先生ってブラック?~絵本『せんせいって』(大阪市立豊仁小学校・松下隼司先生)

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目次

 はじめに

この記事は、2022年6月30日に行った、大阪市立豊仁小学校の松下隼司先生へのインタビューを記事化したものです。

今回は、松下先生が執筆された絵本『せんせいって』についてお話を伺いました。

絵本『せんせいって』は、忙しい学校の先生が日々抱いている思いを、あたたかく、リアルに描いたお話です。

この絵本や教員という仕事に対する松下先生の思いをお聞きすることができました。

 絵本『せんせいって』を作ったきっかけ

私が、2018年に担任をしていた子どもに「先生ってブラックなんですか?」と聞かれたことがありました。私は慌てて「違うよ。」と答えたのですが、きちんと説明することができませんでした。また私は普段から情報収集の際にTwitterを使っています。先生たちのしんどいことに関するつぶやきを見て、しんどい部分に嘘はないけれど、先生をしていて楽しい部分もあるからこそそれを伝えたいと思いました。

 この絵本を通して最も伝えたいこと

教員の仕事はブラック一色ではないということです。教員の仕事が過酷だということをニュースやSNSから感じ取っている児童や学生に、そうとは限らず、子どもと一緒にいる時間は幸せだということを伝えたいです。子どもと一緒にいるのは楽しく、子どもってすごいなと思うことが多くあります。朝の挨拶などでも、大人はここまで大きな声で目を見て挨拶していないなと思います。物が落ちた時にすぐ拾う、給食がこぼれた時にすぐに何人かで拭きに行く、そのような子どもの動きは、いつも私より速いです。子どもは優しいなと思い、そのような場面を見るたびに心が洗われます。子どもから学ぶことがたくさんあります。今私は右足を骨折しているのですが、仕事を休まずに常に子どもたちに会いたいという気持ちがあります。私が特別なのではなく、休みなと言われても休みたくない、子どもたちに会いたいと、多くの先生が思っていると思います。それほど私は子どもと一緒にいることのできる時間はありがたいと思っています。

 松下先生に聞く「せんせい」のリアル

  • 学校の先生をしていて「楽しいこと」

 例えば、教科書を音読する際に子どもと先生で音読対決を行うなど、子どもの純粋さを感じる賑やかなやり取りが好きです。私は、勉強を教えること以外のやり取りがとても楽しく、この仕事の魅力だと感じています。

  • 先生の仕事で「辛いこと」 

   休まないといけないのに休めない、気持ちがしんどくなっても休めないことです。それは人がいないので、休もうとしても自分の代わりがいないからです。子どもと一緒にいたいと思う反面、なかなか休めません。妊娠・出産したり、病気になったりしても、思うように休むことができない先生もいました。現に私も職場で足を骨折したのですが、体育の授業をしたり、遠足に行ったりしています。入院し手術をしたのですが、1日も休みませんでした。入院直前まで出勤し、退院直後も学校に直行しました。

 子どもと向き合うときに気を付けていること

私は子どもと向き合ううえで、子ども目線で楽しい授業を心掛けています。授業は内容や板書に決まり事が多いですが、そのようななかでも、様々な特性のある子どもたちのことを第一に、常に子ども目線で考えています。

また、先生という仕事は年々忙しさが増していますが、1日に1回は必ず子どもたちと一緒に遊ぶようにしています。実際子どもと遊ぶ先生が減ってきていて、それは先生が悪いのではなくて、やらなければならないことが山積みだからです。子どもと遊ぶことは、子どもとの関係づくりにはなによりも大切で、授業ではつくれない信頼関係がつくれると思っています。皆さんがオフの日に同僚と遊ぶことによって関係がつくられていくのと同じ感覚です。

 絵本『せんせいって』を特に読んでもらいたい相手

 一番は子どもです。子どもの耳にも伝わるくらいしんどい、ブラックと言われながらも、毎年将来なりたい職業ランキングで学校の先生が上位に入っています。おかしいと思います。ユーチューバーや声優などのキラキラした職業が挙がっている中で、なぜブラックと分かっている職業がランクインしているかと言ったら、それは子どもたちの目の前にいる先生方ががんばっておられるからだと思います。子どもたちにとって一番身近な職業が先生なので、ぜひキャリア教育を通して先生方がどのような気持ちで子どもたちに向き合っているかということを知ってもらいたいです。ブラックという印象があまりにも強烈にインプットされていますが、楽しく学校の先生をされている方がたくさんいます。

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 プロフィール

 松下隼司先生

大阪の公立小学校教諭(教員19年目・2児の父)。関西の小劇場を中心に演劇活動を10年間行っている。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞を受賞。日本最古の神社、大神神社短歌祭で額田王賞を受賞。プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞。第69回読売教育賞で優秀賞を受賞。第20回読み聞かせコンクール朗読部門で県議会議長賞を受賞、自由部門で教育委員会教育長賞を受賞。著書には、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』『せんせいって』や教育書『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』がある。

 その他著書紹介

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 編集後記

私自身も教員はブラックという認識が深くあります。ですが実際に現役の教員の方にお話を伺って、子どものことを大切にしていること、子どもと真剣に向き合っていることを改めて知ることができ、心が温かくなりました。

教員の方々にとって働きやすい環境が整備されるために、私たちや社会全体にできることを考えていきたいです。教員という仕事の魅力が多くの人に伝わり、先生方と子どもたちが向き合える時間が増えることを願っています。

(編集・文責 EDUPEDIA編集部 安田・川村)

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この記事を書いた人

防災教育や心の貧困問題に興味があります。趣味は、アイドルとバンドを応援することです。

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