1 はじめに
本記事は、福井県の教員採用試験を小学校区分で合格された方へのインタビュー記事です。この方は福井県内の大学に在学し、小学校、中学校英語、高等学校英語の免許を取得見込みです。また、令和2年度(2020年度)に実施された令和3年度福井県公立学校教員採用選考試験を大学4年次に受験し、合格されました。
この記事では、教員になろうと思ったきっかけや、教員採用試験に向けた対策の方法、実際に試験で課された内容についてお聞きしています。勉強の方法に不安のある方、福井県の試験について知りたい方、どの自治体を受験するか迷っている方にも読んでいただきたい記事です。
2 教員になろうと思ったきっかけ
──教員を目指した理由を教えてください。
子どもがかかわる大人の中で、保護者の次に長い時間を過ごすことができるのが教員です。そのような仕事に就いて、子どもたちの成長に寄り添いながら、子どもたちがやりたいことを見つけるお手伝いがしたいと思いました。また、高校時代に勉強で初めて挫折したことがありました。自分の努力だけで乗り越えられないことがあり、そのときに先生に支えられました。教員は子どもが困っているときに手を差しのべてあげられる存在だと気づいたことも教員になりたいと思ったきっかけの1つです。
小学校を選んだのは、子どもと長い時間を過ごしたいからです。ずっと担任をするというわけではありませんが、同じ学校で6年間過ごすことができます。また、小学校は担任が全教科の授業を行うので、一日の中でも長い時間を同じ子どもたちと一緒に過ごせるというところに魅力を感じました。
──なぜ福井県の教員採用試験を受験したのですか?
地元だからです。私は小中高大とずっと福井で過ごしてきました。大学では地域連携について学ぶことのできるコースに所属しており、子どもたちにも福井の魅力を知ってほしいという思いがあります。福井のよさを伝えられるのは福井を知っていてこそだと思います。こういう施設が魅力的だとか、こういう歴史があるとかそういったことは、生まれてからずっと福井で過ごしてきた自分だからこそ伝えられるものがあると思いました。大学時代は地域連携教育の授業をとるほかにも、福井県のいろんなところに遊びに行くなどして、福井に対する知識を深めようとしていました。
3 福井県の教員採用試験
令和3年度福井県公立学校教員採用選考試験の日程・科目
一次試験(7月11日、12日)
- 一般・教職(7月11日)
- 教科等専門(7月11日または12日)
二次試験(8月3~7日)
- 小論文(8月3日)
- 個人面接(8月4~7日のうち指定された日)
──福井県の教員採用試験の特徴を教えてください。
毎年福井県関連の問題が出ます。例年福井県のある場所についての問題や、歴史についての問題などが出されていたのですが、今年はさらに福井県の教育方針についての問題が多く出題されました。ホームページを見て福井県の教育関係の資料を読み、福井県が出している教育方針を知っておく必要があると感じました。
──新型コロナウイルスの影響で受験科目や日程に変化はありましたか?
日程の変化はありませんでしたが、科目に変化がありました。これまではそれぞれ60分ずつあった一般教養と教職教養の試験が1科目扱いになり、あわせて60分の試験になりました。また、集団討論がなくなり、個人面接が2回になりました。
4 一次試験の内容・対策
──一般・教職について教えてください。
ここ数年は選択式の問題のみでしたが、令和2年度実施の試験では記述の問題が数問出題されました。例年と比べると問題の内容に大きな変化はなく、2科目が1科目になり問題数が減った分今まで必ず出されていたものが減っていたようでした。今年の問題で特徴的だったのは、教職教養に英語の長文問題が出てきたことです。今までは英文の内容も福井県に関係するもので比較的簡単でしたが、今回は文部科学省に関する記事を英語にしたものだったので、内容的にも難しさを感じました。
──教科等専門について教えてください。
小学校の専門は、教科の学習指導要領についての問題が多く出題されます。道徳教育についてもたくさん出ていました。記述式なので、自分の言葉で書かないといけません。ねらいに合わせた授業のアイディアを書きなさいといった、指導法に関するものなど、答えが1つに決まっていない問題も多く出されました。学習指導要領については覚えないといけないものですが、小中高で習うような知識はそこまで問われず、人間としての豊かさ、教員に適した考えをもっているかを問われるような問題が多かったです。
学習指導要領を覚えるのはとても苦労しました。国語、算数、理科、社会、外国語活動、外国語、家庭科、図工、体育、道徳や総合的な学習の時間と、科目数が多いので大変でした。対策は早くからやったほうがよいと思います。実際にまんべんなくいろんな教科から出題されました。低学年、中学年、高学年と、学年で文言が違うので、そのあたりも大変でした。
──一次試験についてはいつから対策をしましたか?
