【中学社会】『社会科における言語活動とは・・・?そのねらいにせまってみよう』

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目次

1 はじめに

私が教師になりたての頃は、なかなか言語活動の意義や目的を理解しておらず、なんとなく「ペアになって話し合ってみよう〜」「グループになって確認してみよう〜」など漠然とした指示を与えていました。その結果、話し合ったところで考えが深まるわけでなく、「何を話し合えばいいんですか?」と逆に生徒に質問されるような状況でした。今思い返すと、とても恥ずかしいような状況です。生徒にとっても、教師にとっても時間の浪費になってしまったことがあります。この悔しさを味わったことから、言語活動について学びを深めるきっかけとなりました。今でもうまくいかず、失敗してしまうこともあります。しかし、以下のポイントを意識したことから、少しずつではありますが、生徒が生き生きと話し合ったり、より授業の本質にせまったりすることができる発言が増えるようになってきました。そのポイントについて、紹介します。

2 言語活動のポイント

A 学習指導要領に立ち返って考える。
B 目的や授業のねらいに応じて活動や場面を設定する。
C 授業に変化をつけ、生徒に学習の楽しさを味わわせる。

A 学習指導要領に立ち返って考える

授業づくりの基本は、学習指導要領です。そのため、言語活動とはどんな活動なのか?なんのために行うものなのか?と考える際の一番の拠り所として、私は、必ず学習指導要領を確認するようにしています。そもそも、言語活動をなぜ行わなければならないか。目的とは何か。その本質に立ち返ることで、どうやって取り入れたらよいか見えてきます。

まず、中学校学習指導要領(平成29年告示)解説総則編p77②より、言語活動は②の視点である「対話的な学び」と特に結びついていることがわかります。  

また、各教科においても、言語活動は重視されていることが、それぞれの学習指導要領に記されています。社会科では、p176 2内容の取り扱いについての配慮事項において、

とあります。つまり、言語活動とは、あらゆる教育活動と結びついていることがわかります。学習指導要領の記述をもとにし、社会科の見方・考え方を働かせることができるような言語活動を工夫して取り入れることが、授業づくりでは必須となります。また、このような活動は、計画的にそして、継続的に行う必要があります。言語能力は一朝一夕に身につくものではなく、繰り返し継続して行うことで、少しずつ育まれるものであると私は思います。『習慣化』こそ大切です。例えば、私はペアやグループでの話し合いを行う場面を必ず確保しています。最初は話し合いをすることにぎこちなさがあったり、どのように話しあってよいのか分からなかったりしたのが、繰り返すうちに生徒同士で考えを深めあったり、高めあったりするような場面が見られるようになりました。継続することで、話し合いの「質」は向上します。活動を習慣化することで言語能力の向上につながっていると私は思います。

学習指導要領をもとに、教師が言語活動の本質に立ち返り、授業を構成することで、意義やねらい、授業への取り入れ方が見えてきます。空いた時間にポイントを確認するだけでも、授業づくりへのヒントが見てきます。ぜひ、日々の授業準備の中で、学習指導要領を少しだけでも確認する時間を取ってはいかがでしょうか。

B 目的や授業のねらいに応じて活動や場面を工夫する

まず、前提として押さえておきたい考え方として、言語活動とは、「目的」ではなく、社会的な見方・考え方をより働かせるための活動であり、学習課題の解決のための「手段」であります。そのため、私は、本時の目標の達成を最上位に置き、それをもとに授業全体をデザインしながら、目的に応じて言語活動を行う場面を設定しています。

例えば、私の授業では、以下のように目的に応じて活動の種類を分けています。

また、実際に言語活動を行う際には、「議論」の「論点」を必ず提示するようにしています。例えば、歴史的分野における、日清戦争と日露戦争の相違点について議論する場合、「『時代背景』や『日本を取り巻く国際関係』に注意して話し合いましょう。」と指示をしています。こうすることで、生徒は何を話し合うのか具体的に把握することができるので、漠然と話し合うことが減りました。論点を示してあげることで、生徒も安心して活動をすることができます。また、自分の考えに「根拠」「理由」をもたせることも併せて指示しています。このような工夫により、教師側も、机間巡視をする際に話し合いを確実に進めているか確認する際に、生徒を観察する視点が明確になります。

また、論点を提示する際には社会的な見方・考え方を働かせることができるように発問を工夫しています。社会的な見方・考え方を意識した論点の提示により、焦点化した話し合いを行うことができます。

C 授業に変化をつけ、生徒に学習の楽しさを味わわせる

言語活動を行うねらいとして、「学習の楽しさ」を味わわせるということも念頭に置いています。授業は新しい知識や考え方を得ることも大切ですが、「楽しかった」「次も頑張りたい」という純粋な喜びや前向きな態度を育ませることも大切だと思います。このような気持ちを味わうことで、次の授業につながる意欲的な態度へとつながり、さらなる学びを育むのではないかと考えています。その際に、私は生徒に多様な視点を疑似体験するような体験的な言語活動を取り入れることもあります。ここでは、「ロールプレイングの手法」を紹介します。

実践例 1学年社会 地理的分野 第3章 世界の諸地域 3節 アフリカ州
3 アフリカの産業と経済を支える輸出品(3/5)

この授業では、アフリカ州における「モノカルチャー経済」について多面的・多角的に考察することを目的に、チョコレートに関わる多様な人物の疑似体験を行うロールプレイングを実施しました。

ロールプレイング活動を行なった手順は以下の通りです。

(1)4、5人程度のグループに分け、それぞれ担当する役割を決める。
(2)①〜④の順番で、役割になりきったつもりでその役割を演じ、原稿を読む。
(3)発表者が原稿を読んでいる間は、その立場を想像して話を聞く。
(4)①〜④の原稿を読み終えたら、それぞれの立場になりきって自らの立場での訴えを行う。

3 おわりに

最後に、言語活動を行うことが目的ではありません。本時の目標の達成が最上位にあります。議論をもとに教師が生徒の考えを吟味し、その後の活動に繋げていくことが大切であると思います。日々の授業の中で生徒の言語活動が「目標の達成のために必要不可欠な活動」にできるよう、授業構成をさらに工夫していきたいと思います。

(参考文献)

・文部科学省 教育課程部会社会・地理歴史・公民 ワーキンググループ 資料13 平成28年5月13日
・中学校学習指導要領(平成29年度告示)解説 社会科編 2017年 文部科学省
・小中社会科の授業づくり 社会科教師はどう学ぶか 澤井陽介 唐木清志著2022年 東洋館出版
・宗實直樹の社会科授業デザイン 宗實直樹著 2021年 東洋館出版
・見方•考え方を働かせる発問スキル50 川端裕介著 2021年 明治図書
・黒子先生の見えざる指導力 横田富信著 2021年 東洋館出版

4 記事執筆者のプロフィール

根本太一郎
福島県双葉郡楢葉町立楢葉中学校教諭。
教科は社会科と美術科を担当。道徳教育推進教師。授業を通した『感動』を生徒にもたせるために、効果的なictの活用方法や、地域の歴史の研究、社会教育施設や企業訪問などを通した地域資源の教材化を行っている。趣味はマラソン、読書。社会科について若手教員の勉強会である、Social studies for Fukushima を運営。

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この記事を書いた人

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