組体操を「廃止」に導く ~事故リスクの回避

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組体操に関する情報


近年(2018年現在)、マスコミが組体操についてさかんに報道をするようになっています。名古屋大学内田良准教授がネット上で下の記事をアップしたことがきっかけになっていると思います。
内田准教授は貴重な事故に関するデータも含め、組体操に関する提言をネット上に残してくださっているので、是非ご覧になってみてください。
【緊急提言】組体操は、やめたほうがよい。子どものためにも、そして先生のためにも。▽組体操リスク(1)
また、神戸新聞も組体操関連の情報をネット上で閲覧可能にしてくれています。「組体操 神戸新聞」で検索してみてください。いくつかの記事がヒットすることと思います。
組み体操事故 「サボテン」や「電柱」でも多発
もし、組体操の実施を存続するのであれば、組体操事故の回避のためには安定した安全な指導が必要かと思います。これについては、EDUPEDIAでもいくつかの指導法を掲載していますので、EDUPEDIAの検索窓に「組体操」を入力してクリックしてくださればご参照いただけます。
「組体操」というキーワード の学習指導案・授業案・教材 一覧
この記事では、組体操の意義あるいは危険性、事故回避について、あまり詳しく記述するつもりはありません。危険性や事故回避に関する記事についてはリンク先をご参照ください(の右がリンク先です。)。
この記事の主旨はあくまで、学校現場で「組体操を廃止に導くための参考資料」を提供することです。

子供の安全を考えると・・・


廃止の理由はシンプルに「危険性が高いから」でいいと思いますが、もう少し詳しく書いておかないといけません。以下をお読みください。
●毎日新聞2018年1月10日には「兵庫県教委の発表によると、今年度実施された県内公立小中学校(神戸市立を除く)の体育大会で、組み体操による事故が422件(前年度比50件増)あった。うち46件(6件増)は骨折などの重傷事故だった。」と、書かれています。調査は「計848校を対象」と書かれています。重傷事故発生率は約5%(20年に1度or20校に1校)です。
公立小中組み体操事故422件、前年度比50件増 兵庫
●1969年以降の統計をまとめると、これまでに死亡事故は9件、障害の残る大けがも102件起きているそうです。
「組み体操」を強制する文科省や教師は何もわかっていなかった! 自分で体験した途端「4段でも無理」
●小学校体育の種目の中で組体操は事故件数がきわめて多いというレポートもあります。

これらの数字を見てリスクが高いととるか低いととるかは人それぞれかもしれません。しかし、近年はスポーツ庁や教育委員会から注意喚起がなされている状況であるのに、兵庫県では一定の割合(5%)で事故が起こっていることには着目すべきでしょう。さらに兵庫県では前年に比べて事故件数が50件増えているというのです。「事故をなくすには究極の人員配置と注意力が必要」という事になってしまいますが、そんなことは現実的に無理です。子供たちの安全を思うのであれば、「最悪の事態を想定し、組体操は危険なので廃止するべき」ではないかと思います。「存廃」の議論が起こった時にも、廃止の理由はこの一点に帰結して語られるべきだと思います。

「学校と組体操」を取り巻く状況


組体操の報道が盛んになって以来、多くの自治体・学校で組体操が廃止になっているようです。賢明な判断だと思います。「最悪の事態を想定して判断・行動」することは、危機管理の原則です。ネットで「最悪の事態を想定」を検索ワードにしてクリックすると、たくさんの記事がヒットします。しかし、それでもなお組体操を存続させている学校が多くあり、先ほどの兵庫県では今なお高い実施率(日本一)を保っているようです。ではなぜ、組体操をまだ存続させている自治体・学校があるのでしょうか。保護者の心配の声や教員からの危惧の声は届いていないのでしょうか。おそらく、どこの現場でも教師は苦悩しています(能天気にガンバリズムを唱える教師も少なくないですが)。完全な事故回避方法などあるはずもないのに、高い事故発生率を保ったまま組体操が存続され、指導者はリスクを背負わされ続けています。現場はなぜ組体操廃止を打ち出すことができないのか、教師のどんな苦悩があるのか。以下に羅列してみました・・・まずは現状の把握から。(あくまで筆者の主観による「現状」の把握です)