大学3年生の3月から勉強を始めました。福井県の過去問が載っている問題集を先輩からもらって、はじめの1か月は過去問10年分の分析をしました。対策を始めた時期が早かったわけではなかったので、がむしゃらにやっても間に合わないと思い、傾向を掴んだうえでここはやらないというのを決めるところから始めました。取捨選択をして、やるべきものを一日どのペースでやっていくか、計画を立てました。教科ごとに具体的にページ数を決めていました。
参考書などに、過去に出題された分野が都道府県別に示されています。そこに簡易的な傾向は書いてありますが、自分で問題を見てみないとわからないところもあると思い、自分で改めて確認しました。そのときは、問題を解くというよりは、どんな内容が出ているのかを見て分類していくという感じでした。
5 二次試験の内容・対策
──小論文について教えてください。
本番は、福井県の教育大綱から出題されました。「引き出す教育」とは何か、具体的に授業でどうしていきたいかを答えるものでした。800字程度なので、言いたいことをまとめてから書かないとうまくいきません。
小論文については、ほとんど対策をしていません。直前に行われた大学の対策講座に1回参加しただけでした。小論文は60分の試験なので、練習をするには同じだけ時間がかかります。二次試験には、小論文のほかに個人面接があります。私は、自分の考えに向き合って言語化するという機会が今までなく、面接練習ですごく疲れてしまっていました。そのような状態で60分かけて毎日小論文を書くというのはなかなかできませんでした。読みやすい小論文の書き方について書かれているサイトや動画などは見ていましたが、実際に書いて対策するということはありませんでした。
自分の考えをもつということに関しては、面接練習が小論文の練習にもなっていると思いました。結局聞かれていることはほぼ同じなので、小論文の対策に特化しなくてもよいと思い、面接練習に力を注ぐことを決めました。
──個人面接について教えてください。
今年は集団討論がなくなり、個人面接が2回行われました。15分ほどの面接を、会場を移動して連続で行いました。実際の面接では、
- なぜ教員を目指しているか
- 教員になったら何をしたいか
- 小学校を選んだのはなぜか
- 教育実習中に難しかった教科、よくできた教科はなにか
- ストレス発散の方法はなにか
- 隣のクラスの児童がずっと廊下に立たされていることに対してどう思うか
- ALTがなまっていたらどうするか
といったことを聞かれました。また、志願書に書いた内容から聞かれたこともありました。すぐに答えられないような難しい質問は、少し考えてもいいですか? と言い、10秒くらいもらってから答えました。想定外の質問をされると焦ってしまいますが、時間をもらって考えれば大丈夫です。私は2回目の面接が癖の強い質問が多かったのですが、友達に聞いてみると人によってバラバラのようでした。
面接中はマスクを外したのですが、アクリル板で声が通りにくく、声のトーンをあげて大きい声で話すように意識しました。アクリル板があるかどうかに関わらず、自分が思っている以上に声が届いていないと思って臨んだほうがよいです。面接でマスクを外すことは2次試験の初日、小論文試験の日にわかったので、いつマスクを外すのか、外したマスクをどこに置くかなどわからないことだらけでした。面接室への入り方やどのようにいすに座るかなどもそうですが、所作を気にしていると上手く動けなくなることもあります。所作よりも一生懸命質問に向き合うことが大事だと思います。
また、練習したことを毎回きっちり言おうとすると上手くいかないと思います。こう言わないといけないという答えが自分の中であると、想定外の質問がきたときなどに頭が真っ白になってしまって答えられなくなるので、臨機応変に対応していくことが必要です。
──面接練習はどのように行いましたか?
