1 はじめに
第16弾の今回は、埼玉県の教員採用試験を中学校数学科区分で合格された方へのインタビューの内容を編集した記事となっています。インタビューは2022年2月に実施しました。この方は東京都内の大学に在学し、小学校、中学校数学、高等学校数学の免許を取得しています。また、令和3年度(2021年度)に実施された令和4年度埼玉県公立学校教員採用候補者選考試験を大学4年次に受験し、合格されました。
この記事では、教員になろうと思ったきっかけや、教員採用試験に向けた対策の方法、実際に試験で課された内容についてご紹介しています。
☆こんな人におすすめ!
- 埼玉県の教員採用試験について知りたい人
- 教員採用試験の対策について知りたい人
2 埼玉県の教員採用試験について
一次試験では、筆記試験が課されます。教職教養・一般教養、専門教養について問われました。二次試験では、個人面接、集団面接、小論文が課されます。
☆埼玉県教育委員会が求める教師像
- 健康で、明るく、人間性豊かな教師
- 教育に対する情熱と使命感をもつ教師
- 幅広い教養と専門的な知識・技能を備えた教師
3 教員になろうと思った背景
教員になろうと思ったきっかけ
これといったきっかけはありませんが、身近な大人に憧れてきたからなのかなと思います。当時一番身近に関わっていた大人である教員を見て、小学生のころは小学校の教員に、中学生のころは中学校の教員になりたいと思っていました。
私は子どものころ、教員と話す機会や頼られる機会が多かったり、授業でも発言したりしていました。そのため、教員から褒められることも多く、それが私自身のやる気につながっている部分が大きかったです。そのような点から、教採では、子どもの成長に直接関わることができることにやりがいを感じたと答えました。子どもの人間的な成長を見られることは嬉しいじゃないですか。子どもの成長に携わることができるのは教員の特権なので、教員になりたいと思ったということを答えました。
中学校の数学の教員になろうと思った理由
数学の楽しさを伝えたいからです。いろいろな調査を見ると、小学校から中学校にあがって算数から数学に変わるときに数学を楽しくない、嫌いと答える子どもが増えます。確かに数学では算数以上に、より抽象的で日常では使わないようなことを扱いますが、数学の面白さはそこにあると考えています。だからこそ私は楽しくないと言われてしまっている数学の楽しさを伝えたいと思っています。
4 一次試験の内容と対策
一次試験では筆記試験が課され、「一般教養・教職教養」と「専門教養」の区分で出題されます。
一般教養・教職教養
一般教養は中学校レベルの問題が出題されます。文学史はレベルが高いように感じました。ただそこができなくても中学校レベルまでの一般教養の知識をもっておけばよいと思います。
対策については塾のアルバイト経験から5科目の質問に対応できるようにしていたので、基本的な問題に関しては解くことができました。それに加え、国語の文学史や季語、音楽の歌の名前や作詞者、作曲者などの自分の知識が足りないところはピンポイントで対策するようにしました。
教職教養は正式な文章に穴が空いていてそこに当てはまる言葉を選択肢の中から選んで答えるという形式です。中央教育審議会(中教審)などの資料の穴あきが多く、資料も似ているものが多かったので難しいと思います。選択肢が似ているものも多く「財産」と「金品」のどちらが入るのかを聞かれたこともありました。分かりやすくその言葉の知識を問うている問題もあれば、さすがにその違いが分からないというような問題も散見されました。教職教養は根拠をもって正解することがなかなか難しいと感じます。
教職教養については時事通信社の本を使って対策しました。大学でその本の解説をしている動画が公開されていたので、その動画と本を見て、ノートをとるのを1周、本を見て思い出すのを1周しました。時事通信社の演習本も過去問に取り組む前に1~2周やりました。それに加えてひたすら問題を解き続けました。教職教養に関しては他の都道府県の過去問も解くようにしました。教職教養は教員になったときに役に立つと思ったので、対策を重点的に行いました。
専門教養
私の受験した中学校数学区分では中学校と高校それぞれの内容に関する問題がありました。
高校の内容に関しては共通テストレベルの基礎内容が出題されます。あまり見たことないような問題が出ることもありますが、多くは基本的な問題です。
中学校の内容は難関校の入試くらいのレベルでした。学習指導要領の内容に関しても3問程度出題され、指導要領はきちんと読み込んでおかないと解けないものでした。私は数学教育のゼミに所属しており、そこで読み込むようにしていました。どの語句が正しいかを選ぶような問題なので、一語一語がどのような意味を持っているのかを考えることも必要かもしれません。学習指導要領の内容を理解して読み込むことが必要だと思います。
5 二次試験の内容と対策
二次試験では、個人面接、集団面接、小論文が課されます。
個人面接(場面指導をふくむ)
まず、場面指導を行います。カードに状況が記入されていて、2分間考えて、3分間実演というものでした。面接官が生徒役になって対応してくれます。私のときは「生徒Aが『生徒Bがスマホを持ってきている』と教師に教えてくれました。どのように指導しますか」というテーマでした。