1.運動会と言う一種の「ショー」で組体操を成功させる(技の成功率を100%近くにまで高める)には教師にかなりの資質や負担が求められる。→→→組体操指導教師の資質や負担に大きく依存した実践である。・・・・・指導技術(資質)がなければ技がうまくならないしリスクヘッジができない。限られた練習時間内です早く技を上達させ、かつ、十分にリスクヘッジをしてゆくためには人手を増やすこと(教師側の時間的負担)が必要になる。しかし、いくら安全配慮をしたところである程度のリスクは排除しきれない。

2.自分は組体操をすることに賛成ではなくても、6年担任になると漏れなく組体操指導のスタッフとして働かされるという状況となり、逃れられない。

3.教師の資質が十分でなく、教師に時間的負担を抱えるだけの余裕がない場合は、子供を危険にさらすことになる。・・・大きな事故が出た時に弱者(何といっても子供・次に、6年担任)がダメージを受けるはめになってしまうことになる。

4.保護者の「感動的な組体操を見たい」というプレッシャーによって組体操を廃止することができない。
※「多くの保護者や児童生徒が組体操の継続を望んでいる」ので、そう簡単にやめることはできないという組体操継続派の教員の常套句に押されてしまう。しかし、往々にして保護者や児童生徒が本当に望んでいるのか、きちんとしたヒアリングは行われていない。神戸新聞のアンケートでは「継続:中止=55%:45%」となっており、保護者が継続を望んでいると言い切れる数字ではない。
「組み体操」本紙アンケ 継続55% 中止45%
また、怪我のリスクが高い事や死亡事故が起きていることを周知した上でヒアリングを行えばどうなるのか・・・。「組体操をしたくない」という保護者や児童生徒はいるし、「賛成・反対」の二段階でアンケート調査をするのではなく、「賛成・ど」五段階で調査すれば反対派の思いが賛成派の思いを上回っているかもしれない。そもそも「指導要領に触れられてもいない組体操」の「存続or廃止」について、保護者や児童生徒の意見を聞かなくてはならないのだろうか? 学校の主体的な判断の範囲で「廃止」を決定することに何ら問題はないと考えてよいのでは?

5.事故事例
以下、事故例を数件紹介する。個人情報の保護のため、少々デフォルメした内容であるが、事故の重度は事実と同様。
【小学校での骨折事故事例】
放課後、体育館で3人技の練習中。前腕部を骨折し、骨折箇所から先が「ブランブラン」の状態であった。ふざけて取り組んでいたわけではない。児童15名につき教師が1名程度の割合で指導していた中で練習をしており、特に人手が足りていなかったわけでもない。残念ながら事故は起こる時には起こってしまう。骨折した児童は血の気を失い、顔面蒼白・・・。



【小学校での落下事故事例】
3段タワーが崩落、2段目・3段目にいた児童が次々に落下して打撲事故を起こした。一番重傷を負った児童は運動会の組体操演技には参加できず、卒業まで体育の授業参加に制限がかかる状態となった。スタッフの一人が出張中に起こった事件であり、手数が不足していたという状況下で事故が起こったことについては出張していたスタッフにも大きな悔いを残す結果となった。
【事故対応が困難な事例】
補助倒立の練習中に補助をしきれずに転倒。児童が腰を打撲した。元々児童の保護者が組体操に反対の意見を持っており、「学校が軽傷と判断して事故に対して甘く見ている」と学校側を糾弾。校長対応案件となったが、長い抗議が続き、保護者の学校不信がぬぐえることはなかった。
【とっさの危機回避ができない事例】
肩車をした後、下の児童も上の児童も両手を放し、手を水平にしてキープする技。練習中に上の児童が落下した。ひと昔前の児童であれば下の者はすぐに上の児童の足を持って落とすまいと危機回避ができた。しかし、この時は下の子供は水平に手を広げたまま何も危機回避行動をとらず、上の子供が落ちるがままであった。上の子供も下の子供にしがみつこうともせず、後頭部から真っ逆さまに落下し、「半身をひねる」という危機回避行動ができなかった。プロレス技で言えば「バックドロップ」の状態。たまたま側にいた教師が慌てて滑り込み、地上すれすれで受け止めた。教師がそばにいなければ、頚椎部の損傷は免れることができなかっただろう。
【指導困難の事例】
5年の頃から学級崩壊が目立ち始め、学年崩壊と言ってよいような状況で運動会を迎えることになった。集中力を欠いては事故が起こるため、練習中に教師は何度も注意するが、本番に至るまで、子どもたちがおしゃべりをやめることはなかった。教師はしゃべっている児童を怒鳴らざるを得ない。しかし怒鳴ればますます教師と児童の関係は悪化し、学級崩壊に拍車がかかった。大きな事故が出なかったことだけが救いである。
【中学生でも簡単な技で重傷事故事例】
2人技の練習中に落下。サボテンという技で、下の生徒が上の生徒のひざ下あたりを手で持って支える技であるが、上の生徒が落ちそうになっているのに手を放すタイミングが遅れたため、上の生徒が地面に手をつき骨折。折れた骨がひじの所の皮膚を破って突き出ていた光景は、近くにいた生徒も忘れることができないと言っている。