面接練習のために複数人で集まっている人たちもいましたが、私は参加しませんでした。それは、外部からのプレッシャーを受けたくなかったからです。ほかの人と比較して変に落ち込みたくなかったので、基本的に友達と2人でやっていました。
練習では、面接・小論文の過去問を集めた福井県版の本や、教育大綱などの資料から毎回10~20問くらい選んで質問をし合いました。基本を答えられるようにしておけば、多少難しい質問をされても基本をベースに答えられるだろうと考え、スタンダードな質問の練習をするようにしました。基本的な教員としての資質を見極めるような質問が多いので、過去問のレベルでちょうどよかったと思います。
また、お互いが用意してきた質問を本番通りにやり、上手く答えられなかったものや、もっと考えたかったものについてはメモをしてあとから確認していました。休憩時間には、教育問題について議論しました。本番を想定した練習がどうだったかを振り返るところも2人でやったので、人の意見を聞けたのがよかったです。集団で練習をしていてもほかの人から意見をもらうことはできますが、議論するところまではできないと思います。練習は、仲のよい友達だからこそ思ったことをはっきり言えました。ここはこう言ったほうがよいのではないか、この話は少し長かった、といったアドバイスをされても、素直に受け入れることができました。
また、週に1回は図書館に行って教育関連の本をたくさん読みました。いじめをなくすための方法、全国の地域連携教育について、個性を引き出す教育とは、といった本です。面接練習をしていると、自分の中だけではアイデアが足りなくなるので、全てを読むことはなかなかできませんが、重要なところをかいつまんで読みながら知識を蓄えていきました。
6 これから教員採用試験を受ける皆さんへ
──これから教員採用試験を受ける方に向けてメッセージをお願いします。
今までと違って新型コロナウイルスの影響で状況が大きく変わりました。一緒に勉強する仲間がどれくらい勉強をしているかが分からない、一人で頑張らなければならない期間が長い、例年通りに対策講座が開かれないなど、予想外のこともたくさんありました。また、半年~1年ほど教員採用試験に向き合わなければなりません。教員採用試験に向けて勉強をしているだけでストレスがかかってしまいます。
そこで大切なのは、ほかのストレスをいかに減らすか、外部からのプレッシャーをいかに減らすか、ということだと思います。私は人と比べるとプレッシャーを感じやすいので、教員採用試験を受けるうえで、自分で自分を追い込まないようにしようと意識していました。
勉強は友達と一緒にやらないといけないわけではありません。面接練習も、みんなが集団でやっているから自分もやらなければいけないと焦る必要はありません。大学では10月から対策講座が開かれていましたが、私が対策を早くからやらなかったのは、一次試験に合格しないと二次試験のことを考えられなかったからです。ほかの人と同じ方法でやらないといけないわけではないので、自分に合ったストレスのかからないやり方で、自分のペースでやっていくことが一番です。
しかし、自分一人ではできないこともあると思います。そのようなときは、心の底から信頼できる友達とやるほうがよいです。根を詰めて勉強せずに、適度に息抜きもするとよいと思います。筆記試験については、がむしゃらに早い時期から勉強しても受かるわけではありません。勉強を始めるのが遅かったとしても、焦って一からやるのではなく、傾向を掴むところから始めてみてください。
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8 編集後記
周りと比べずに、自分のペースで対策を行っていくことの大切さを感じました。教員採用試験に関心をもってこの記事を読んでくださった皆さんが、なにかヒントを得られれば幸いです。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 小林)
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