車いすマークは誰のためのもの?(シリウス)

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目次

1 はじめに

こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/

2 実践内容

青地に白、あるいは白地に青で書かれた車いす。私たちは何となくこのマークを目にしている。

しかしこのマークが誰のためのもので、どんな意味なのかは、あまり知られてはいない。

この車いすマークを取り上げ、授業をおこなった。

発問1.みなさんは、このマークを見たことがありますか?見かけたことがある人は、どこで見かけたか教えて下さい。

子どもたちは、いろいろなところで見かけていた。

  • スーパーの駐車場 
  • ディズニーランド
  • 高速道路のトイレ
  • 電話ボックス
  • 動物園のトイレ
  • バス

発問2.いろんな所で見かけますね。では、このマークは誰のためにあると思いますか? 
<車いすの人のため>    

  • 車いすの絵が描いてあるから、車いすに乗っている人だけ。

<肢体不自由の人のため>  

  • 車いすにのっていなくても、肢体不自由の人はいっぱいいるよ。

<障害者を持つ人すべて>

  • 車いすに乗っていて、目が見えなかったり、耳が聞こえない場合があるから、障害を持った人みんなだと思う。

本学級は、自分自身が障害を持っているために、<車いすの人> <肢体不自由の人>といった微妙な違いに気づく意見が出された。

発問3.このマークは「障害者の国際シンボルマーク」と言って、障害を持ったすべての人のためのマークです。しかも日本だけでなく、世界共通のマークなのです。では、このマークにはどんな意味があると思いますか?

子どもたちは自分の体験から、意見を述べていった。

  • このマークを持っている人は、(持っていない人が駐車してはいけないところにも)車を止めていいんだよ。
  • 障害者でも「できますよ」って意味だと思う。

発問4.「できます」って、どんなことができるんですか?

これも、普段の生活に密接していることであるので、たくさんのものがあげられた。

  • トイレ
  • スロープ
  • 電話
  • リフト
  • エレベーター 
  • 手すり
  • レジ  

以上のようなことが、便利に利用できるようになっているようだ。

子どもたちは口々に「便利だよね」「楽だし早いよ」「ありがたいよ」などと盛り上がっていた。

そこで、この国際シンボルマークを使用するための必要な最低条件をプリントで提示した。

国際シンボルマークを使用するために必要な最低条件

・玄関…地面と同じ高さにするほか、階段のかわりに(あるいは階段のほかに)、ランプ(傾斜路)を設置する。

・出入り口…80cm以上開くものとする。回転ドアの場合は別の入り口を併設する。

・ランプ…傾斜は1/12(勾配4.5度強)以下とする。室内外を問わず、階段のかわりに(あるいは階段のほかに)、ランプを設置する。

・通路・廊下…130cm以上の幅とする。

・トイレ…利用しやすい場所にあり、外開きドアで、仕切内部が広く、手すりがついたものとする。

・エレベータ…入り口は80cm以上とする。

 「Tarzan(ターザン)」'93 7/28 No.170 より

発問5.私たちの学校は、このマークをもらえることができますか? 
このように問うことによって、学校の環境が快適に過ごせるように工夫されているかどうか、考えさせた。

  • 廊下は広いし、床もカーペットが敷いてあるし、ほとんどいいんじゃない。
  • トイレがちょっとなあ。

養護学校の場合利用するのは、障害を持った子どもたちであるから、十分に考えられた施設であることはまちがいない。

しかし学校のどこにも、国際シンボールマークは見あたらない。この理由について説明をした。

学校にマークはないのは、障害を持った人たちが使うものであことが誰にでもすぐにわかるからです。トイレや電話ボックスなど、いろいろな人が使う場所(公共の場所)では、どこが使いやすいか一目でわかるようにマークをつけるのです。つまり 「ここが使いやすいですよ」という目印になっているのです。
最後に、このマークを使うのは障害を持つ人たちだけであるかを考えさせた。

発問6.このマークは、障害を持っている人だけが使いやすいんでしょうか。ほかにも使いやすい、という人はいませんか? 

  • おじいさんやおばあさん
  • ふつうの人

そうですね。障害のない人にも十分使いやすいものです。このマークは、どんな人にでも優しいマークですね。

発問7.今まで行ったことがある場所の中で、使いやすいなあ、と思ったところはどこですか? 

  • ディズニーランド
  • 県立美術館
  • 伊豆虹の里

最後は、自分たちが行った場所で使い勝手のよかったところを銘々にあげて、授業をまとめた。

3 プロフィール

静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。

4 書籍のご紹介

「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)

「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)

「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)

「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)

5 編集後記

問いかけがとても多い授業です。全部で7つの問いかけにより、子どもたちに発言する機会を多く与え、考えさせようとしています。車いすマークという子どもたち自身に関係のある事柄のため、より活発に考え、障害をもった子どもたちならではの答えが生まれるのだと思います。子どもの独自性をとても重視している実践だと感じました。

(編集・文責:EDUPEDIA編集部 澁川万結子)

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