6.子供たちの身体能力が落ちてしまっており、我慢強さも失われている。肩車や倒立を経験する機会も乏しい。幼少期から小学校6年生に至るまで、家庭でも学校でも安全に育てられているため、怪我に慣れていない。危険察知能力も低いし危機回避能力も低い。だからこそ組体操で鍛えることが必要という意見もあるが、著しい能力の低下や経験の欠乏に対応できるだけの教師の資質は足りていないし、負担を抱えるだけの余裕はない。決められた期限(運動会当日)で成功を目指さなければならない状況で行うべきではない。・・・通常の体育の時間の通常の種目で徐々に鍛えるように努めればいい。

7.上記の児童生徒の状況があり、「怪我をさせると保護者からの厳しい糾弾を受ける」というリスクを教師が背負い続けなければならない。

8.一度事故が起こって保護者から厳しい糾弾をされると、子供も教師も大混乱に陥る。事故が起こった時に受ける諸々のダメージが大きすぎる。

9.昨今の報道の影響で、組体操に関して保護者の関心は高まっている。この状況下で事故を起こせば、「学校(教師)はきちんと一連の報道を見聞きし、検討した上で指導をしていたのか!危機管理はどうなっているのか?」と責めを負う事になる。

10.指導要録に「組体操」という文字は載っていないし、文科省や教育委員会は『気をつけろ』とは言っているが、『絶対にやれ』とは一言も言っていない。平成28年3月25日には、スポーツ庁から「実施に当たっては、校長の責任の下で組織的な指導体制を構築すること」「確実に安全な状態で実施できるかどうかをしっかりと確認し、できないと判断される場合には実施を見合わせること」との通知があり、現場に責任が丸投げされている状況である。
組体操等による事故防止について(スポーツ庁の事務連絡)
この状況下で事故を起こせば、通知したのに安全確保を十分にしなかった学校(学校長・6年スタッフ)が悪いという事になる。既に現場に「安全管理と事故時の対応の責任」が集中している事に気が付いていない。

11.(すでに自治体レベルで組体操を取りやめている教育委員会もあるのに、)教育委員会が取りやめの指示を出さない。

12.文科省(スポーツ庁)・教育委員会・管理職からリスク管理を求められる(プレッシャー)。しかし、組体操は怪我をするリスクが高く、「十分な安全」を確保するための人員の確保はとうてい無理。

13.ところが、昨年度もやったから・・・という「慣例」のプレッシャーによって組体操をやめられない。

14.組体操を廃止するという話題が上っても、「では来年度の6年生の運動会種目の代替案は」と、存続派がプレッシャーをかけてくる。「既に組体操を取りやめている自治体・学校は多い。運動会や学校運営にさして大きな支障はない。」という事例に目を向けない。代替案などいくらでも見つかるはずである。

15.「誰が保護者に廃止の理由を説明するのか」「組体操を見たいと言う保護者に何と申し開きするのか」という声に、教師はみなたじろぐ。しかしよく考えてほしい。存続している学校では、毎年「存続するに当たっての説明」もしていないし、技に関する危険度について児童生徒・保護者に説明をすることも、承認をもうらうこともなく組体操を続けている。存続なら存続する説明と事故リスクの説明が必要なはず。なぜ「廃止の説明の困難」だけがクローズアップされるのか。

