【中学社会】『見方・考え方=社会的事象の追究のための「メガネ」である』

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目次

1 はじめに

 私は最近まで、見方・考え方について、こんなものかな〜と想像することはできても、具体的にこれだ! と説明することはできませんでした。しかし、学習指導要領を繰り返し読んだり、数々の教育書を読んだり、実際の授業を行ったりするにつれて、以下のように捉えるようになりました。それは、

見方・考え方とは、社会的事象を追究するための「メガネ」である。

 私たちの生活でも、「メガネ」をかけることで、視野が広くなり、物事もはっきりと見ることができるようになります。見方・考え方も同様です。社会的事象を追究する「解像度」が上がります。また、見方・考え方を意識し、授業の組み立てに活用することで、発問の仕方など、授業の組み立て方にも変化が生まれます。これを念頭におきながら、授業作りのポイントを紹介します。

2 授業作りのポイント

A 学習指導要領をもとに中学校社会科の学習の流れや各分野の見方・考え方の特色を理解し、授業づくりに反映させる。
B  見方は社会的事象を見つめる「視点」、考え方は社会的事象を考察する思考の「方法」である。
C 働かせたい見方・考え方にかかわる発問を工夫する。
 

授業作りのポイントAについて、まず紹介します。資料Ⅰをもとに考えていくと、中学校社会科とは、小学校社会科で学んだことが基礎となって、中学校の学習に体系的につながっています。見方・考え方についても同様であると私は解釈しています。そこで、私は資料Ⅰを念頭に、資料Ⅱを踏まえ、見方・考え方をイメージします。中学校社会科の見方・考え方は、小学校社会科がより発展し、分野ごとの特色をふまえた見方・考え方になるといえます。地理的分野と歴史的分野を比較すると「位置や空間的な広がりとの関わり」歴史的分野だと、「時期・推移や変化などに着目して」などそれぞれ特色が異なります。また、公民的分野は「現代社会を捉える概念的枠組みに着目して課題を見出し、課題解決に向けて多様な概念を関連づけて」とあるように、地理・歴史的分野での授業が基礎となって身についた概念を活用させることがわかります。このように地理・歴史・公民的分野の学習の流れや見方・考え方の特色について大まかに捉えておくこと、実際に授業をつくる際の考え方の基礎となります。単元構成や課題設定、資料提示など、授業構成を考える上では学習指導要領をふまえた授業構成が必要です。歴史・地理・公民的分野それぞれの特有の見方・考え方や学習の流れを意識することが、いわば授業づくりの「太い幹」となり、授業づくりにおいて一貫性を持たせることや根拠づけになると私は思います。実際に授業をつくる際には、学習指導要領の「第2節 各分野の目標、内容および内容の取扱い」に示された目標や内容、内容の取扱いを拠り所にします。そこから、教科書や指導書を参考に作り上げて行くイメージとなります。授業づくりの基本はまず学習指導要領です。基礎を読み込むことを大切に授業づくりに取り組んでいきたいと思います。

資料Ⅰ 中学校学習指導要領(平成29年度告示)解説 社会科編 2017年 文部科学省
資料Ⅱ 文部科学省 教育課程部会社会・地理歴史・公民 ワーキンググループ 資料13 平成28年5月13日

捉え方のポイントB、Cについては、歴史的分野における実際の授業をもとに紹介します。

(授業の実際)
3学年社会 歴史的分野 第5章 開国と近代日本の歩み
3節 日清・日露戦争と近代産業 3 日露戦争(3/8)

この授業では、私は本時の課題として、

なぜ、ロシアに勝利したにもかかわらず、国民は政府への不満をもってしまったのだろうか

と設定しました。この授業では、

・日清戦争後の日本を取り巻く国際状況や外国との関わりをふまえながら、日露戦争に至った背景や原因、その結果や影響を考察し、表現している。
・日露戦争の原因と結果、影響について理解している。

ことを目標としました。また、この授業では、以下のように見方・考え方を捉えています。

このように、社会的事象を見つめる視点である「見方」と、社会的事象について考察するための思考の方法である「考え方」を働かせることで、上記2つの目標を達成するための「解像度」が上がります。つまり、目標を達成するための「道筋を示す」視点と方法が、見方・考え方と言えるでしょう。

さらにCの視点から考えると、「なぜ」という発問は、「問題解決的」な視点で、日露戦争の背景、原因、結果、影響について追究する方向性を示すための問いとして設定しています。このように、働かせたい見方・考え方と発問で捉えさせたい視点を合致させるように工夫することを心がけています。見方・考え方と合致した発問を工夫することで、学習への方向性を確実に示し、スムーズにその後の課題追究のための活動に向かわせることができると思います。

3 おわりに

毎回の授業で見方・考え方と発問の整合性を合わせるのが目標ではありますが、正確にできているかというと自信はありません。日々悩みながら、発問の仕方について工夫しています。しかし、これを念頭において授業づくりをするかどうかで授業の「質」が変わると私は思います。社会的な見方・考え方を働かせた発問を用意することで、生徒の知的好奇心や、切実感を喚起し、生き生きと授業に向かわせたいです。授業後は、「楽しかった」「もっと追究たい」と生徒に思われるような授業を目指しています。そのためにも、見方・考え方という「視点と考え方」を働かせることが社会科の授業づくりにおいて大切なポイントだと思います。地理・歴史・公民的分野それぞれの見方・考え方の特色をふまえながら、社会的事象を追究する「メガネ」として活用していきましょう。

(参考文献)

・中学校学習指導要領(平成29年度告示)解説 社会科編 2017年 文部科学省
・小中社会科の授業づくり 社会科教師はどう学ぶか 澤井陽介 唐木清志著2022年 東洋館出版
・深い学びに導く 社会科新発問パターン集 宗實直樹著 2022年 東洋館出版
・見方・考え方を働かせる発問スキル50 川端裕介著 2021年 明治図書
・黒子先生の見えざる指導力 横田富信著 2021年 東洋館出版

4 記事執筆者のプロフィール


根本太一郎
福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校教諭。
教科は社会科と美術科を担当。道徳教育推進教師。授業を通した『感動』を生徒にもたせるために、効果的なictの活用方法や、地域の歴史の研究、社会教育施設や企業訪問などを通した地域資源の教材化を行っている。趣味はマラソン、読書。社会科について若手教員の勉強会である、Social studies for Fukushima を運営。

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