1 はじめに
こちらの記事は、静岡県で30年間以上続く教員サークル、シリウスのホームページに掲載されている教育実践法の一つをご紹介しています。
http://homepage1.nifty.com/moritake/
2 実践内容
植物は根から水を取り入れている
植物が根から水を取り入れていることを視覚的に理解させるための授業を行いました。
発問1 植物は体のどこから水を取り入れていると思いますか
この質問に対して、すぐに子供たちから声があがりました。
根っこだよ / 常識じゃん
実験1 根のようすを観察しよう
根の観察には、発芽したばかりのアブラナの根毛を使います。容易に準備ができ、根毛をはっきりと見ることができます。根毛の準備は、
- 黒の色画用紙を丸く切り取りシャーレのそこに置きます。
- シャーレに水を1mm位の高さまで入れます。
- アブラナの種子をシャーレに1つ置きに3粒ずつ入れます。
- シャーレを段ボール箱で暗く囲い、3~4日おきます。
これで、根毛をはっきりと観察することができます。根毛のようすを観察した後で、
発問2 根から吸った水が、再び根から植物の体外へ出てしまうことあるだろうか。
<出ることはない>
- 水が出ていってしまったら、植物は枯れてしまう。
- 根は水を吸うところだから、水を外に出すことはできない。
<出るかもしれない>
- 人間だって、調子が悪ければ食べたものを戻してしまう。植物だって、調子が悪ければ、吐いてしまう(戻してしまう)かもしれない
すぐには答を言わずに、モデル実験をして確かめました。
実験2 透析チューブを使って、根のモデル実験をしよう。このチューブは透析チューブといって、根のかわりに使います。ミカンの汁は袋の外に出ていくかを観察しなさい。
透析チューブを根のかわりに、ミカンの汁を植物の体液のかわりに使います。実験の手順は、
- 透析チューブにミカンの汁を7分目ほど入れ、チューブの両端を糸でしばります。
- チューブを水をはったビーカーの中につけます。
- 2~3時間のち、チューブのようすを観察します。
2~3時間後、チューブのようすを観察してみると、ビーカーの水はチューブの中に入っているのに、ミカンの汁は外へ出ていないことがわかります。これは、浸透圧の関係で圧の高い方から低い方へ水の移動がおこったためです。
説明1 水は圧力の高い方から低い方へ移動する性質があります。これを浸透圧といいます。植物の場合も、土の中の水分が植物の体液より圧力が高いので、常に水を吸い込むことができるのです。
水は茎を通っていくこと
根から取り入れた水は茎を通って運ばれることを理解させるために、次のような授業を行いました。
実験1 色水の中にホウセンカをつけよう。しばらくしたらホウセンカの茎を縦・横に切って、色がどの部分についているかを観察しなさい。
色水は、食紅を使って作ります。バケツ一杯に対して耳かき1~2杯入れればよいでしょう。これで十分色がつきます。また、ホウセンカが手元にない場合には、身近に生えている茎の太い雑草でも代用できます。
観察をおこなうと、縦に切った場合も、横に切った場合も色のつく部分とつかない部分があることがわかりました。茎の中に水の通る部分と通らない部分があることを確認した後に、
発問1 図のように、セロリの茎を半分にしたら、セロリは一日でしおれてしまうだろうか。
<しおれる>
- 根っこがないと水をしっかり吸えない
- 水を吸う重要な部分が減ってしまったから
- 水の通る道が半分に減ってしまったから
<しおれない>
- 茎を切っても、水は茎に伝わるからしおれない。
- 茎を半分にしても、水の通り道はまだある
この実験はすぐには答が出ないので、そのまま放課後まで置いておきます。比較しやすいように、茎を半分にしたものとしないものの両方を置くとよいでしょう。時間がたつと、明らかに茎を半分にしてしまった方がしおれていることが確認できます。
発問2 図のように、セロリの半分を塩水、もう半分を砂糖水につけたら、茎の分かれ目の部分はどんな味がすると思いますか
子どもたちはずいぶん悩んだ末に、4つの答を出しました。
<甘い>
- 料理の卵焼きのように、塩を入れると甘さが増すので甘い。
<味は変わらない>
- 甘いものが+になるとしたら、辛いものは−でお互いに打ち消しあって±0。だから味は変わらないと思う。
<甘辛い>
- 二つのものは混ざり合うから、味も混ざって甘辛くなると思う。
- 甘いところと辛いところが交わっているところがあると思う。
<甘い部分と辛い部分がある>
- 水の通り道は決まっていて、甘い水の通っているところは甘く、辛い水の通っているところは辛いと思う。
- 甘いところが半分、辛いところが半分になっている。
セロリに十分水をしみこませた後、実際に食べてみることにしました。みんながみんなセロリが大嫌いで、誰が食べるのか大騒ぎの後、勇気ある?一人が口にしました。出てきた第一声は「まずい!」 結局味は、甘い部分と辛い部分があることがわかりました。
説明1 植物の茎は水の通る道が決まっているのです。だから途中で水が混ざり合うことなく、まっすぐに上の方まで運ばれるのですね。
聴診器を持って、茎の中を流れる水の音を聞きに出かけました。
実験1 木に聴診器をあてて、茎の中を流れる水の音を聞こう。そっとあてて耳を澄ませてごらん。水が流れる音が聞こえるよ。
春から夏にかけての天気のよい日が聞きやすいでしょう。イチョウの木は音がよく聞こえます。幹の中を流れる水の音を聞くと感動します。「木も人間と同じように、生きているんだなあ」と素直に感じることができます。
3 プロフィール
静岡県教育サークル シリウス
1984年創立。
「理論より実践を語る」「子どもの事実で語る」「小さな事実から大きな結論を導かない」これがサークルの主な柱です。
最近では、技術だけではない理論の大切さも感じています。それは「子どもをよくみる」という誰もがしている当たり前のことでした。思想、信条関係なし。「子どもにとってより価値ある教師になりたい」という願いだけを共有しています。
4 書籍のご紹介
「教室掲示 レイアウトアイデア事典」(明治図書2014/2/21発売)
「学級&授業ゲームアイデア事典」(2014/7/25発売)
「係活動システム&アイデア事典」(2015/2/27発売)
「学級開きルール&アイデア事典」(2015/3/12発売)
5 編集後記
植物も、私たちと同じように水を取り込み、排出して生きているということを、様々な実験から学べたようです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 河村寛希)
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