16.6年生を担当するのは確率的に6年に1回。だから、自分が6年を担当した時にはやめずに、問題を先送りにしたい。校長も自分の「其の校在任中」に組体操を変更することに対しては消極的(自分が廃止を決定して組体操存続派の教師や保護者の批判を受けたくない)。→→→未来の教師へつけを回す公務員の悪癖。

17.先輩教師の「俺はうまく組体操の指導ができる!だからお前も俺みたいに指導ができる立派な教師になれ!組体操の指導ごときができなくてどうする!」というプレッシャーによって組体操をやめたいとは言い出せない。

18.「組体操はなくてはならない」という強い思い込みに職員室が支配されている。

19.事故事例を直視せず、子供への安全配慮に思いが及ばない・・・自分が6年生担当の時には事故が起こらないと信じたい。教育委員会が出す安全配慮の通知通達が示す範囲であれば事故が起きない、起きても大ごとにはならないと管理職・教員が勘違いをしている。

組体操はいずれなくなるのでは?


私は、いずれ組体操はなくなるのではないかと思っています。組体操がなくなる時は、もしかすると、
「死亡事故または重篤な障害が残るような事故が起こって保護者から厳しく学校が糾弾され、それをマスコミが大きく報道した時」
になってしまうのではないかと、心配しています。全国のどこかの学校がこの状況に陥った時に、やっと文科省が重い腰を上げて「組体操禁止令」を出すのではないかと思います。そんな悲劇的な結末に至るまでの間にも、「(報道に取り上げられることはないが、)厳しい事故によって子供が傷つき、学校・教師が苦境に陥る状況」が何件も発生するのだろうと思います。
全国的に組体操が終わる時が来るまで、教師や保護者は厳しい状況に陥る不安をずっと抱えていかなくてはなりません。そして、何よりも当事者である児童生徒は組体操をしたくなくても、したくない理由について十分な情報を持って教師に訴える力がないという悲劇的な状況です。私は組体操の練習中に「集中しないと大怪我をするぞ」という教師の怒声が飛ぶシーンを何度も見てきました。大怪我をするような実践をしていることが間違っているのではないかと思います。文科省が禁止令を出すまで、学校現場では薄氷を踏み続けなくてはならないのでしょうか。リスクに晒される子供たちも弱者ですが、もやは学校(教師)も弱者であることを悟る時期に来ていると思います。
弱者視点に立った教育

組体操廃止を議論する時の組体操存続派教員からの声にどう対処するか


「組体操を廃止すると言いうなら代替案と、児童・保護者等への説明の方法を示せ」と言われることがあるでしょう。その時には、以下の様に答えましょう。

1.代替案は当該学年の考えを尊重することが基本。その上で、全国の組体操をしていない学校からよい実践を集めて検討すればいいでしょう。

2.学校評議員には、職員会議で十分な議論を尽くした様子と「安全確保が難しいので廃止」という苦渋の決断を率直に伝えれば分かってもらえるでしょう。

3.保護者や児童生徒から組体操が廃止されることに対してクレームが来れば→→→「様々な意見は出たものの、安全確保が難しいと判断したから」と、丁寧に説明すればよいのでは?それでもなお組体操を続けてくれと迫られたなら、上記の事故の事例を示してみるとよいと思います。「学校では十分な安全確保は難しいと考えましが、存続をご希望される理由をお聞かせください。」→理由を聞いたら→「あなたのお子さんやお子さんの友達が大きなけがをすることになっても、その理由のためなら仕方がないと割り切れますか?」と丁寧に返しましょう。・・・そもそも学校の教育課程は最終的には学校が決める事です。

4.児童生徒には、「先生たちみんなで十分に話し合って、みなさんの安全を第一にしようという結果になりました。先生(自分)にも、組体操をやりたいという気持ちはまだ少し残っていますが、大きなけがが出てしまうことを考えれば、安全の方を取りたいと、今は考えています。」と丁寧に説明すればよいと思います。

