1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
「ものとその重さ」という学習を始めた。この単元では物の重さや体積を調べ、物の性質についての考えを持つことがねらいです。子どもたちが楽しみながら重さについての考えを持てるように毎回少しずつテーマを変えながら「重さくらべ選手権」をしていきます。
材料が違うものの重さを比較
木のスプーンと金属のスプーン
「重さくらべ」第4回目は、素材や材料の違いについて考えました。
ものというのは、いろいろな材料でできています。例えば同じお皿でもガラスでできていたりペットボトルでできていたり、紙やスチロール製のお皿もあります。中身や材料によるものの重さの違いについて考えます。
子どもたちへ問いかけます。
「大きさの違う2つのスプーン(木と金属)を比べることができると思いますか。」
〈できる〉という子と〈できない〉という子がいました。〈できる〉と答えた子は、単純に2つのスプーンの重さを比べればよいと思っているようです。
〈できない〉
- 金属のスプーンの方がもともと大きいから、量らなくても金属のスプーンの方が重い。
- 木のスプーンと金属のスプーンの大きさが違うから比べられない。
- 同じくらいの大きさのスプーンにしたほうがいい。
子どもたちと話をする中で「同じ大きさでないと比べられない」ということがわかりました。
そこで、子どもたちが重さの比較ができると考えるスプーンを選んでもらいます。
「材料による重さの違いを比べることができるスプーンはどれですか。」
様々な種類のスプーンを並べ、子どもたちに手には実際に取りながら木のスプーンと金属のスプーンを選んでもらいました。今回は、見たり触ったりするだけではなく、道具も使って重さを調べました。「何か使えそうなものがあれば、道具を使って調べていいです。」と声をかけ、子どもたちを理科準備室に連れて行くと、磁石を見つけてきました。
〈金属のスプーンが重い〉4人
- 磁石にくっつくかと思いやってみたところ、金属はくっついたけれど、木はくっつかなかった。全然違うんだなと思った。
- 金属は重いけれど、木は軽いから中身が空洞みたい。
- 金属はもともと硬いし、少し木より曲がっている。
- 金属のスプーンは音が高いけれど、木のスプーンは音が低い。
このように、いくつもの理由を見つけることができました。それでも子どもたちの予想は、最初から最後まで〈金属のスプーンが重い〉で変化はありませんでした。
そこで実験をしてみると、やはり金属のスプーンが重いことがわかりました。
その他に比べたもの。
- 木の玉とスチロールの玉
* チョークとスポンジの棒
材料が違うものを比べるときには同じ大きさにするとよいことがわかりました。
砂糖と塩の比較
またまた子どもたちへの問いかけです。
粉選手権をしましょう。
各家庭からいろいろな粉を持ち寄り、それを使い、重さを比較しました。教員が用意したものではなく、子どもたち自身がものを用意することで、ものへの関わりが生まれ「自分が持ってきた粉の重さはどうなのだろう」と興味関心を持ってより意欲的に取り組むのではないかと考えたからです。
子どもたちには、事前にこのように声をかけておきました。
「家から重さを比べたい粉を持ってこよう。」
子どもたちが持ってきたのは、砂糖、塩、バスロマン、洗剤でした。
第1回戦:砂糖VS塩
それでは、それぞれの重さを比較してみます。
粉はどんな方法で調べたらいいのでしょう。
子どもたちは理科準備室から、虫メガネやスポイトを持ってきて調べるようです。
子どもたちのファーストインプレッション
〈砂糖が重い〉3人 〈塩が重い〉1人
あれこれ調べながら、砂糖と塩の違いを見つけました。
- 水をたらすと砂糖は集まっていくけれど、塩はバラバラになる。
- 砂糖は粒が小さいけれど、塩は粒が少し大きかった。
- 砂糖と塩の粒の大きさが違う。塩はすぐにバラバラになるけれど、砂糖は振ったりしてもなかなかバラバラにならない。
- 砂糖はコロコロ固まっている感じで、塩はザラザラしている。
砂糖と塩を見比べたところで、「では砂糖と塩の重さを比べてみましょう。」と袋のまま天秤に乗せようとすると、子どもたちから「量が違うから決められない。」という返事がかえってきました。
そこで、「どうしてこのままだとダメなのか。前の授業のことと関連付けて言えますか。」と子どもたちに尋ねると、袋に入っている粉の量について答えてくれました。
- 砂糖の方が袋が満杯で比べられない。
- 量が違うから決められない。大きさが違うと見た目でわかってしまう。
- 木のボールともう一つのボールを比べたときのように大きさが違う。量を同じにしないと比べることができない。
このように同じ大きさにしないと比べられないことがわかり、この大きさのことを体積と呼ぶこと教えました。
そして、「それでは砂糖と塩を同じ体積にしてみましょう。」と子どもたちに声をかけ、透明カップを用意してそれぞれに砂糖と塩を入れました。
同じ容器に同じ体積となったところでもう一度、どちらが重いかを尋ねると、4人とも〈どちらも同じ重さ〉と予想を変更しました。それでは、と天秤に乗せ、実験をすると「ガタン」と塩の方が下がりました。予想を〈塩〉から〈同じ重さ〉に変更した子は「やっちまったぁ」と頭を抱えています。
この実験の結果、観察で得た重さの印象と、実験で分かった重さの差はかなりあるということがわかりました。
入浴剤と洗剤の比較
第1回戦:バスロマンVS洗剤の粉
今回は下のような問いかけを行い、初めから天秤を使って重さを調べました。
「バスロマンと洗剤のどちらが重いか、天秤を使って調べましょう。ただし両方を同時に乗せることはできません。」
子どもたちは思い思いの量を手元に持っていき、天秤を使って調べました。今回は、粉の反対側におもり(分銅)を置き、おもり(分銅)を使ってそれぞれの粉重さを調べた後、どちらが重いかを予想しました。
調べた後、子どもたちに予想を尋ねると〈バスロマン〉2人、〈同じ重さ〉1人、〈洗剤〉1人と考えが分かれました。
〈バスロマン〉2人
* どちらにも5gおもりを乗せてみたけれど、バスロマンは「がたん」と傾いたのに洗剤は「かたん」と傾いたから。
* バスロマンは、おもりの数字が14で釣りあったけれど、洗剤は9で釣りあったから。
〈洗剤〉1人
* バスロマンはサラサラしていて、粒が小さいけれど、洗剤はざらざらしていて粒が大きいから。
〈どちらも同じ重さ〉1人
* バスロマンは5の重さと同じで、洗剤は2の重さと同じだった。
実験を始める前に「このままに比べていいですか。」と尋ねると全員が「だめ」の返事。
「同じ量にしないと比べられない。」と同じ体積に揃えることにこだわりました。結果は、バスロマンの圧倒的勝利でした。
その他の比較
- ザラメ砂糖VS氷砂糖
体質や密度の考え方につながる思考をしました。子どもたちのすばらしさを感じました。
3 プロフィール
静岡県教育サークル
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウト アイデア事典」(明治図書出版 2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
①に引き続き「重さくらべ」ですが、大きさや性質、形状が異なるもの同士を比べるというのは、いろいろな推理が飛び出しとても楽しそうな授業だなと感じました。特に、砂糖と塩のように、見た目はとても似ているのに、重さはだいぶ違うという、実際に量ってみると驚く実験は、子どもたちも盛り上がりますね。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 栗林茜)
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