1 はじめに
本記事は、2022年11月28日に行った日本お笑い数学協会の横山先生とタカタ先生へのオンラインインタビューを編集・記事化したものです。日本お笑い数学協会を設立した理由や授業での具体的な体験談、学校教育に対してのお考えについてお話を伺いました。
※日本お笑い数学協会は「数学をさらに楽しく、面白く。」をモットーにお笑い×数学のイベントや出張授業を行なっている団体です。
協会ホームページ 日本お笑い数学協会 (peraichi.com)
2 日本お笑い数学協会を設立したきっかけ(タカタ先生)
お笑い×数学に着目した理由
数学は少し堅苦しい、小難しいなどというイメージがあるかもしれません。それをもっと楽しんで身近に思ってもらえるようなものを発信していこうと考え、お笑いと掛け合わせることにしました。
私は、もともと、数学教師として働きながらお笑い芸人としても活動していました。そんななか、お笑いの現場で数学の話をすると、「リアルな学校の先生が数学の話をしている」と食いついてもらえたのです。
実際、数学を専門としている人はシャイな人が多く、数学をメディアで面白く伝える人が少ないです。そのため、数学×お笑いというのはギャップがあって目立つと考えました。
こうして、数学に予想外のエンタメ要素を加えて情報発信をしていきたいと考えました。数学のお兄さんとして活動していた横山さんと興味が重なったこともあり、お笑い×数学というコンセプトでこれから一緒に活動していこうと心に決めました。
協会として活動しようと考えた理由
一人でやるよりもチームでやった方が価値のあるものを世の中に提供できると思ったため、協会を立ち上げました。
協会を立ち上げること自体はとても簡単でした。横山さんとラジオをやっていたなかで、インターネットで協会の作り方などを調べました。そして、その場で協会を作ろうという提案をして、30分後には協会ができていました。
3 日本お笑い数学協会での活動について(タカタ先生)
お笑い×数学という活動を行っている中での成功体験
私の考える成功体験は、生徒の耳にも脳にも残るようなことができることです。
例えば、柱の概念を伝える際、「円柱!三角柱!ピカチュウ柱!」のようにリズムに乗せて教えることがあります。やはりお笑いのなかでも特にリズムネタ系は真似したくなります。耳に残り、さらに記憶や印象にも残るということが非常によいと思います。
お笑い×数学という活動を行っている中での失敗体験
覚えてほしいところにインパクトのピークが来るように作らないと逆効果になることはあります。
例えば、文字式の歌というものがあります。2桁の自然数を文字式で表すとしたとき、「10の位をx、1の位をyと置いたら、文字式は10x+y♪」というのがメロディーの部分であり、サビで「文字文字文字文字式♪」と歌うというものです。それは「文字文字文字文字式♪」の部分ばかりが耳に残り、肝心の10x+yがあまり耳に残らなかったという失敗経験はあります。
教える際に気をつけているポイント
ダジャレボケは作りやすくウケやすいので、ボケの半分ぐらいはダジャレです。しかし、大事なのは、上手くお笑いと交えながら概念や法則を伝えることです。概念や法則を交えたボケは1つの概念に対して1つずつしか出来ない一点物であるため、考える際に気をつかいます。
また、伝え方にも気をつかっています。これは、パフォーマンス的な部分で笑いを取るということです。先生の動きがないと聞く側は次第に疲れてしまいます。そこで、身振り手振りをしたり左右前後に動いたりします。私は左右前後の移動に加えて上下もやっています。テンションを上げて伝えたいときなどに足を挙げたりジャンプをしたりすると、生徒が「先生落ち着いて、落ち着いて!」と言い、教室の雰囲気がぐっと上がることがあります。
加えて、生徒が何を知っていて何を知らないのかということには気をつけます。例えを上手に使えるとよいですが、自分が知っている知識と生徒が知っている知識には年齢的なギャップがあります。そのため、生徒が何を知っていて何に興味があるかはやはり意識します。流行りのアニメや漫画は目を通すようにしています。