5.「では組体操で培ってきた力をどうやって子供につけるのか」と言われることもあります。→→→「体育の時間で育てましょう」でいいでしょう。マット運動・跳び箱・鉄棒等、指導要領に掲載されている項目をしっかりとできるようにして、達成率をきちんと職員間で把握共有しましょう。組体操をなくす代わりに、通常の体育の時間に指導要録に掲載されている種目の達成率をしっかり上げていくよう取り組むことを保護者に伝えればよいと思います。

保護者アンケートについて

職員会等で組体操の廃止が議案に上ると、アンケートをとって考えようという意見も出るかもしれません。しかしもし、きちんと組体操事故事例を提示して保護者アンケートをとれば、どうなるでしょうか?・・・

①(たとえ少数でも)「存続」の強い意見が出た場合
 →「どうしてあんな素晴らしい実践をやめるのか。教師はそんなにサボりたいのか。」と、問い詰められ、やめるにやめられなくなる。

②「十分に安全配慮して是非存続してほしい」との意見が大勢を占めた場合。
→ 「多数決だから存続」を主張される → 結果的に存続すれば、学校側の安全確保対策がクローズアップされ、ハードルがより高くなった状態での指導を余儀なくされる。

③(たとえ少数でも)「廃止」の強い意見が出た場合 
→ その声に対応しないまま存続しようとすれば、
「リスクが高いと説明してアンケートをとっておいて、廃止の声が少数だからと言って多数決で存続を決めるのか!」
「学校はどんなアンケート結果を望んでいたのか。「事故が発生した場合に保護者が存続を望んだから保護者にも責任がある」という言質をとりがかったのか。」
「そんなに危ないなら学校判断で廃止を決めるべき。安全配慮義務に関する学校の主体性はどこにあるのか。無責任ではないか。」
「うちの子供はそんな危ない活動には参加させない。」
と、反発される可能性があるかもしれない。学校の信用が失墜になりかねない。

・・・①も②も③も学校にとっては藪蛇となり、かなりしんどい結果となります。そう考えると、アンケートをとる前に、教員間で徹底して「存続か廃止」を議論し、覚悟を持ったうえで合意をしておいた方がよいのではないかと思います。

組体操を廃止に導く


・・・組体操をやめるのはそれほど難しいことなのでしょうか?いや、そうでもないでしょう。職員会議や学校評価(教育反省?)等の機会に組体操の廃止を提案すればいいのです。

(1)「組体操は廃止するべきだと思います」なぜなら「リスクが高いので、最悪の事態を想定するべき」だからです。(シンプルに)

(2)上記事例に挙げたように、2人技でも重傷事故事例があることを明示します。また、兵庫県で事故が減少しない事実も伝え、あくまでも完全な廃止を求めます。

(3)それは「個人的な思いや好みで廃止を望んでいるのではなく、来年(今年)の6年生スタッフや、今後組体操を指導することになる教師が大きなリスクを背負うことが気の毒だから。」ということを伝えましょう。「もし事故を起こしてしまった時の学校・教師へのダメージが大きすぎるからリスク回避のために廃止しましょう。」と、言い張ります。

(4)「指導要録に組体操という文字は載っていないし、文科省や教育委員会は『安全に十分気をつけろ』とは言っているが、『絶対にやれ』とは一言も言っていません」だから「組体操を廃止しましょう」という事を訴えます。