その後個人面接が行われます。30分間で面接官は2人いました。私のときは面接官が丁寧に話を聞いてくれる方でした。聞かれた内容は一部しか覚えていませんが、志望動機や「こういうとき、どのようにするか」という場面指導の簡易的なものについて聞かれました。「宿題が多いと保護者から電話がかかってきた。どのように対応するか」や「授業中に勉強嫌いと言っている生徒がいたらどのように対応するか」「新年度のスタートのときにクラスにどのように声をかけるか」というような質問がありました。埼玉県の3つの教育目標についても聞かれました。また、思っていたよりも事前に提出している志願書から聞かれる印象はありませんでした。
集団討論
「学校教育では生きる力を育むことが求められている。生きる力を育むために体験活動の実施が有効だとされている。あなたの勤務校では自然体験活動や社会体験活動を行うことになった。具体的にどのようなことを行うか」というテーマで話しました。グループの人数は7人で、グループの人数に応じて時間が違っていました。私のグループは7人だったので、35分(1人あたり5分×7人)でした。終了10分前くらいになると試験官が「そろそろ議論をまとめてください」というようなアナウンスをしてくれました。また、それぞれにAさんBさん……というように名前が割り振られていたので、自己紹介をすることはありませんでした。受験番号順に座席が指定されていて、その座席にアルファベットが振られているイメージでした。
小論文
過去問を解いたり、大学で行われている添削指導に参加したりして対策しました。論文テーマは「埼玉県教育委員会が求める教師像3つのなかの1つに『健康で明るく人間性豊かな教師』があります。あなたはこのことをどのように捉えますか。あなたの考えを述べなさい。また、あなたは健康で明るく人間性豊かな教師であるために、日々どのような努力をし、どのような教育実践を行いますか。具体的に述べなさい」というものでした。この類のテーマは苦手だったので、問題を見たときは焦りました。
対策において必要だと感じたのは、練習から当日の試験だと思って活用することだと思います。具体的には完璧な小論文を書く練習をするよりも時間内に小論文を書く方法を知ることと添削をもらうようにすることが必要だと感じました。論文テーマに正対してつじつまが合うように文章立てて構成していくことが大事で、テーマの内容を調べて完璧な小論文を書くよりも書き方を知る方が効果があると感じました。
6 教員採用試験全般について
やっておいてよかったこと
塾のアルバイトを通して5教科教えられるようにしておいたことだと思います。一般教養はある程度アルバイトで得た知識で解くことができ、役に立ったと感じます。面接の練習は友だちと話すことが効果的でした。情報共有をして「こういうことを聞かれたらどう答えるか」というような相談を定期的にするようにして引き出しを増やすようにしていました。いろいろな人と話しておくことが必要だと感じました。
大変だったこと
スケジュールを組むのが大変でした。7月末の1次試験の発表が終わってから面接対策の申し込みをしようと考えていたのですが、結果が出たころにはもう大学で行われる対策の枠が埋まってしまっていました。そのときはかなり焦ったので、事前に情報収集してそのときの自分が困らないようにしていくことが大事だと思います。
7 これから教員採用試験を受験する人に向けたメッセージ
教員採用試験は自分を見つめ直す機会だと思います。これから教育者になるうえで、児童生徒の見本にならなければならないと思います。面接練習などで言われる「明るくはきはき話す」というようなことを教採のときだけ行うと思わずに、教育者になるという視点をもって勉強してほしいと思います。確かに、教職教養もその場の勉強にすぎないかもしれませんが、教育的な知識を持っておくことがのちに活きることもあると思います。教採のためだけと考えず、教育に携わる身として必要な知識、資質能力を求められていると考えて、その場限りでなく継続的に勉強できるとよいと思います。
8 関連記事
今回は中学校・高校区分で合格されている方の記事をご紹介します。
教採体験談インタビュー 第9弾(千葉県・千葉市・中学校) その1
教採体験談インタビュー 第9弾(千葉県・千葉市・中学校) その2
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9 編集後記
教職教養の勉強をこれから教育に関わる人として必要なものだと考え、だからこそ一生懸命やるという姿勢がすごくすてきだと思いました。どうしても試験に向けて勉強することはつらいものという認識があることも多いと思いますが、将来の自分のために教職教養に限らず、勉強を続けていくことができればよいと思います。
この記事がこれから教員採用試験を受けようとしている皆様にとって一助になれば幸いです。
(取材・編集・文責:EDUPEDIA編集部 千葉菜穂美)
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