4 これから先の教育について
授業に関してこれから必要なこと
横山先生 ※数学のお兄さんとして活動されており、今回の取材もお引き受けくださいました。
先生方が、インパクトのある掴みや興味を持ちたくなるような振る舞いなどの武器を持っていけるとよいと考えています。
初め5分のつかみをするとか、毎日面白い話を持ってくるとか、そういうのができるとよいのかなと思っています。我々はそういう少しインパクトのあるネタを届けています。
タカタ先生
授業において大切なことは、生徒に興味を持たせることです。授業においてのウケるとスベるの違いは、授業に興味を持ってもらえるかどうかです。そのためには、授業の中身ばかりに目を取られるのではなく、その出し方である前振りを大事にするべきです。
お笑いでもボケとツッコミの部分に目が行きがちなのですが、実は大事なのはその出し方なのです。
盛り上げ方に関して学校の先生方にアドバイス
横山先生
教科書以外の本をたくさん見たり、たくさん情報を調達したりしてほしいと思っています。
僕達もネタ探しとネタ集め、ネタ出しにかなり時間をかけています。ただ決められたことだけをやるのではなく、常に新しい情報を見て、新しい情報を先生同士で交換してほしいと思います。これは数学に関する情報に限ったことではありません。
タカタ先生
常に仕掛けていってほしいです。年を重ねるごとに授業準備のルーティーンが決まっていくので、授業の内容はよくなっているはずです。しかし、試行錯誤していた1年目のほうが授業自体は盛り上がっていたと感じるのです。
色々な教育実践があるので、それを参考に先生自身が楽しみながら新しい仕掛けを授業の中に盛り込んで生徒にぶつけてみることが大事だと思います。
また、大きな声を出すことも大切です。芸人の世界でも、面白い人、ノッている人は声が大きいのです。やはり声の大きい人のほうが本番でも活躍するし、目立つし、その場を盛り上げることができるのです。そのため、声が大きいことの重要性は全部に通ずる普遍的に大切なものだと思います。
5 プロフィール
日本お笑い数学協会 タカタ先生様
数学教師芸人。日本お笑い数学協会会長。
東京学芸大学教育学部数学科卒業。
お笑い芸人と数学教師の二刀流で活躍中。テレビ、YouTube、リアル・オンラインでの授業などを通じて「算数・数学嫌い」をなくすために日々奮闘中。2016年に「日本お笑い数学協会」を設立し、会長に就任。2020年に開設した世界一楽しい授業チャンネル「スタフリ」(YouTube)は登録者20万人以上。2023年に開講した「算数わくわく探検隊」(週一オンライン授業)では100以上の家族と共に算数の世界を探検中。
著書に『笑う数学』『笑う数学ルート4』(ともにKADOKAWA)、『小学生のためのバク速!計算教室』(フォレスト出版)など。
日本お笑い数学協会 横山様
株式会社math channel代表。数学の楽しさを伝える数学のお兄さん。
早稲田大学大学院数学応用数理専攻修了。
「体験」を通した学びや、数学×恋愛、数学×お笑い等、数学と異分野を掛けあわせた独自の切り口で、より算数・数学を身近にする授業、講演等を実施。日本お笑い数学協会副会長も兼務。
公益財団法人日本数学検定協会認定資格幼児さんすうシニアインストラクター。
著書に『10歳からのおもしろ!フェルミ推定: 論理的思考力が育つ』(くもん出版)『文系もハマる数学』(青春出版社)『親子で楽しむ!中学受験算数』(平凡社、滝澤幹との共著)など多数。
6 編集後記
数学についてだけでなく、お笑いという目線からの指導法や協会として活動する理由など幅広いお話を伺うことが出来ました。
取材を引き受けてくださったタカタ先生、横山先生には大変感謝しております。
(編集・文責:EDUPEDIA編集部 崇田武遵)
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