(5)会議が堂々巡りに陥ったあたりで、下記のように「最悪の事態を想定」した場合の答を職員に求めます。
—————————————————-
「6年生スタッフが児童の組体操へのモチベーションを上げ、十分に注意喚起もして、練習に臨んだ。ところが、落下事故が起きてしまった。怪我をした児童の保護者は組体操反対論者で、マスコミ関係にもコネクションがある。毎日のように保護者に詰め寄られ、組体操の練習と本番を即刻やめることを要求される。「なぜこれだけリスクについて報道もされ、文科省や教育委員会の注意喚起もあったはずなのに事故を起こしたのか。」「なぜ学習指導要領にも書かれていないことを子供にやらせたのか」等々、徹底的な原因究明と説明責任を求められる。保護者会を開くことも要求され、保護者会にはマスコミを入れることも要求される。ネットでは保護者の反対運動と実名(校長名・担任名)による学校への糾弾が始まり、それに児童の一部も加わる。本校以外の反対論者もネット論争に参加し始める。児童に意見を求めよと言われ、アンケートをとると「もうやりたくない」「組体操なんていやだったけど、いやとは言えない雰囲気だった」「何でこんなに危ないことを僕たちにさせたのですか?」等と主張する者が数十名単位で現れる。教育委員会や文科省にも苦情は寄せられるが、「注意喚起はした。学校の責任範囲で行ったことだ。」と、ばっさり切られる。運動会本番まであと1週間足らずの状況で、保護者対応に迫られ、代替案を考え出す余裕もなければ練習する時間もない。6年生スタッフ・学校の信用は失墜し、後の6年生の学年運営にも暗い影を落とす。・・・」
—————————————————-
おそらく、この事態に陥った場合、学校として打つ手はなくなります。最悪の事態であり、正解を出すことのできる教員はいないと思います。「あくまで想定の事例ですが、このような事態は現実的に十分に起こり得ます。このケースへの実質的な対処法と、このケースに陥らないようにするためのリスクヘッジを考えられないのであれば、組体操の「存続」を希望される方は無責任ではないでしょうか。」と、迫ります。

(6)あまり意見が出ない場合もあるだろうし、さらに討論になる場合もあるでしょう。強硬な存続派には、もう一度④上記の事例への回答を求めます。

(7)いずれにしても意見が出尽くした頃に、校長に廃止を促します。
「校長先生、組体操はリスクが高いと思うのですが、最悪の事態を想定して廃止にした方が良いと思います。来年からも続けますか?法令上、職員会議の最終決定権は校長にあるはずだと思いますのでご判断ください。」と迫りましょう。

(8)校長は、
「えー、まず、体育部会でよく検討をしてから、次の会議の折にまたみんなで考えましょう。」
などと決断を先延ばしにすることも予想されます。それでもかまいません。

(9)次の職員会議で体育部が何を提案してきたとしても、
「校長先生、<それでも>組体操はリスクが高いと思うのですが、最悪の事態を想定して・・・・(以下、同文)」
と、全く同じことを尋ね続けます。おそらく、校長は廃止を選択せざるを得なくなると思います。

(10)「安全な組体操なら存続してもいいのではないか」
と、食い下がる存続派もいるかもしれませんが、もう一度、2人技でも重傷事故事例があることを明示します。もう一度、兵庫県で事故が減少しない事実も伝え、あくまでも完全な廃止を求めるのが良いと思います。

(11)それで校長がもし存続という判断を下した場合、
「万が一事故が起こって保護者に糾弾されるような事態に陥った時には、『職員会議で廃止を訴える教員もおりましたが、●●●●年●月●日の会議で○○校長が続行をするよう判断を下しました』と説明することになります。いかがですか?存続をご決断された説明責任を取っていただけるのでしょうね。」・・・普通、ここまで迫る必要はないと思います。ここまで迫ってしまう前に、上手に世論を味方につけて校長が真っ当な判断を下すことにできる状況を作りましょう。普通の管理職なら、ここまで言われなくても存廃の決断はできるはずです。
と、問いかけましょう。そして、書記にきちんとこの判断に至った経緯を記録するように求めましょう。

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会議にかける前に、管理職や一部の教師にあらかじめ協議をもちかけておくのもよいでしょう。できるだけ根回しをして教員の合意を得ていけばすみやかに組体操を終わらせることができるのではないかと思います。内心「廃止したい」と思っている教員は多いと思います。校長も、自分に議決権があるがために「廃止」を「自分の代で決断することに躊躇している」のだと思います。躊躇している校長の背中を押すためにも職員で十分に議論を尽くした結果「廃止する」という状況(=日本人が好きな合議による決断)を作り出す必要があります。
どこかの学校が廃止を決めれば、追随する学校も出てくるはずです。教師の資質や負担に強く依存するようなリスクの高い実践はやめて、できるだけ教師も子供も安全で楽しい学校づくりを目指しましょう。

何よりも、大きな事故に子供を巻き込む事のないよう、組体操は廃止が望ましいと思います。

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