教員になることを目指し、NPO法人ROJEの「学校ボランティアプロジェクト(VP)」でボランティア活動を行っていた方々のインタビューをお届けします。なぜ学校ボランティア活動をしたいと思ったのか、ボランティアをしている中で得たものは何だったのでしょうか。
今回は2017年度から東京都の小学校教員になったYさんにインタビューをしました。
「大学生の時から学校現場に入ってみたい」と思う方必見です!
*学校ボランティアプロジェクトについてはこちらから
1 ボランティアを始めようと思った理由は何ですか?
私がボランティアを始めようと思った理由は二つあります。
一つ目は、大学に入った当初は「絶対に教師になりたい」というわけではなかったのですが、もし今後先生を目指す可能性があるならば、実際に子どもと関わったり、教師という仕事を目の当たりにしたいと思ったからです。
そうしないと本当に教師になりたいという気持ちも高まらず、自分が教師に向いているのかも分からないと思い、ボランティアを始めようと決心しました。
二つ目は、子どもが好きなので、子どもと関わる時間が欲しかったから、という理由です。
2 教師を目指すきっかけはなんですか?
私がボランティアをさせてもらっていたクラスは特別支援学級でした。
最初はボランティア活動をしていて、先生や子どもと接する中で「私は教師に向いていないな」と感じていました。
しかし、子どもが好きだったので、子どもたちのためにどういうことができるのかと考えた時に、特別支援に関してもっと勉強したいと思うようになりました。
私が勉強を進めていく中で、教師になる前から特別支援に関して勉強している人は少ないことが分かりました。そこで、教師になる前から勉強をしないと特別な支援を必要としている子どもたちを、大人が困らせてしまうのではないか、という結論に至りました。
3 ボランティア活動の一日の流れを教えていただけますか?
朝は学校に8時には到着していました。そこから校長先生、副校長先生、職員室の順番に挨拶をしていきました。挨拶が終わったら、更衣室で着替えて、担当の教室に行きました。
担当の特別支援学級では、保護者の方が子どもを教室まで送りに来るので、私は教室で迎えていました。
教室に来たら、まずランドセルから荷物を取り出して、次にトイレに一緒に行ったりしていました。その後に担任の先生方(4名)と一緒に1日のスケジュールを確認して、朝の会です。
授業の流れは、通常学級の子どもたちと同じ流れでしたが、内容等は違ってきます。
子どもたちは大体4時くらいに下校します。その後に担任の先生たちと教室の掃除をしながら1日の振り返りをしていました。それが終わったら、着替えて職員室に挨拶をして、校長室に行き校長先生と今日の振り返りについて話していました。いつも大体5時に学校を出ていました。
4 ボランティアをしている中で得られたものは何ですか?
私がボランティア活動をしている中で得られたことは以下の二つです。
①教師は体力仕事
教師は頭だけでなく体力が必要な仕事だと実感しました。教師は基本的に立っていることが多く、子どもたちは休み時間がありますが、先生たちの休憩時間は放課後の時間の30分程です。
その休憩時間の中でも授業のことを考えています。体力を使うだけではなく、頭もすごく使うし、ボランティア以上に先生は大変なのだと言葉だけでなく体感しました。実際、ボランティアした日は眠りにつくのも早かったです。
このことは、ボランティアをしていなかったら気づくことができなかったと思います。
②子どもとの接し方は様々なパターンがある
ボランティア活動をしている中で子どもとの接し方に戸惑うことが多かったです。大学に入ったばかりで特別支援に関する知識が少なかったですし、それに加えて子どもと接する機会がほぼ初めてで、目の前で起きていることに対してどうしていいのか分かりませんでした。
朝、登校してきた子どもたちにどんな言葉をかけても聞いてもらえず、目線も合わないことが多々ありました。その時はどうしたらいいのだろうと立ちすくむことが多かったのを、今でも覚えています。
なので、先生方や他の支援員さんの関わりを参考にしながら、少しずつマネしてみました。また子どもだけでなく、保護者の方との接し方も非常に参考になりました。
その経験があったからこそ、大学での理論的な知識に対して、具体的なイメージを伴って理解できましたし、やはり知っていることと、それを実際に出来ることは全然違うのだと思いました。
そして、子どもをいざ目の前にした時にどう振る舞うか、自分の一つ一つの言動が、子どもにとって望ましいものになっているのかと、常に考えるようになりました。
5 ボランティア活動をしている中で特に大事だなと感じたことはありましたか?
あくまでもボランティアという立場なので、事故や怪我があっても自分で責任は取れません。なので、何か困ったり分からなかったりした時は、担当の先生に確認・報告するといった、「報連相」の徹底は強く意識していました。
例えば、「こういうことがあったのでこういう対応をしたのですが、それは合ってましたか?」と聞くことで、「もしその時はよくても、次からこういう風にしてね」「まずは職員を呼んでくれたらいいよ」など具体的に教えて頂くことができました。
しかし、どうしても先生に聞けず、自分で判断する時もあります。そのため、予め学校のガイドラインや対応のマニュアルがあるか尋ねて、もしあるならばコピーなどを頂くと良いでしょう。自分の経験ではなく、学校の安全ルールに従って行動することが、子どもを守ることの第一歩だと思います。
ボランティアでも、先生と現場での共通認識を持っておくことで、対応のスピードが格段に違ってくると思います。
6 印象的な先生・言葉はありましたか?
ボランティア先の校長先生が仰った、次の言葉が非常に印象的でした。
「学級は閉じた社会になりやすいから、先生の主義・主張で大きく左右されていってしまう。しかし、学校を開かれたものにする、先生同士で連携するなどと現代では言われているけど、やっぱり限界がある。その時に先生自身がいろんな先生との関わりの中で授業の内容などを自分の中に蓄積し、たくさん見ておくこと、いろんな経験をしておくことが大事だ。」
私は、教育の知識だけに偏らないように、教育の分野から少し離れたことに挑戦し、様々な経験を積んでいくよう心がけていました。
7 自分が目指す教師像というものはありますか
ボランティアをしていく中で特別支援の専門知識の必要性を知りました。知識がないと指導できないことや特別支援の考え方には様々な視点があることを知りました。しかし、大学では特別支援に関して学習できる機会は少ないように感じます。
その上で目指す教師像としては、一人一人の特性を見られるようになること、それに合わせた支援をできるような教師になることです。得意・不得意はどんな子にもあることなので、個に合わせた支援や、どんな子でも当てはまる支援、という視点を持ちたいと強く感じています。だから、まずは自分自身が勉強を重ね、実践できるようになりたいです。
8 今後ボランティアをしてみたい・教員志望の方に一言
私が一番に伝えたいことは、「悩むなら、とにかくやってみること」です。
例えば、ボランティア活動をしていて、ある子に対して「自分には何ができるのか」「どのような言葉を出せばいいのか」など悩んでしまうことは本当にたくさんあります。
しかし、目の前の子どもは、こちらが考えている間も困っているのです。だから、そこで悩んで止まってしまうなら、たとえ失敗してもいいからアクションを起こすことが大事だと思います。もし上手くいかないことがあったら、先生方がサポートして下さります。
ただし、ボランティアだからといって責任感を持たなくてもよい、ということではありません。学校で子どもを預かっているということは決して忘れず、自分なりのチャレンジを積極的に進めていってもらえればと思います。
コメント