(あれば)
- 指導者用ファクトシート(指導者用の読み物)
※その他のファクトシートはこちらからご覧いただけます。
※型紙やプラスチックシートなど、イルカづくりに必要な材料がそろった「環境教材キット」は、こちらで頒布されています。
※画像は「LAB to CLASS」サイトより
3 実施方法
①型紙をプラスチックシートにうつしとる
実物大に拡大した型紙をプラスチックシートの上に置き、クレヨンで型紙をうつしとります。 あとでわからなくならないように、プラスチックシートにも型紙の番号を書いておきましょう。
②プラスチックシートを切る
プラスチックシートをはさみで切ります。 なるべくクレヨンの内側のラインで切るようにします。
③プラスチックシートを貼り合わせる
プラスチックシートを貼り合わせ、胴体、尾びれ、胸びれ、背びれ、フンをつくります。ひれの後ろ側は両面テープを使って貼ります。このときは、テープが表に出ないよう裏返してから貼りましょう。そして、後ろが平たくなっている理由(水の流れがスムーズになる)を、参加者といっしょに考えます。高学年の場合は、メロンの部分が丸くなっている理由(エコロケーションを行うための器官)も考えてみましょう。
④胴体の部分を裏返し、お腹を貼り合わせる
胴体を、お腹の切れ目から裏返します。 裏返すときには、切り口から裂けないようにテープで補強したり、接合部を指でしっかりと押さえたりしてください。裏返せたら、お腹の開口部を両面テープで貼り合わせます。背部と腹部の色を変えてつくった場合は、どうしてお腹が白いのかを考えます。
※参考資料:ファクトシート(イルカ・クジラⅠ)
⑤胴体を膨らませながら、体の部分を付ける位置を考える
頭側の開口部からドライヤー(冷風)で空気を入れ、胴体を膨らませます。それから、イルカの水中映像や写真を見て、グループ全員で話し合いながら、尾びれ、胸びれ、背びれ、フンなどを付ける位置を決めます。低学年のグループで実施する場合は、ワークシート「どこにあるかな?」を用い、一人一人がまず自分で確認してひれの位置を描きいれ、そのあと指導者が意見をまとめると全員で考えることができます。
⑥体の部分を貼り付ける
背びれと胸びれの場所が決まったら、付けるところにハサミで切り込みを入れ、切り込みを挟み込むように両面テープでひれを貼り付けます。尾びれとフンも両面テープを使って貼り付けましょう。それぞれのひれの位置、方向を確かめ、水中映像などでどのように使っているかを確認しながら作業をします。
※背びれの切れ込みは、空気を流したときに左右に大きく開いてしまうとイルカの形が崩れてしまうので、開きすぎないようにまん中をテープでとめておきます。
※それぞれのひれの構造がどうなっているのか、役割は何かなどを参加者といっしょに考えて、資料を使って説明します。
⑦自分の体と比べて足りないものを見つける
ドライヤーで胴体を膨らませて、まだ足りないものがないかと考えます。 参加者自身の体と比べて、足りないものを探し出し、目、噴気孔、耳、おへそ、排泄孔、おっぱいなどを、水中映像や写真を見ながら場所を決め、クレヨンで描きいれていきます。このとき、目や噴気孔の位置、おっぱいなどが体の内側にしまわれていること、耳が退化している理由などを、参加者の発達年齢に応じていっしょに考えてみます。
⑧イルカを膨らませて大きさや形を確認する
最後にもう一度イルカをドライヤーで膨らませて、大きさや形を確認し、作成前に想像していたイルカと比べてどのように感じたかをグループ全員で話し合います。時間があれば、イルカなどの大型の野生生物の調査を行っている研究者は、個体の外見的な特徴から名前や番号をつけて識別し、行動観察を続けていることを伝え、作成したイルカにも名前をつけます。
※参考資料:ファクトシート(イルカ・クジラⅢ)
4 指導の際のポイント
- 低学年のグループで実施する場合や実施時間が短い場合は、事前に途中まで作成しておくとよいでしょう。
- 胴体を参加者とつくらない場合は、ひれを一つずつつくれるように4人以下のグループで行うと、参加者全員が集中して行えます。
- 低学年のグループなど、全員で相談しながら作業を進めるのが難しそうな場合は、ワークシート「どこにあるかな?」を使い、参加者個々がひれや目の位置などを映像を見ながら書き入れてから意見をまとめると、全員で考えることができます。
- ひれ、目、フンなどをつけるとき、腹部にスリットなどを描きいれるときには、なぜその場所にあるのか、どう使っているのか、体の中はどうなっているのかなど、参加者の発達年齢に合わせて考えられるように、資料を使いながら導きましょう。
5 関連動画
イルカの水中映像(ヒレ・噴気孔・目・おへそなど)
イルカの水中映像(オスとメスの見分け方)
その他の動画はこちらのページで紹介されています。
6 サイト紹介
海洋学習教材サイト「LAB to CLASS」
海でも、海に行かなくてもできる!多様な研究者とつくる体験型海洋学習教材。
海の研究者や環境教育の専門家が、分野・地域を超えて集まり、協力して創った
「海を学ぶためのサイト」です。
Facebook:https://www.facebook.com/lab2c.net
7 イベント情報
【第3回 海を学ぼうスクール in 中野区~海と日本PROJECT~】
海×先生~「知る・つくる・実施する・振り返る」
海のPBL(project baced learning)デザイン
http://www.npo-bridge.org
どこでも!楽しく!安全に!できる《海洋学習教材 LAB to CLASS》を活用した、小学生&教育関係者向けのワークショップ。子どもたちは「海の生きもの」をテーマに、教育関係者は「海のPBL(project baced learning)デザイン」をキーワードに、「海と自分のつながり」に気づくことを目指します。
●日 程:2019年11月24日(日)
●会 場:新渡戸文化学園10号館アフタースクール
〒164-8638 東京都中野区本町6丁目38-1
●交 通:東京メトロ丸ノ内線東高円寺駅 徒歩5分
●主 催:LAB to CLASSプロジェクト(特非 海の環境教育NPO bridge)
●協 力:新渡戸文化学園,未来教育confeito,海辺の環境教育フォーラム,
一般社団法人JEAN
●後 援:公益社団法人日本環境教育フォーラム
●参加費:無料 (事前予約必要)
●対 象:学校教員,指導者など教育に関わる方 20名
●時 間:9時~17時(受付8時45分~)
●ファシリテーター:山藤 旅聞氏(新渡戸文化小中学校・高等学校 生物教諭)
●内 容:海の素晴らしさ、楽しさ満載の教材<LAB to CLASS>をベースに,持続可能な社会を目指すための<スペシャル教材>をPBLデザインを用いて参加者と一緒に作成し,その場で子ども達に実践。成果の振り返りを行います。各学校・施設ですぐに活用できる<海のPBLデザイン>を,参加者のみなさんと一緒につくることを目指すワークショップです。
●申込み:事前予約制【先着順】 受付開始日10月1日(火)~
下記サイトからお申込みください。
LAB to CLASSプロジェクト事務局(特非 海の環境教育NPO bridge)
http://www.npo-bridge.org
8 編集後記
実物大のイルカをつくる中で、海の生き物の体について学べる教材をご紹介しました。子どもたちが実際に自分の手を動かしながら学ぶことで、普段の教科書に沿った授業よりも刺激的な授業を展開できるのではないでしょうか。(編集:EDUPEDIA編集部 津田)
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