本単元で身に着けたい資質・能力
本単元では、減法の意味を考え、「場面における数量の関係」と「式」とのつながりを理解するとともに、1位数の減法の計算ができる能力を養う。また、減法を日常生活に生かそうとする態度を育む。
単元の評価基準
- 知識・技能:減法が用いられる場面を式に表したり、式を読み取ったりできる。
- 思考・判断・表現:数量の関係に着目し、計算の意味や計算の仕方を考えることができる。
- 主体的に取り組む態度:場面に合わせた式を少しでも多くつくろうとする。
本実践の意図
本授業は、ICTを活用した授業提案である。
授業展開は、「場面」を数図ブロックによって表される「数量の関係」に置き換えて考える。それによって「場面」と「式」のつながりを円滑に理解できるように促すという従来通りの流れである。しかし、「場面」を適切に数図ブロックに置き換えることに高いハードルを感じる児童もいる。
中学生を教えていると、文章題のみ手が出せない生徒と頻繁に遭遇する。その生徒に理由を聞くと、「小学生の頃から問題文に出てきた数字を組み合わせてなんとなく解いていた。」と答える。このことからも計算はできるが、場面における数量の関係を適切に理解できていないのがよくわかる。
そこで今回はICTを活用し、「場面」を数図ブロックに変換する際のハードルを下げ、より円滑な理解を促すことをめざす。また、ICTに苦手意識を持つ教員や児童の発達段階を考慮し、準備や操作が極力少なくなるように配慮した。
授業における活用例
1.のこりの数を求めるひきざん
以下の画像を児童へ共有し、全体で考える。
タブレットの活用によって、児童が実際にあめを動かしながら考えることができるので、「女の子にあめを食べさせてあげよう」等と伝え、操作とともに問題を考えさせる。
その後数図ブロックで操作を行い、画像と数図ブロックの動きが同じであることを確認する。
最後に立式の確認をする。
※以降の実践では、画像の操作以外同様の流れなので省略する。
2.全体から一部をのぞくひきざん
以下の画像を児童に共有し、全体で考える。
画像をどう操作して良いか困っている児童がいた場合は、「おたすけかーど」を共有する。
この操作を通じ、求残と同じ考え方で解けることを確認する。
3.2つのものの差におけるひきざん
以下の画像を児童に共有し、全体で考える。
画像をどう操作して良いか困っている児童がいた場合は、「おたすけかーど」を共有する。
「おたすけかーど」を活用すると、下図のように1対1の対応を意識した答え合わせがしやすく、数図ブロックへの移行が円滑に行える。
ICTドリル実践
「場面⇔数量の関係⇔式と計算」の関連付けと計算力を同時に身に着けるため、画像付き簡易計算ドリル(以下、「めくりドリル」と呼ぶ)を推奨する。めくりドリルとは、問題カード⇒タイル+立式カード(解説カード)⇒答えカード⇒問題カード⇒……(以下繰り返し)となるように並べたICT上の計算ドリルのことである。
通常の計算ドリルより優れた点は以下の点である。
①同じ間違いを繰り返さない
自然な流れで1問ごとに答え合わせができるので、自分の間違いをすぐに修正して次の問題にあたることができる。ドリルが終わった後にバツばかりが残ることもなく、成功体験を積み重ねられるので、定着も早く何より楽しい。
②ピンポイント学習ができる
苦手な児童向けにヒントカードを入れる、文章題の立式のみのカードを作るなど、フレキシブルな対応が可能。苦手なところやこちらの意図したところのみを繰り返し演習させることができる。
めくりドリルは初回作成はやや手間がかかるので、本記事のメインテーマとはしなかったが、一度作成すれば校内で使いまわせるので、大変便利である。児童の理解度によっては答えのシートを外し、文章題における立式のみを繰り返し練習させることもできる。
私は中学生版めくりドリルを授業実践として行ったことがあり、生徒の反応は上々であった。苦手な生徒でも、ぺらぺらとスピード感をもって取り組むことができる。分からなければすぐに解説カードや答えカードで解き方を確認し、次の問題で理解度チェックを行えるので抵抗感なく取り組めたようだった。
算数が得意な児童に合わせて難しい問題「チャレンジカード」を後半に用意しておくことで、同じ授業を受けながらも理解度に合わせた学習もできる。その場合は時間制限を設け、時間が余った人のみが「チャレンジカード」に挑戦できると事前に伝える。
おわりに
本記事の画像はPowerPointを活用して作成したが、iPadであれば、Keynoteを用いても良い。個人的なおすすめは、多くの自治体で導入されているロイロノートである。操作が直観的で、児童との相互のやり取りも行いやすいからである。また、ロイロノートの提出BOXを活用すると「文章題⇒画像の操作⇒数図ブロックの操作⇒式と計算」と、到達度に合わせた適切な評価を行うことができる。
執筆者
まき先生
中学高校で数学を教えている。体系的に教えるためには算数から学びなおす必要があると感じ、算数の授業案についても学習をすすめている。
実践的かつつながりを意識した授業案の作成に努める。
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