はじめに
本実践は、私が1年生を受け持っていた時のものである。生活科などで生き物を飼う経験や植物を育てる経験をしている子どもたちにとって、この教材は読みやすく、同じ教材でも1人1人がちがった気持ちをもつ教材でもあった。初発の感想の時点で子どもから問いが出ていたので、今回はそのことを取り扱った実践について記載する。
本単元で身に付けたい資質・能力
本単元では、文章を読んで感じたことや分かったことを共有し、他者の考えを聞き、受け入れる力を養う。
また、身近なことを表す語句の量を増やし、言葉には意味による語句のまとまりがあることに気付き、語彙を豊かにできるようにする。
単元の評価基準
- 知識・技能:身近なことを表す語句の量を増し、話や文章の中で使うとともに、言葉には意味による語句のまとまりがあることに気づき、語彙を豊かにしている。
- 思考・判断・表現:
- 「読むこと」において、場面の様子に着目して、登場人物の行動を具体的に想像している。
- 「読むこと」において、文章を読んで感じたことや分かったことを共有している。
- 主体的に学習に取り組む態度:学習の見通しをもち、友達の考えや感想を積極的に知ろうとし、読んで感じたことを伝え合おうとしている。
子どもから出てきた問い
このお話は初発の感想から「さみしい」「悲しい」や「ペットを飼っているから『ぼく』の気もちがとても分かる」といった様々な感想が出る。クラスで出た意見を存分に共有して、同じ文章を読んでも色々な感じ方があるということに気付き、他者の考えを受け入れられるようにしていきたい。
初発の感想から、子どもから出てきた問いは 2 つあった。
1 つ目が「となりの子が、子犬をくれるといった。~ぼくは、いらないっていった。」ことについて。どうして「ぼく」は子犬をいらないといったのだろうという問いが出てきた。
2 つ目は「バスケットをあげた」ことについて。エルフのことが大好きだったのに、なぜバスケットをあげたのだろうという問いがあがった。
2 時間ほどエルフの変容を確かめ、「ぼく」がエルフのことを大好きだとわかるところを見つける活動をしてから、上記の 2 つの問いをクラスで考えていくことにした。
今回は 1 つ目のどうして「ぼく」は子犬をいらないといったのだろうという問いについての実践をまとめていく。
もし、「ぼく」だったら子犬をもらいますか。もらいませんか。
この発問をもとに、もらう・もらわないを理由とともにノートに書いていった。
その後は、黒板に名前プレートをはり、自分や相手の立場を視覚的に捉えやすくした。「自分と同じ意見でも理由はちがう。」や他の人の意見を聞いて「なるほど!」という声もきかれた。
今までの「ぼく」がエルフのことを大好きだというところを見つける活動を通して、「ぼく」はエルフのことをとても可愛がっていて、本当に大切な存在であったということに気付いていたからこそ、自分ごととして捉えやすかったように感じる。子どもからあがった意見は次のようなものだった。これをもとに、なぜ「ぼく」が子犬をもらわなかったのかを考えていった。
(もらう)
・エルフは気にしないと思うから。
・さみしいから。
・となりの子の優しさだから。
(もらわない)
・エルフのかわりはいないから。
・エルフは本当は気にすると思う。
・エルフがやっぱり忘れられない。
では、どうしてとなりの子がくれるといった子犬を「ぼく」はいらないと言ったのだろう。「ぼく」になりきって吹き出しに「ぼく」が言ったことを書いてみよう。
この発問からワークシートの吹き出しに「ぼく」のセリフを考えて書いていった。子どもたちは、吹き出しには以下のようなことを書いていた。(板書参照)
・ごめんね。いらないよ。だってエルフのかわりはいないからね。
・ありがとう。きみの気もちは伝わったよ。けれど、エルフは世界に1匹だから、いらない。
・いらない。やっぱりエルフのことが大好きだから。
そして、書けたペアから吹き出しのセリフを演じて、より「ぼく」の感情にせまれるようにした。
全ペアが書けたころにいくつかのペアをあてて、前で発表してもらった。そして、そのセリフを言った時の気もちを問うた。
最後にふりかえりとして再度 5 の場面を音読し、気付いたこと・分かったこと・友達の意見を聞いて考えたことをまとめた。その中のいくつかを紹介する。
・ぼくは、子犬をもらうとおもいます。けど、「ぼく」はもらわないといいました。○○さんのエルフのかわりはいないといういけんをきいて、なるほどな、とおもいました。
・エルフはせかいでたった 1 ぴきのとても大せつな犬です。「ぼく」の「いらない」というところも気もちをこめてやさしく言うといいとおもいます。
・わたしは、もらわないとおもったけれど、もらうという人のりゆうもわかった。子犬がいなくなったらすごくさみしいとおもうから。
授業をふりかえって
同じ文章を読んでも色々な感じ方が出やすい作品であったこともあり、友達の意見を聞くことがとても楽しそうだった。また、名前カードをはって意見交流する場面では、「前の○○さんの意見とはちがって」や「似ているところもあって」という言葉も出てきて、友達の意見をつないで考えているところもあり、そういうところは特に教師が価値づけをした。
参考 URL:https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/7416/7531/7954/02s_k_nenkei2_03.pdf(光村図書 HP 内)
執筆者
おはな先生
元小学校教諭。「授業でつながる学級」がモットー。授業中の活動で子どもたちがつながっていくような授業構成につとめる。現在は、教員を目指す人や忙しい教員を全力で応援するウェブライターとして活動中。(2023 年 9 月 20 日時点のものです。)
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